カンジダ
細菌性膣症
2024.01.15
マイコプラズマ
そのため、情報のアップデートも頻繁に行われています。
日々更新されている情報は、世界で最も信頼があるとされている欧米のガイドライン(UpToDate)には反映されていますが、日本のガイドライン含め、日本語の情報ではまだ反映されていないことが数多くあります。
それにより、日本語の情報では誤りが多く見受けられます。
例えば、最近、アメリカの感染症エビデンスを取りまとめるCDCにおいて、マイコプラズマの治療法に大きく変化がありました。
それに伴い、UpToDateでもエビデンスに変更がありました。
前回のマイコプラズマに関するコラムは2022年1月であり、そこで記載した情報から変化することとなったので、アップデートとして改めて記載します。
*この記事は、世界で最も信頼性のあるメタアナリシス(様々な研究・文献を統合して判断すること)エビデンスの1つであるUpToDate(https://www.uptodate.com)をエビデンスとして記載しております。
↓UpToDateについてはこちらをチェック!↓
https://yoboukai.co.jp/article/2467
マイコプラズマのなかで、性感染症を引き起こすものは、マイコプラズマ・ジェニタリウム、マイコプラズマ・ホミニス、ウレアプラズマ・パルバム、ウレアプラズマ・ウレアリティカムの4種です。
このうち、マイコプラズマ・ジェニタリウムとそれ以外で大きく性質が異なります。
まず、重要なことは、マイコプラズマ・ジェニタリウム以外のマイコプラズマは 、男女の正常な性器細菌叢の一部であるということです(1)。
一方、マイコプラズマ・ジェニタリウムは常在菌ではありません。
しかし、感染しても大部分は6カ月以内に自然治癒すると報告されています(4)。
ここも非常に複雑なところです。まず、マイコプラズマ・ジェニタリウム以外のマイコプラズマから述べていきます。
関連性が証明されているのは、ウレアプラズマ・パルバム、ウレアプラズマ・ウレアリティカムにおける尿道炎(5, 6)、マイコプラズマ・ホミニスにおける腎盂腎炎のみです(7)。
常在細菌叢の一部であるので、保菌している方のごく一部がこれらを発症します。
また、膣炎、子宮頸管炎との関連性は証明されていません。
したがって、これらによって性感染症として症状を来すとすれば排尿時違和感(尿道炎の症状)や腰痛(腎盂腎炎の症状)のみです。
これらのいずれかが陽性で、おりものの違和感を主訴に来院されることがあります。
上記のエビデンスより、マイコプラズマ・ジェニタリウム以外のマイコプラズマは尿道炎や腎盂腎炎にしか関与せず、おりものには影響しません。
この状況の場合、おりものの違和感自身は細菌性膣症やカンジダによるものであることが多いです。
細菌性膣症やカンジダの治療でおりものの違和感が改善し、マイコプラズマ・ジェニタリウム以外のマイコプラズマの陽性は常在菌としての保菌を表しているだけであったということをよく経験します。
一方、マイコプラズマ・ジェニタリウムは尿道炎、子宮頸管炎と関連していることが証明されています。
したがって、症状としては、排尿時違和感(尿道炎の症状)、膣・おりものの違和感(子宮頸管炎)となります。
また、いずれのマイコプラズマにおいても、不妊や早産、流産との関連性があるという報告はありますが、全体として(メタアナリシス)証明にまでは至っていません(8)。
マイコプラズマの性感染症の低い有症状率、不妊・早産や流産との非関連性から、検査の推奨度も高くありません。
尿道炎・子宮頸管炎症状を訴える患者さんにおいて、よくある淋菌・クラミジア・トリコモナスが陰性であった場合に検査・治療が推奨されます(9)。
一方、証明はされていないですが、不妊・早産や流産との関連性が少しでも気になる場合は、検査・治療をするというのも誤りではありません。
検査方法としては、淋菌・クラミジアなどと同様、遺伝子検査がゴールドスタンダードとなっており、予防会でも使用しています。
また、マイコプラズマ・ジェニタリウム以外のマイコプラズマは常在菌であるため、数が変動し、保菌していても検査のタイミングによっては陰性になったり、陽性になったりすることもあるとされています。
治療に関することが、この約2年間でアップデートされました。
マイコプラズマ・ジェニタリウム以外のマイコプラズマに関しては大きく変化はありません。
第一選択薬はドキシサイクリン、代替薬がアジスロマイシンやフルオロキノロン(レボフロキサシンやモキシフロキサシン)です。
しかし、薬剤耐性率は上昇しており、これらで治癒しない可能性も増えてきています。
マイコプラズマ・ジェニタリウム治療に関する情報がアップデートされました。
かつては、マイコプラズマ・ジェニタリウム以外のマイコプラズマと同様、ドキシサイクリンが第一選択薬でした。
今回のアップデートによって、第一選択薬はモキシフロキサシン、第二選択薬は高用量アジスロマイシンとなりました。
