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2023.05.15

淋菌

特集

淋菌感染予防薬開発のためのご協力のお願い

予防会は、日頃より性感染症の検査・治療に取り組んでいます。

加えて、性感染症を予防できる新たな薬の開発・導入を目指しています。

コンドームしかない現状の性感染症予防法(着用しないと防げない、確実でない)を変えるべく、早稲田大学と共同し、ファージと呼ばれるものを用いて、性感染症予防のブレイクスルー(ゲームチェンジャー)を起こそうとしています。
まず、淋菌感染を予防するファージの開発に着手しています。

そのためには、患者様のご協力が必要です。

性感染症を予防可能となる未来のためにご協力をお願いします。

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性感染症予防薬開発について

性感染症に効果のある薬は抗生物質ですが、細菌叢攪乱や薬剤耐性菌出現の観点から予防的投与が基本的に禁止されています。
したがって、性感染症の予防方法は現在、コンドーム着用のみです。

しかし、コンドームを着用していても、完全に感染を防げるわけではありません。
実際、コンドームによる性感染症予防効果として、淋菌・クラミジア・トリコモナスに対して100%ではなく、72%であったと報告されています(1)。

また、コンドーム未着用での性行為を防げない状況もあります。

予防会は、新宿サテライトクリニック院長北岡を中心とし、早稲田大学と共同して、バクテリオファージと呼ばれる生物を用いた新たな感染症制御法の開発を行っています。
(バクテリオファージ細菌にのみ感染し、溶かして殺菌する生物です)

既に開発の一環として、「流行株に有効=細菌種の大部分に有効」なファージの準備という、ファージの臨床導入へ大きく前進する方法を考案し、論文報告も行いました(2)。

そして、現在、ファージを用いて、性感染症予防を行うことを目指しています。

ファージは、抗生物質同様、殺菌する力を持ちますが、特異性が高いために、細菌叢を攪乱せず、抗生物質の薬剤耐性菌には関与しないので、予防的な投与が可能です。

特異性の高さは難点ですが、我々の考案した「流行株に有効=細菌種の大部分に有効」なファージで解決できます。
性行為の前に服薬してもらうことで、性感染症原因菌のみを殺菌し、感染を予防できるようになることを目指しています。

性感染症は感染してしまうと骨盤内炎症疾患などの重症疾患、不妊や流産に繋がってしまうため、予防が必要です。
実現できれば、コンドームが着用できなかった場合でも、性感染症感染を防げるものとなります。
新たな性感染症予防法として、性感染症予防のブレークスルー(ゲームチェンジャー)となります。

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淋菌の現状

様々な性感染症がありますが、まずは淋菌の感染を予防するファージの開発・導入に取り組んでいます。

淋菌は、子宮頸管や尿道、咽頭へ、性交渉によって感染する性感染症です。
有病率は2.4%と報告されており(3)、症状は膣の違和感、排尿時痛などありますが、70%が無症状です(4)。放置すると15%で骨盤内炎症疾患(PID)へ進行し、不妊に繋がります(5)。

抗生物質で治療されますが、年々薬剤耐性菌が増加しており、近い将来薬で治せなくなる可能性が示唆されています。

そのため、性感染症で唯一、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によりUrgent threat(最も緊急性が高い)に指定されています(6)。
そこで、薬剤耐性菌の脅威も鑑みて、まずは、淋菌に対するファージによる性感染症予防開発に着手しました。

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ご協力のお願い

淋菌感染を予防するファージの開発のためには、実際の淋菌検体が必要です。

現在、流行している淋菌株を取得し、それに対して、様々な環境サンプルをかけることで、「流行株に有効=淋菌の大部分に有効」ファージを採取します。
そのため、淋菌感染があり、治療される場合、予防会新宿サテライトクリニックの月曜、水曜~金曜にお越しいただき、検体を採取させていただければと存じます(予防会倫理審査2023-01)。

当院は、保険適用外であり、治療において8800円となってしまいますので、ご無理は申し上げません。
性感染症を予防可能となる未来のためにご協力をお願いします。

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1) Torian LV, Eavey JJ, Punsalang AP, et al. HIV type 2 in New York City, 2000-2008. Clin Infect Dis 2010; 51:1334.
2) Yamamura S, Kitaoka K, Yamasaki Y, et al. Relationship between Phage Lytic Spectra and Sequence Types in Extended-Spectrum β-Lactamase-Producing Escherichia coli Isolated in Japan. Jpn J Infect Dis. 2022;75(6):623-626.
3) World Health Organization. Global incidence and prevalence of selected curable sexually transmitted infections.
4) McCormack WM, Stumacher RJ, Johnson K, Donner A. Clinical spectrum of gonococcal infection in women. Lancet 1977; 1:1182.
5) Eschenbach DA, Buchanan TM, Pollock HM, et al. Polymicrobial etiology of acute pelvic inflammatory disease. N Engl J Med 1975; 293:166.
6) CDC’s Antibiotic Resistance Threats in the United States, 2019.

 

記事の執筆


著者情報 新宿サテライトクリニック 院長 北岡 一樹(きたおか かずき)

予防会 新宿サテライトクリニック 院長
早稲田大学招聘研究員

北岡 一樹(きたおか かずき)

三重大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院で研修を行った後、内科勤務しながら、名古屋大学大学院細菌学博士課程へ入学。薬剤耐性菌研究に携わり、博士(医学)取得。
その後、早稲田大学で招聘研究員として研究を開始。同時に、医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで性感染症診療も開始し、現在、院長を務めている。
性感染症について診療だけでなく研究も行っており、ファージを用いた性感染症予防の実現(性感染症予防のゲームチェンジャー)に取り組んでいる。

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