カンジダ
細菌性膣症
2021.03.15
トリコモナス
今回のコラムは、今まで外注で実施していたトリコモナス遺伝子検査が、このたび自社でできるようになったことのお知らせと、前回のコラムの内容をアップデートしたものになっています。
興味を持たれた方は、一度検査をしていただくことをお勧めします。
トリコモナス感染症の主な感染経路は、性行為です。性行為以外では、トリコモナスに感染している母親から出生した赤ちゃんに感染した例がありますが、非常に稀です。日常生活では、家族に感染することはありません。性行為以外でも感染する可能性があるという不安をあおる記事をインターネット上で見かけますが、そのようなことはありませんのでご安心ください。トリコモナスは水中で一定期間生存することがわかっていますが、このことが誤った解釈の元になっていると推察します。トリコモナスが水中で生存できたとしても、水中から生きたトリコモナスが性器に感染する根拠については、今でも私は世界中の論文を探し続けていますが、見つけることができません。
感染者と同じお風呂やタオル、トイレなどを共有することで感染してしまうなどという、感染者にとっては非常に不安になる記事を、ある著名な医師が非科学的に書いており、いかがなものか?と思います。
前述したように、トリコモナスは出産時に赤ちゃんに発生する可能性がありますが、思春期前の子供でみられることは非常に稀です。したがって、乳児を除いた子供の膣分泌物でトリコモナスが特定された場合、性的接触が発生した可能性を考える必要があります。すなわち性的虐待の可能性を考えなければいけません。このことは、英語のテキストには常識的に記述されています。もし、日本において、子供の腟分泌物でトリコモナスが検出されたことがあるなどという論文や記述が実際にあるとしたら、大変恥ずべき事です。
潜伏期間は不明です。しかし、ある研究では、患者の約50%で4〜28日の潜伏期間が示唆されています。 トリコモナスは細菌性腟炎の原因となる他の病原体と共存することができるので、トリコモナスになった場合には、それ以外の性感染症の原因菌についても調べておく必要があります。
「有病率」とは、ある時点での集団の中で疾患を有する人の割合を言います。似たような言葉に、「罹患率」というのがあります。「罹患率」は、ある特定の期間において新規に発生する症例の割合を言います。
トリコモナス感染症は、日本では保健所を通じて厚生労働省に報告する義務がないため、有病率を算出することは難しいです。しかし、アメリカのSTD Surveillance Networkに参加している15のSTDクリニックでの研究によると、膣トリコモナスの有病率は、症状のある女性では26%、無症状の女性で6.5%、HIV感染の女性で29%でした。
女性のトリコモナス感染症の年齢分布は、他の性感染症の年齢分布とは異なり、婦人科の診察で得られた腟分泌物のPCRによる検査では、女性の感染のピークは21〜22歳と48〜51歳の二峰性に発生しています。男性の有病率は3.7%であり、年齢層別では40〜49歳の男性にピークが見られたと報告されています。また、トリコモナスに感染した女性の性的パートナーの男性70%にトリコモナスの感染が認められています。
1)男性
男性の症状は、4人中3人が無症状であり、症状があっても一過性で、10日くらいで自然に軽快することが多いです。症状がある場合は、排尿時痛、排尿時の違和感、粘液膿性の尿道分泌物です。また、性交後の陰茎に軽度の掻痒や灼熱感がある場合もあります。また、前立腺炎、亀頭包皮炎、精巣上体炎、不妊症に発展することがあります。「症状が軽くなった=治った」のではなく、そのまま保菌状態となり、やがて慢性前立腺炎などに発展していくことがあります。
2)女性
女性の症状は、急性で重度の炎症から無症候性キャリアの状態まで様々です。急性炎症の症状は、灼熱感、そう痒感、排尿障害、頻尿、下腹部痛、性交痛で、おりものは、化膿性、悪臭のある分泌物です。しかし、感染が証明されている女性でも、このような典型的な症状を示すのはわずか11〜17パーセントと言われています。月経中は症状が悪化することがあります。性交後出血が発生する可能性があります。慢性的になると、症状は軽くなり、そう痒感や性交痛があるくらいで、膣分泌物も少量になります。感染した女性の70〜85%は無症候性に経過し、最終的に症状を発症していきます。無症候性の保菌状態は、長期間(少なくとも3か月)続く可能性があります。したがって、いつ、誰から感染したのかを確認できないことがよくあります。
トリコモナス症の診断は、動いているトリコモナス原虫を顕微鏡で確認する検査や培養による検査、さらに遺伝子検査があります。
下の表1にそれぞれの検査方法についてまとめました。
トリコモナスの遺伝子検査は、以前は外部の検査会社に委託していましたので、結果の判明までに3~4日間を要していましたが、今月から自社内の検査室で検査ができるようになったので、平日であれば翌日に結果が判明します。
さらに、遺伝子検査は、顕微鏡の検査法に比べて、精度が10倍以上も高く(自社調べ)、男性や精度の高い検査をご希望の方にお勧めの検査になっています。
表1.トリコモナス感染症の診断方法
トリコモナス感染症の治療方法については、前回のコラムと同じです。
セックスパートナーは、自覚症状が無くても治療が必要になります。
●妊娠していない女性とセックスパートナーの治療
・フラジール内服錠(250㎎) 2錠 分2食後 10日間内服。
●難治性の場合
・フラジール内服錠(250㎎) 2錠 分2食後 10日間内服。
+
・フラジール腟錠(250㎎) 1錠 1日1回 10~14日間 腟内挿入。
●妊娠中(3か月以内)の場合・授乳中の場合
・フラジール腟錠(250㎎) 1錠 1日1回 10~14日間 腟内挿入。
上記の治療で90~95%が治ります。
●しつこく再発を繰り返す場合は、
・フラジール内服錠(250㎎)4錠 1日1回 3~5日間内服。
※注意点
・しつこく繰り返す場合は、ピンポン感染(自分が治療して治ったのに、治療していないパートナーとの性行為で再感染すること)が考えられます。パートナーと一緒に同時治療を行うことが勧められています。
・患者およびセックスパートナーは、内服を終了後、症状が無くなるまで性交を避ける必要があります。これは通常、内服終了後約1週間程度です。
・以前、フラジール内服錠の服用中は、原則的に飲酒禁止が勧められていました。それは、悪酔いの原因となるアセトアルデヒドを体内に蓄積させる作用があるとされていましたが、最近の研究では、飲酒とあまり関係が無い可能性が示唆されています。
治癒判定は、遺伝子検査で行うのが理想的です。時期は、治療完了後2週間~3か月以内に行います。
性交時にコンドームを一貫して使用し、性的パートナーの数を制限することで、膣トリコモナス感染のリスクを減らすことができます。
性感染症が不安な方へ
あなたの症状から性感染症(STD)をチェックし、
最適なキットをご案内します。
ご自身の症状に近いものを選択してください。
性感染症は、早期発見と正しい治療が大切です。
予防会なら、保険証不要・匿名で誰にも知られずに性感染症の検査を受けることができます。
全国のクリニックでも検査が可能ですし、お時間がない方や病院に行くのは抵抗があるという方は、郵送検査キットをご活用いただくのもおススメです。
万が一、予防会の検査で陽性反応が出た場合には、予防会のクリニックや信頼できる医療機関をご紹介します。
性感染症(STD)は放置すると、取り返しがつかなくなる場合もございます。
お気軽にご相談ください。
COLUMNS
一覧を見る
NEWS
ここまでが本文です