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2021.11.15

梅毒

診断・治療ともに難しい梅毒

 

  1. 梅毒について

梅毒は、Treponema pallidumというスピロヘータと呼ばれる細菌によって引き起こされる性感染症です。症状としては、一次梅毒、二次梅毒、三次梅毒に分かれます。一次梅毒では、痛みのない性器部分の潰瘍(硬性下疳と言われます)、二次梅毒では全身性の斑状の発疹(バラ疹と言われます)、三次梅毒では、心血管や軟部組織の障害(大動脈弁閉鎖不全やゴム腫など)を呈します。加えて、中枢神経が侵され、麻痺等が出現する神経梅毒となることもあります。かつては三次梅毒、神経梅毒から死に至る病でしたが、検査、治療法が発達した現代では、二次梅毒までに分かることが多く、死に至ることはほとんどありません。性病検査の意識の高まりから、症状発症前にわかることもあります。しかし、症状発症前に検査のみで梅毒を判定することが増えることにより、ますます診断・治療が難しくなってきています。

 

  1. 梅毒の検査

梅毒にかかっているかどうか調べるには血液検査が必要です。梅毒を確定的に検査するのは、梅毒を直接(梅毒の抗原)測定するトレポネーマ検査(様々な検査名・検査法がありますが、代表的なのものはTP検査と略されるものです)です。TP検査だけでよいように思われますが、診断・治療にあたり、病勢の情報が必要となるため、梅毒を間接的に測定する非トレポネーマ検査(様々な検査名・検査法がありますが、代表的なのものはRPR検査と略されるものです)も必要となり、基本的にはこれら両者を検査することとなります。

そのように検査することによって、4つの検査結果が返ってくることとなります。

 

■TP検査、RPR検査両方とも陽性の場合

梅毒にかかったことのない人の場合は梅毒が確定的となります。梅毒にかかったことがある人の場合は、両方とも陽性を継続することがあり(セロファストと呼びます)、以前のRPR検査の値と比べて、上昇があるかどうかで(4倍以上が基準とされます)、再発かどうか判定します。

 

■TP検査陰性、RPR検査陽性の場合

基本的には梅毒ではないのに梅毒と判定されてしまう偽陽性とされます(生物学的偽陽性といわれます)。アメリカでは人口の1-2%がこの結果になり、梅毒の偽陽性となると推定されています(1)。妊娠、風邪などの急性熱性疾患が影響するといわれています。ワクチン接種などで偽陽性となってしまうことも報告されており(2)、新型コロナワクチン接種の高まりを受け、偽陽性が増えるとも思われます。また、自己免疫疾患、慢性肝疾患も影響するため、偽陽性と言ってもこれらの疾患に罹っている可能性があり、注意が必要です。また、梅毒早期で、TP検査がまだ陽性になっていない可能性もあり、感染機会(最終性交渉)から十分な期間(6-8週間)が経っていない場合は、2-4週間後に再検査する必要があります。

 

■TP検査陽性、RPR検査陰性の場合

梅毒にかかったことがあり、治癒した人は通常このパターンとなり、その場合は問題がありません。問題なのは梅毒の治療歴がない場合で、初期の梅毒、時間の経過と共にRPRが陰性となった後期潜伏性梅毒の可能性があります。梅毒症状出現の確認、RPR検査、梅毒の違う抗原を検出するトレポネーマ検査等を繰り返し行い、どちらであるか確定していくことになります。また、後期潜伏性梅毒の危険性を考えて、判断がつかなくても治療を開始することもあります。

 

■TP検査、RPR検査陰性の場合

基本的に梅毒にかかっていないと判断できます。ただし、TP検査、RPR検査ともに通常2-4週間(最大6-8週間)で陽性となるため、感染機会(最終性行為)からその期間に達していない場合は、信頼性が低いです。

以上、非常に解釈が複雑です。梅毒検査を受けられた人に、よく結果が分かりませんと言われます。勿論、ご来院された方にはご説明しますが、ご自身でも考えられた方が、理解が深まりますので、上記を基に少し解釈にトライしていただければと思います。

