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2022.04.19

淋菌

STDを防ぐ

特集

犬猫の感染症へ、新しい感染症治療法であるファージセラピーを実用化するための研究の費用を集めるクラウドファンディングを開始します!

予防会は、性感染症の検査・治療を中心に取り組んでいますが、薬剤耐性菌の増加による感染症の治療困難化に備えるため、新しい感染症治療法の研究開発にも取り組んでいます。特に注力しているのが、ファージセラピーと呼ばれる治療法です。様々な取り組みを進めていて、その1つとして、犬や猫の感染症へファージセラピーを応用する研究があり、今回、その研究資金を集めるためのクラウドファンディングを行うこととなりました。

ファージセラピーについて

現在は、感染症は基本的には治癒可能な疾患です。しかし、「薬剤耐性菌」と呼ばれる、抗生物質が効きにくい感染症がどんどん増加しています。それによって、2050年には世界の最大の死因が、「ガン」から「薬剤耐性菌による感染症」に代わると予想されています(1)。

また、性感染症においても、例えば、淋菌に対する第一選択薬のセフトリアキソンの耐性菌が増加し、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)から、セフトリアキソン単独療法は推奨しないと発表されるに至っています(日本と欧米では用量が異なるため、日本の用量では現在でも単独療法が可能と言われてはいます)(2)。

以上より、感染症の治療薬である抗生物質は限界を迎えています。しかし、新しい治療法は導入されていない状況です。そんななかで、抗生物質に代わる感染症治療法として、ファージセラピーという治療法が注目を浴びています。

ファージセラピーとは、バクテリオファージという細菌にのみ感染する生物を用いて、感染症を引き起こしている細菌を死滅させて、感染症を治癒する治療法です。

実は、1920年代に実際に使用されてましたが、抗生物質の隆盛により、追いやられました。昨今の薬剤耐性菌の増加に伴い見直され、海外では既に応用されていたりします。しかし、海外で使用されている製剤は効果十分とは言えず、また、日本では、臨床試験すら行われていない状態です。そこで、予防会では、ファージセラピーを効果十分な形で、日本で感染症治療へ応用するべく、様々な形で研究開発を行っています。

【画像】2022,4,19-1

 

犬猫の感染症について

予防会の取り組んでいるファージセラピーの1つに、犬や猫の感染症へのファージセラピーがあり
ます。感染症の薬剤耐性菌の増加は、ヒトに限ったことではありません。犬や猫でも薬剤耐性菌の増加は著しく、ヒトよりも厳しい状況です。例えば、犬の感染症の主要な病原菌であるスタフィロコッカス・シュードインターメディウスという細菌の危険な耐性菌(MRSP)は、スタフィロコッカス・シュードインターメディウスの中で67%を占めると報告されています(3)。

そこで、犬や猫の感染症へファージセラピーを応用することを考え、映画「犬部!」のモデルとなったハナ動物病院の太田先生と知り合うことができたこともあって、ご協力を得て、研究開発を進めています。

太田先生の実際の診療現場でも、動物病院で使用できる抗生物質が何も効かず、治癒しない感染症があるようです。膿皮症と呼ばれる皮膚の感染症で遭遇することが多く、その場合、犬は痒みが止まらず、夜も十分に寝られず、一日中しょんぼりしているという非常に可哀想な状態になるということでした。

そのような状況が多発するようになる未来を防ぐために、ファージセラピーを応用しようとしています。

 

クラウドファンディングご支援のお願い

このクラウドファンディングが成功すれば、感染症で苦しむ犬や猫を減らし、皮膚の痒みが治らなくなるような未来を防ぐことに繋げることができます。また、最終的に実用化できれば、効果十分なファージセラピー実現の前例となり、他の様々なヒト・動物における感染症疾患に対するファージセラピーの実現も進めることができます。そうして、ヒト・動物において、性感染症を含めた感染症が治らなくなる未来を変えることができます。 

また、昨今の新型コロナウイルスの対策において、国産ワクチンや国産治療薬が無いことは様々な点でマイナスに働いています。薬剤耐性菌の高まりを受けて、ファージセラピーの開発は各国が注力している分野です。このままいくと、日本はまた出遅れることとなり、ファージ製品を海外製に頼り、不足しやすくなったり、貴重な科学技術による利益を挙げられないこととなります。なんとか日本発のファージセラピー製品を実現し、科学技術立国としての姿を少しでも取り戻すことに寄与したいと思います。どうかご支援賜れれば幸いです。よろしくお願い申し上げます。

 

クラウドファンディングの概要

【画像】2022,4,19-2

クラウドファンディング名:

感染症に苦しむ犬猫たちを救うために、感染症治療法の研究を

 

クラウドファンディングURL:

https://readyfor.jp/projects/yoboukai2022

 

目的:

耐性化が深刻な犬猫の感染症へ、新しい感染症治療法であるファージセラピーを、実用化する研究を行っています。不足している研究費を獲得するために、クラウドファンディングを開始します。

 

目標金額:150万

使途:犬猫の感染症へのファージセラピー研究を進めます。実用化に最適なファージの探索を行い、論文化まで行います。さらに資金が獲得できれば、ファージを実際に実用するために必要な性質の確認(安定性試験など)を行います。

 

SNS:

https://twitter.com/kazukimizukiros


https://www.facebook.com/kkzuki.of.mskk/


https://www.instagram.com/kitaokakazuki/

 

1) Tackling Drug-Resistant Infections Globally:Final Report, WHO, 2016
2) St Cyr S, Barbee L, Workowski KA, Bachmann LH, Pham C, Schlanger K, Torrone E, Weinstock H, Kersh EN, Thorpe P. Update to CDC’s Treatment Guidelines for Gonococcal Infection, 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020 Dec 18;69(50):1911-1916.
3) Kawakami T, Shibata S, Murayama N, Nagata M, Nishifuji K, Iwasaki T, Fukata T. Antimicrobial susceptibility and methicillin resistance in Staphylococcus pseudintermedius and Staphylococcus schleiferi subsp. coagulans isolated from dogs with pyoderma in Japan. J Vet Med Sci. 201

 

記事の執筆


著者情報 新宿サテライトクリニック 院長 北岡 一樹(きたおか かずき)

予防会 新宿サテライトクリニック 院長
早稲田大学招聘研究員

北岡 一樹(きたおか かずき)

三重大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院で研修を行った後、内科勤務しながら、名古屋大学大学院細菌学博士課程へ入学。薬剤耐性菌研究に携わり、博士(医学)取得。
その後、早稲田大学で招聘研究員として研究を開始。同時に、医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで性感染症診療も開始し、現在、院長を務めている。
性感染症について診療だけでなく研究も行っており、ファージを用いた性感染症予防の実現(性感染症予防のゲームチェンジャー)に取り組んでいる。

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