カンジダ
細菌性膣症
2019.07.12
トリコモナス
いきなり、クイズです。
Q.世界で一番流行っている性感染症は何でしょう?
(ヒントは今回のコラムのタイトルです。)
A.正解は、「トリコモナス感染症」です。(簡単でしたね)
先日、この衝撃的なニュースが発表されました。
世界保健機関(WHO)が2016年に15歳~49歳を対象にした調査報告によると、新規の性感染症患者数は、
・トリコモナス感染症が1億5600万人
・クラミジア感染症が1億2700万人
・淋病が8700万人
・梅毒が630万人
なんと、トリコモナス感染症が堂々の1位でした!
これは世界の25人に1人が上記4種類の性感染症のうちの1つに感染しているという数値です。国による差はあるにせよ、世界で毎日約100万人が新規に性感染症に感染していることになります。性感染症と言えば、「クラミジア感染症」、「淋病」というイメージが強いですが、実は日本でも「トリコモナス症」は多いです。
目次 [閉じる]
(顕微鏡で見たトリコモナス)
トリコモナスは、微生物学的には、菌でもウィルスでもなく、「虫」に分類されています。
もっと詳しく言うと、原虫という寄生虫です。寄生虫というと、「ぎょう虫」や「回虫」、「サナダ虫」が頭に浮かぶと思いますが、そんなに大きくありません。
トリコモナスは、せいぜい0.1mmの大きさで、顕微鏡でやっと見つけられるくらいです。
そして、運動、摂食、消化、代謝、栄養貯蔵、生殖、排泄というように「生き物」としての活動をしています。
ヒトに寄生するトリコモナスは、困ったことに腟や尿道が好きなのです。ちなみに腸が好きなトリコモナスもいますが、こちらはあまり悪さをしません。
腟を住みかにしているトリコモナスはTrichomonas vaginalisという名前です。そのトリコモナスは腟粘膜細胞にあるグリコーゲン(糖)を栄養源として生きています。
健康な女性の腟内には常在菌(正常な菌)であるLactobacillusという乳酸菌がたくさんいて、グリコーゲンから乳酸を作り出し、腟内を酸性に保つことで悪い菌の侵入、繁殖を防いでいます。
ところが、トリコモナスも同じグリコーゲンを栄養源としているので、乳酸菌よりもはるかに大きいトリコモナスに栄養を横取りされると、乳酸菌はどんどん少なくなり、腟内を酸性に保つことができなくなり、悪臭の原因となる嫌気性菌や大腸菌などが腟内へ侵入して繁殖してしまいます。その結果、おりものの増加、かゆみ、悪臭といった症状が強く現れるのです。
接触感染。すなわちセックスで感染します。
感染予防はコンドームを使用することです。
かつては、性交経験のない女性や幼児に感染者がみられたことから、不衛生な下着やタオルなどからの感染の可能性が考えられていました。しかし、現在の日本はとても衛生的になっているので、例えば、使用済みの下着を使い回すような不衛生なことが無ければ、まずセックス以外の経路からの感染は起こりにくいと言えるでしょう。
平均して、5日~1か月の間に症状が出ることが多く、半年以上経って症状が現れる方もいます。
(男性より女性の方に強い症状が現れます)
(女性の症状)
■ 外陰部のかゆみ(掻きむしるほどの強烈な痒みを感じる方もいます)
■ 悪臭(魚の腐った臭いなどと言われることがあります)
■ 黄色~緑~淡い灰色の泡立ったようなおりものが増える。
■ 腹痛や発熱などの症状があれば骨盤腹膜炎の可能性があります。放置すると不妊症の原因にもなります。
■ 妊娠中にかかると、早産や早期破水などの原因になります。
■ 約10~20%は無症状の方もいます。
(男性の症状)
■ 男性の場合は、50%~75%の方が無症状と言われています。前立腺や精嚢(精子を溜めておく場所)でトリコモナスは増殖するため、前立腺炎や尿道炎を生じます。排尿時の尿道のかゆみや違和感、極めて微量の尿道分泌物を認める方もいます。
■ 10年くらい前は、トリコモナス感染が将来的に前立腺がんのリスクを高めるとの報告が散見されていました。しかし、近年では「トリコモナス感染と前立腺がんとの積極的な関連は無い」との報告が多くなっています。
(男性は女性に比べてトリコモナス原虫の検出が困難でしたが、最新のトリコモナスDNA検査により検出率が上がりました。当院でも実施している検査です!
検査情報を確認する⇒ https://twitter.com/yoboukai/status/1387929668934766595
2021年4月30日(金)までクリニック受診では最新検査キャンペーンを行っています。
・顕微鏡による目視での検査
女性の場合:おりものを採取し、顕微鏡でトリコモナス原虫の活動を観察します。
男性の場合:尿での検出は難しく、分泌物を採取し顕微鏡で観察します。
報告所要日数:即時。
良い点:その場で結果が判明するので、治療をすぐに開始できます。
悪い点:トリコモナスの数が少ない場合は見つけづらい。男性では難しい検査。
・トリコモナス専用培地での培養検査
女性の場合:おりものを採取し培養して診断します。
男性の場合:尿を培養して診断します。
報告所要日数:3-7日間。
良い点:男性でも検査可能です。
悪い点:結果の判明までに数日(3~7日)かかるため、治療開始が遅れます。
・トリコモナスDNA検査
女性の場合:おりもの採取で検査できます。
男性の場合:初尿最低3mlで検査できます。
報告所要日数:2~4日間。
良い点:男性でも検査可能です。検出率が高い。
悪い点:結果の判明に2~4日間かかる。
(男性は自覚症状が無くても、パートナーが感染していれば治療が必要です)
上記の治療で90~95%が治ります!
しかし、
◆12週未満の妊婦さんは、飲み薬が赤ちゃんに影響するので腟錠だけの治療です。
◆ピンポン感染(自分が治療して治ったのに、治療していないパートナーとの性行為で再感染すること)を防ぐため、パートナーと一緒に同時治療を行うのが良いです。
◆フラジール内服錠の服用中は、飲酒は原則的に禁止です!
(アルコールの作用が強まり、強い腹痛、嘔吐、身体が赤くなるので飲酒は避けてください。)
自覚症状(かゆみ、におい、おりものの量など)の改善と、トリコモナス原虫消失が確認できれば治癒です。
再検査の時期は、トリコモナス原虫は月経中に増殖するため、次回の月経終了後が良いでしょう。
・不安な性行為後1週間くらいして、おりものの悪臭、色の変化、かゆみが現れやすい。
・男性は半数以上が無症状で気づきにくい。
・女性は顕微鏡の検査ですぐに判定できる。男性はトリコモナスDNA検査で判定。
・男性も女性もフラジール内服錠の服用を原則として、女性は腟錠も併用すると早めに症状は軽減する。
・陽性と判定されたら、ピンポン感染を防ぐためにパートナーと一緒に同時治療する。
・フラジール内服錠の服用中は原則禁酒する。
・自覚症状の改善と次回の月経終了後にトリコモナス原虫の消失の確認をもって治癒と判定する。
・自然に治ることはほとんどないので、気になる症状があれば病院を受診しましょう!
検査情報を確認する⇒ https://twitter.com/yoboukai/status/1387929668934766595
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