また、アメリカのガイドライン(CDC)においては、モキシフロキサシンの治療前にドキシサイクリンを1週間加療することを推奨するようになりましたが、これは世界的なコンセンサスを得られるまでには至っていません。
また、マイコプラズマ・ジェニタリウムに関しても、薬剤耐性率は上昇しており、治癒しないことも散見されます。
予防会では、ファージセラピーという新たな治療法の開発も行っています。
いつの日か、薬剤耐性マイコプラズマによる性感染症の症状で苦しむ方々を救えるようになることを目指しています。
・マイコプラズマ・ジェニタリウム以外のマイコプラズマは男女の正常な性器細菌叢の一部
マイコプラズマ・ウレアプラズマ共に不妊・早産や流産との関連性は確実には証明されていない
→症状がある(尿道炎症状および子宮頸管炎(子宮頸管炎はマイコプラズマ・ジェニタリウムのみ))場合のみ治療(不妊・早産や流産が少しでも気になる場合は治療も可)
・マイコプラズマ・ジェニタリウム以外→ドキシサイクリンが第一選択
マイコプラズマ・ジェニタリウム→モキシフロキサシンが第一選択
UpToDate: Mycoplasma genitalium infection in men and women
UpToDate: Mycoplasma hominis and Ureaplasma infectionsを基にしています
1) McCormack WM, Rosner B, Lee YH. Colonization with genital mycoplasmas in women. Am J Epidemiol 1973; 97:240.
2) Waites KB, Schelonka RL, Xiao L, et al. Congenital and opportunistic infections: Ureaplasma species and Mycoplasma hominis. Semin Fetal Neonatal Med 2009; 14:190.
3) Lee YH, Rosner B, Alpert S, et al. Clinical and microbiological investigation of men with urethritis. J Infect Dis 1978; 138:798.
4) Vandepitte J, Weiss HA, Kyakuwa N, Nakubulwa S, Muller E, Buvé A, Van der Stuyft P, Hayes R, Grosskurth H. Natural history of Mycoplasma genitalium infection in a cohort of female sex workers in Kampala, Uganda. Sex Transm Dis. 2013 May;40(5):422-7.
5) Cox C, McKenna JP, Watt AP, Coyle PV. Ureaplasma parvum and Mycoplasma genitalium are found to be significantly associated with microscopyconfirmed urethritis in a routine genitourinary medicine setting. Int J STD AIDS 2016; 27:861.
6) Couldwell DL, Gidding HF, Freedman EV, et al. Ureaplasma urealyticum is significantly associated with non-gonococcal urethritis in heterosexual Sydney men. Int J STD AIDS 2010; 21:337.
7) Taylor-Robinson D. Infections due to species of Mycoplasma and Ureaplasma: an update. Clin Infect Dis 1996; 23:671.
8) Taylor-Robinson D, Jensen JS. Mycoplasma genitalium: from Chrysalis to multicolored butterfly. Clin Microbiol Rev 2011; 24:498.
9) Workowski KA, Bachmann LH, Chan PA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep 2021; 70:1.
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