カンジダ
細菌性膣症
2020.01.14
HPV
※注意
●尖圭コンジローマと名前が似ている、扁平コンジローマという病気があります。
「コンジローマ」はラテン語で、「皮膚にできるイボに似た成長して大きくなる病変」という意味で先が尖っていると尖圭コンジローマと言い、形が平らであれば扁平コンジローマと言います。しかし、この両者の実態は全く別ものです。
「扁平コンジローマ」は梅毒の第二期に見られる皮疹の一つ(丘疹性梅毒疹)であるため注意が必要です。
ページ最下部に症例(画像)を掲載しています。
症例(画像)によっては、局部などの画像も含まれますので閲覧にはご注意ください。
性器や肛門の周辺に先のとがった特徴的な小さなイボができます。イボの色は、白、ピンク、褐色など様々で、大きさは1~3mm程度です。形状はニワトリの鶏冠(とさか)状やカリフラワー状などさまざまです。
症状はほとんどありませんが、痒みを感じる方もいます。自分で触ったときに何か硬いイボのようなものがあるのが心配になって来院される方が多いです。
<好発部位>
(男性)
亀頭の先端部分、冠状溝といわれる亀頭のカリの部分、ペニス本体の皮膚、陰嚢、会陰部(陰嚢と肛門の間)、尿道口、肛門周囲、肛門内などです。
(女性)
大陰唇、小陰唇、腟前庭(腟の入り口付近)、会陰、尿道口、肛門周囲、肛門内、腟内や子宮頸部など見えないところにもできます。
尖圭コンジローマの形状は、にわとりのとさか状と言われます。
尖圭コンジローマは、性感染症定点把握4疾患に該当し、全国の指定を受けた医療機関で診断された患者数を毎月管轄の保健所へ届け出ることになっています。その報告によると、平成30年の患者数は5609人で、ここ10年間は5000人台の横ばいで推移しています。男女別にみると、男性3584人、女性2025人で男性に多くみられ、例年通り男性が多い傾向にあります。最新の平成30年の年齢別でみてみると、男女ともに20~24歳が一番多い年齢層になっています。
男性に多い理由は、男性器は外に出ているため異常に気づきやすい点があげられます。15~24歳では男性より女性の方が多くなっており、今後女性の患者さんが増えてくる可能性があります。この報告は全体のごく一部であるため、日本全体での尖圭コンジローマの患総数はもっと多いです。
尖圭コンジローマは、HPVというウィルスがパートナーに感染して生じます。尖圭コンジローマの診断がついた人との性行為により、そのパートナーの3人に2人の割合でHPVを感染させてしまうという報告もあります。ウィルスの感染から3週間~8か月(平均2.8か月)でイボが生じると言われていますが、症状が分かりにくいことから、いつ感染したのかわからないことが多いです。HPV-6,11型に感染しても尖圭コンジローマになる人の割合は3%程度と言われていて、ほとんどの方はHPVに感染しても自己の免疫力で排除されます。しかし、尖圭コンジローマと診断された方のパートナーは、尖圭コンジローマがいつ自分にも発生するかと不安になるため、一度診察をしてもらった方が良いでしょう。
視診(患部を直にみて)触診(触ってみる)で診断する以外に有効な検査方法がないのが現状です。尖圭コンジローマにはいろいろなタイプがあり、線状や塊状、時には散らばったような形状の場合もあります。また、外陰部にできるイボの中には、真珠腫瘍陰茎小丘疹(男性)、腟前庭乳頭腫症(女性)という正常な生理的変化のものもあります。
生理的なものとの見分けはイボを拡大してみる必要があるので、専門的な診察が必要です。外陰部の異常に気付いた場合は受診することをお勧めします。
尖圭コンジローマの治療法には、①塗り薬による治療法、②焼灼・切除による治療法の2つの方法があります。病変の大きさや数、場所、形状、副作用、患者さんの希望によって決まります。
① 塗り薬による治療法
2007年にベセルナクリーム5%®が発売されて以来、尖圭コンジローマの第一選択治療薬になっています。この塗り薬は、感染した細胞にダメージを与え、ウィルスの増殖を抑制・消滅させる働きがあります。自分で週3日患部に塗り、10時間以内に薬を石鹸で洗い流す方法です。ゆっくり効いてきますが、傷跡が残ることも少なく再発率も少ないのが利点です。しかし、副作用として皮膚がただれることがあり、腟や腸の粘膜面への塗布は禁忌ですので、必ず定期的に医師の診察を受けながら8週間~16週間続けていきます。
図. イミキモドクリーム(ベセルナクリーム5%®)
② 焼灼・切除による外科的治療法
・冷凍凝固法
-196度の液体窒素で尖圭コンジローマを凍らせて小さくする方法です。多少の痛みが数日間続くことが難点です。
・レーザーや電気メスによる切除法
局所麻酔後に炭酸ガスレーザーや電気メスによって焼き切ります。コンジローマに直接レーザーが当たると周辺にウィルスが散ってしまうのが難点なので、術者の経験が必要です。
・外科的切除法
局所麻酔によってコンジローマを根元から浮かせて切除します。大きなコンジローマ
や、早く治療したい方には有効です。外来で短時間でできる処置ですが、清潔な手術器具が必要になり、多少出血するのが難点です。妊娠中は外科的切除法が第一選択です。
治療しても4人に1人は再発すると言われており、イボが消失した後も再発のフォローアップが必要です。
表:尖圭コンジローマの治療法比較
4価のHPVワクチン(ガーダシル®)の接種が、尖圭コンジローマの発生に関係のあるHPV-6,11型に予防効果があります。実際に、オーストラリアではこのガーダシル®の予防接種を開始したところ、予防接種した世代において尖圭コンジローマの患者発生数が減少したと報告されています。
尖圭コンジローマの多くは良性ですが、性行為によって他人に感染する危険性がある性感染症です。また、発症すると見た目が良くないので精神的なダメージを受ける方も多いです。
私が医師になりたての頃、尖圭コンジローマの治療と言えば、拷問に近い荒治療でした。しかし、この10年近くで塗り薬による治療法が始まり、再発も抑えられ、きれいに治るようになってきました。
他の性感染症と同様に、早期に発見できれば、イボも小さく、範囲も狭いために治療に反応しやすく、再発も起こりにくいです。
普段からご自身の身体についての点検をしつつ、体調の変化や身体の異変を感じる時には早めに受診することをお勧めします。
以下 症例画像
(「アトラスでみるプライベートパーツの診かた」より引用)
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