また、実臨床においては、これに加えて、臨床症状、患者さんの背景などを加味して、診断、治療決定をしていく必要があり、知識、経験を要求されるため、性感染症検査・治療の専門機関への受診をオススメします。

 

  1. 梅毒の治療

梅毒治療の基本薬剤はアモキシシリン(サワシリンなどの別名もあります)という内服薬となります。ただし、通常の性感染症より長期間(14-28日)かつ中断のない内服が必要となり、根気強い治療が要求されます。

また、三次梅毒の症状がみられたり、後期潜伏性梅毒が疑われる場合は、さらに長期間の治療が必要となります。ただし、梅毒治療の中心は世界的には、日本では認められていないペニシリンの筋肉注薬であるため、アモキシシリンを使用したエビデンスのあるデータが少なく、アモキシシリンによる三次梅毒、後期潜伏性梅毒治療の明確なエビデンスがありません。そこで、明確なエビデンスのあるドキシサイクリンという内服薬による治療が選択されることもあります(3)。また、治療を開始すると、10-35%で最初の24時間以内に急性発熱反応が起こります(4)。通常、12~24時間以内に何もしなくても治りますが、注意を払っておく必要があります。

治癒の判断も通常の病気によくあるような、陰性を以て治療終了ということにはならず、難しさがあります。世界的な感染症治療の権威であるアメリカ疾病予防管理センター(CDC)より示されているのは、RPR検査値で4倍以上の低下を判断基準にするということです(3)。また、治癒後もRPR検査で陰性とならないセロファスト状態となっている場合は、再度RPRが上昇し、梅毒の残存が疑われる状況となることもあることから、1-2年間は半年ごとの検査フォローが必要とされています。

また、パートナーの治療も重要であり、基本的に90日以内に梅毒感染者とコンドームなしの性行為があれば、治療することが推奨されています。90日以上経過している場合は、検査して治療判断をすることとされています。

以上、治療も様々な考慮が必要です。私も性感染症治療に従事していて、梅毒が一番、日々、新たなパターンの患者さんに出会い、様々に文献を調べアップデートするという作業を必要とし、苦労しています。

 

  1. まとめ

梅毒は診断、治療共に、十分な理解と経験が必要→性感染症専門の病院への受診をオススメ

 

1) Larsen SA. Syphilis. Clin Lab Med. 1989 Sep;9(3):545-57.

2) Larsen SA, Steiner BM, Rudolph AH. Laboratory diagnosis and interpretation of tests for syphilis. Clin Microbiol Rev. 1995 Jan;8(1):1-21.

3) Workowski KA, Bolan GA; Centers for Disease Control and Prevention. Sexually transmitted diseases treatment guidelines, 2015. MMWR Recomm Rep. 2015 Jun 5;64(RR-03):1-137. Erratum in: MMWR Recomm Rep. 2015 Aug 28;64(33):924.

4) ang CJ, Lee NY, Lin YH, Lee HC, Ko WC, Liao CH, Wu CH, Hsieh CY, Wu PY, Liu WC, Chang YC, Hung CC. Jarisch-Herxheimer reaction after penicillin therapy among patients with syphilis in the era of the hiv infection epidemic: incidence and risk factors. Clin Infect Dis. 2010 Oct 15;51(8):976-9.

 

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記事の執筆


著者情報 新宿サテライトクリニック 院長 北岡 一樹(きたおか かずき)

予防会 新宿サテライトクリニック 院長
早稲田大学招聘研究員

北岡 一樹(きたおか かずき)

三重大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院で研修を行った後、内科勤務しながら、名古屋大学大学院細菌学博士課程へ入学。薬剤耐性菌研究に携わり、博士(医学)取得。
その後、早稲田大学で招聘研究員として研究を開始。同時に、医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで性感染症診療も開始し、現在、院長を務めている。
性感染症について診療だけでなく研究も行っており、ファージを用いた性感染症予防の実現(性感染症予防のゲームチェンジャー)に取り組んでいる。

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