カンジダ
細菌性膣症
2022.12.15
HIV / AIDS
*この記事は、世界で最も信頼性のあるメタアナリシス(様々な研究・文献を統合して判断すること)エビデンスの1つであるUpToDate(https://www.uptodate.com)をエビデンスとして記載しております。
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HIVは、「ヒト免疫不全ウイルス」というウイルスのことを指します。HIVは、まず間質性樹状細胞と呼ばれる白血球に感染することで、ヒトの体内に侵入します。間質性樹状細胞は粘膜に豊富に存在し、粘膜が露出しているのは性器であるため、性器が直接接触することで感染します(1)。
その後CD4+T細胞という白血球に感染し、どんどんその細胞の数を減らしていきます。CD4+T細胞は免疫において非常に重要な白血球であり、数が減っていくことで免疫が機能しなくなります。
その結果として、通常は感染しないような病気にかかるようになってしまい、その状態を「後天性免疫不全症候群」、AIDS(エイズ)と呼びます。
HIV感染者のなかで、40-90%で急性レトロウイルス症候群と呼ばれる症状を呈します。しかし、残りは無症状のまま、免疫低下が進行していきます。
急性レトロウイルス症候群が出現する場合、HIV感染から症状出現まで2~4週間であることが多いですが、10カ月に及ぶこともあります(2)。
急性レトロウイルス症候群の症状は、発熱、リンパ節腫脹、咽頭痛、発疹、筋肉痛・関節痛、下痢、体重減少、頭痛などであり、風邪と見分けがつきにくいですが、特徴的な症状として、痛みを伴う粘膜皮膚潰瘍があります。
痛みを伴う粘膜皮膚潰瘍症状と風邪症状がみられる場合は、急性レトロウイルス症候群を疑う必要があります(3)。
AIDSへと進行すると、口腔・食道カンジダ症により口の中が白く痛くなったり、クリプトスポリジウムという原虫による激しく治りにくい下痢などが引き起こります。他にも免疫機能が低下することにより発症する病気が「AIDS指標疾患」として挙げられており、それらの病気の症状を呈するようになります。
HIV感染の検査としては、まずは感度の高い、ELISAと呼ばれる方法を用いたHIVスクリーニング検査を行います。かつてのHIVスクリーニング検査はHIV感染後に陽性と判定するまで2カ月程度かかっていました。しかし、改良が進められ、現在の第4世代と呼ばれる検査法では、HIV感染から1か月以内に陽性と判定できるようになり、予防会でも使用しています。また、HIVスクリーニング検査が陽性でとても落ち込んで来院される方もいますが、有病率が少ないことにより、偽陽性であることも多いので、気にしすぎず、確定検査へ進んでください。確定検査は、HIV-1、HIV-2鑑別抗体検査 やHIVウイルスの検出で行われます。ただし、確定検査においては、HIVウイルスの検出以外の方法では、HIV感染から2カ月経過しないと正しく判定できないことに留意する必要があります。
かつてHIV感染はAIDSへと至り、死に至る病でした。しかし、抗レトロウイルス治療の出現、進歩により、HIV感染患者の生存率は健常人と大差がないようになりました。
治療効果を上げるためには、HIV感染後、出来るだけ早期に治療を開始することが非常に重要です。HIV感染から4カ月以内に治療を開始した群が、それ以降に開始した群に比べて、CD4+細胞数を正常レベルで維持していた割合が多かったと示されています(4)。そのほかにも12カ月以内に治療を開始することで、97%でHIVウイルスの検出不能を達成したという報告もあります(5)。早期に治療を開始することで、HIVウイルス減少・CD4+細胞の維持による、免疫機能の維持・AIDS発症抑制を達成できます。HIV感染の段階では症状がないことも多いことから、定期的な検査を行い、早期発見を心がけることが望まれます。
現在、梅毒の感染数は、増加の一途をたどっています。ただ、個人的には、不思議には感じていません。梅毒は、もともと感染力が強いです。梅毒の皮膚病変には菌が大量に存在し、わずか数個の菌が直接接触するだけで感染が成立します。したがって、流行し始めると加速度的に感染数が増加していくと考えていました。今後、クラミジア・淋菌と同じような有病率を持つ疾患となり、落ち着くようになるかとも考えています。とはいっても、以前は診療していて、梅毒感染患者は週に1-2人だったのが、3-4人の3倍程度になったような実感です。一方、淋菌・クラミジアにおいては、毎日1-2人は感染している方が来られますので、そこまではいかないような気もしています。
梅毒の最初の症状である下疳においては、性器付近に潰瘍(小さい穴)が生じるようになります。性器に潰瘍がある場合、HIVの感染率が上昇することが示されています(6)。梅毒感染が増加している現状において、HIV感染も増加する可能性もあります。HIV検査の定期検査をしておくことを推奨します。
1) Kahn JO, Walker BD. Acute human immunodeficiency virus type 1 infection. N Engl J Med. 1998 Jul 2;339(1):33-9.
2) Ridzon R, Gallagher K, Ciesielski C, Ginsberg MB, Robertson BJ, Luo CC, DeMaria A Jr. Simultaneous transmission of human immunodeficiency virus and hepatitis C virus from a needle-stick injury. N Engl J Med. 1997 Mar 27;336(13):919-22.
3) Gaines H, von Sydow M, Pehrson PO, Lundbegh P. Clinical picture of primary HIV infection presenting as a glandular-fever-like illness. BMJ. 1988 Nov 26;297(6660):1363-8.
4) Le T, Wright EJ, Smith DM, He W, Catano G, Okulicz JF, Young JA, Clark RA, Richman DD, Little SJ, Ahuja SK. Enhanced CD4+ T-cell recovery with earlier HIV-1 antiretroviral therapy. N Engl J Med. 2013 Jan 17;368(3):218-30.
5) Kassutto S, Maghsoudi K, Johnston MN, Robbins GK, Burgett NC, Sax PE, Cohen D, Pae E, Davis B, Zachary K, Basgoz N, D’agata EM, DeGruttola V, Walker BD, Rosenberg ES. Longitudinal analysis of clinical markers following antiretroviral therapy initiated during acute or early HIV type 1 infection. Clin Infect Dis. 2006 Apr 1;42(7):1024-31.
6) Reynolds SJ, Risbud AR, Shepherd ME, et al. High rates of syphilis among STI patients are contributing to the spread of HIV-1 in India. Sex Transm Infect 2006; 82:121.
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