カンジダ
細菌性膣症
2019.11.15
クラミジア
クラミジア感染症は、世界で毎年約1億3100万人が新規に感染すると報告されています。
ちなみ、日本の人口(1億2700万人弱)とほぼ同数ですね・・・。
当院でも、クラミジア感染症の患者さんの割合が最も多く、最近では咽頭クラミジアの割合も増加傾向です。
いわゆる性感染症のクラミジアは、クラミジア目クラミジア科クラミジア属のトラコマティスという名前です。微生物学的にクラミジアの親戚はたくさんいます。しかし、ヒトに対して病原性を持つものは3種類だけです。クラミジア肺炎を起こすクラミジアと性感染症を起こすクラミジアは別の種類になります。
先日、患者さんから「クラミジアって、なんで何回もかかるんですか!?」と多少怒り気味に質問を受けたことがあります。
その答えは、「クラミジアは免疫が成立しにくいから・・・」です。
これでは、ちょっと何を言っているのかわからないですね。
では、なぜ免疫が成立しにくいのか?
ヒトは病原体にさらされると、それに対する「抗体」が身体の中で作られ、白血球が病原体を敵と認識することで、この「抗体」という武器を用いて病原体を排除する、この一連の流れを免疫と言います。
しかし、クラミジアは「偏性細胞内寄生細菌」といって、エネルギーの大部分を宿主細胞に依存して、動物の細胞内でしか増殖ができない細菌です。宿主細胞の中で増殖するものというと、ウィルスが思い浮かびますが、クラミジアはウィルスよりも大きく、細胞壁があり、分裂して増殖するなど、特徴はウィルスよりも細菌に似ています。しかも、増殖したクラミジアは、宿主細胞を崩壊して外に放出され、すぐに次の細胞に感染します。
このように、「ウィルスに似た生活環で増殖するけれども正体は細菌」というのがクラミジアであり、その独特な特徴のために免疫が成立しにくいと考えられています。
「免疫が成立しにくい=自然に治ることは難しい・何度も繰り返し感染する。」なのです。
図. クラミジアの生活環(引用:国立感染症研究所ホームページhttps://idsc.niid.go.jp/idwr/kansen/k01_g3/k01_45/fig2.gif)
免疫が成立しにくいということは、白血球による攻撃力が弱く、熱や痛みのような炎症症状も軽度ということになります。したがって、あまり自覚症状を伴わずに進行していくのがクラミジア感染症の特徴で、男性では精管や精巣、女性では卵管や腹腔内へ、体の奥の方に忍び寄って慢性的に軽度の炎症を起こし続けるため、不妊の原因になります。
このように、クラミジアの免疫が成立しにくい理由について少しおわかりいただけたと思いますが、なんと!このクラミジアに対してワクチンができるかもしれないというニュースが飛び込んできました!
ワクチンとは、来たるべき病原体の感染を予防する目的で、あらかじめ免疫を成立させておくために接種するものです。例えば、インフルエンザウィルスのワクチンが有名ですね。
今までさんざん免疫が成立しにくいと言ってきたように、クラミジアのワクチンを開発することは極めて困難と言われていました。
2019年8月に医学雑誌の中で最も権威のある「The Lancet Infectious Disease」に、デンマーク国立血清研究所ワクチン研究センターのFrank Follmann博士らが、「Safety and immunogenicity of the chlamydia vaccine candidate CTH522 adjuvanted with CAF01 liposomes or aluminium hydroxide: a first-in-human, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 1 trial」という論文を発表しました。
この論文によると、19~45歳の健康な女性35人を対象に、2種類のクラミジアワクチンのいずれかを接種する群、または、プラセボを接種する群、の3つの群に無作為に割り当てて研究したところ、クラミジアワクチンを接種した全員に、クラミジアに対する抗体の産生が認められました。しかも2種類のクラミジアワクチンのうちの1つは、特に抗体産生能力が優れていることがわかったそうです。
副作用は、注射部位の痛みで、ほとんどが軽症で2~4日で消失し、安全性についても問題が無かったとしています。
性器クラミジア感染症に対するワクチンの安全性と有効性が確認されましたが、ワクチンが製品になって実用化されるまでには、まだまだ時間がかかると言われています。また、ワクチンによって産生されたクラミジア抗体が、果たしてクラミジア感染の予防にどの程度効果があるのかについては、今後のさらなる研究が必要と述べています。
免疫が成立しにくいと言われていたクラミジアに対して、ヒトでワクチンを使って抗体を産生することができたということは、クラミジア感染症攻略の大きな第一歩だと思います。
この論文では、女性を対象にしていましたが、男性においても同様の効果があれば、男性にもワクチンを接種することができれば、クラミジア感染症の蔓延を防ぐことになると思います。現在、性感染症予防ワクチンは、B型肝炎ワクチンとHPVワクチンの2種類のみですが、このクラミジアワクチンが3番目のワクチンとして実用化できる日が来ることを期待したいと思います。
男女ともにクラミジア感染症は自覚症状が軽度で、放置していると、菌が身体の奥へ進んでしまい、薬が効きにくくなるだけでなく、将来不妊症になる危険性があります。女性の場合は、クラミジア感染症にかかると子宮外妊娠になる確率が高くなることがわかっています。子宮外妊娠は、お腹の中で大量に出血する場合、命が危険にさらされることがあります。
大切な人と出会い一緒になり赤ちゃんが欲しいと思ったときに、不妊症でさらに治療が必要になる可能性もあるので、不特定多数の方と関係していたり、コンドームを使用しないsexが多い方は、日頃から性感染症検査を定期的に受けるようにして、陽性であれば早めに治療することをお勧めします。
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