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2022.02.15

HPV

日本でも世界的コンセンサスに準じることとなったHPVワクチンについて

HPVはほとんどの子宮頸がんのきっかけとなるといわれており、それを防ぐためにワクチン接種が世界的にエビデンスをもとにして行われてきました。日本では様々な事情から定期接種の推奨が中断されていましたが、令和3年11月26日より、再開されることとなりました。これらを中心に述べていきます。

 

 

1. HPVについて

HPVはヒトパピローマウイルスの略です。200種類以上の型があり、性器を中心に皮膚や粘膜に感染します。 HPVの伝播は性行為が中心となりますが、密接な皮膚接触によっても感染します(1)。したがって、コンドームの使用はHPVの伝播リスクを低下させますが、完全に防ぐことはできません。この高い伝播性により、健康成人の大部分は生涯に一度は何らかタイプのHPVに感染すると推定されています(2)。

基本的にはHPVが感染しても12カ月以内に消失します。一部のHPVは感染を継続し、がんのリスクとなることがあります。ほとんどの子宮頸がんはHPV感染がきっかけとなっているといわれており、原因となっているHPVのタイプはそれぞれ16型が50%、18型が20%、31、33、45、52、58型が19%を占めると報告されています(3, 4)。また、膣がん、陰茎がん、肛門がん、口腔咽頭がんにも関連し、それらで原因となるHPVのタイプも16型や18型が中心であるとされています(5)。他にも、HPVは尖圭コンジローマという性感染症の原因にもなり、その原因となるHPVの型は6型および11型が大多数を占めます(6)。

 

2. HPVワクチンについて

感染したHPVを体内から除去する方法は現在のところありません。また、コンドームではHPVの感染を防げません。したがって、HPV感染によりがんが発生してしまうことを防ぐには、がんリスクとなりうるHPVに対するワクチンを接種し、感染を予防することが必要となります。
現在、予防するHPVのタイプの種類と数が異なる3種類のワクチンが存在します。2価ワクチン(サーバリックス)は、がんリスクの最も高い16型、18型に対するワクチンです。4価ワクチン(ガーダシル)では、尖圭コンジローマの原因となることの多い6型、11型が追加されています。9価ワクチン(ガーダシル9)では、ガーダシルに16型、18型以外で子宮頸がんリスクとして報告の多い31、33、45、52、58型が追加されています。
HPVワクチンが子宮頸がんの発生を低下させることは様々な大規模無作為化二重盲検試験によって示されています(7、8、9、10、11)。それに伴い、米国の予防接種に関する勧告機関であるACIPから、HPVワクチンの定期接種が推奨され、多くの国で準拠されています。
ACIPによる勧告では、11-12歳で全ての男女が接種することが基本とされ、13-26歳でも接種されていない場合には接種が推奨されます。27歳以上では、高リスクのHPVにかかっていないと考えられる場合に接種が推奨されることとなっています。また、HPVワクチンは、初回、1~2ヶ月後、6ヶ月後に3回接種する必要があります。ワクチンの3回接種が完了できず長期間中断された場合は、再開せずに、新たに接種について検討することが良いとされています。
全てのHPVワクチンは、大規模臨床試験で安全性が確認され、販売後の安全性監視システムからも安全性が担保されています。これらの知見から、WHOより、安全性に問題はないと宣言され、加えて、散見される生物学的または疫学的な立証がなされていない逸話的な報告に基づいて提起される有害性の主張に対して警告が発せられています(12)。

 

3. 日本におけるHPVワクチンについて

2で述べた内容は、現在の世界的なHPVワクチンの状況です。2で述べたように、これらについてはエビデンスがあり世界的なコンセンサスが取られているのにもかかわらず、日本では複雑な状況となっていました。
かつては、日本でも世界的なコンセンサスに従い、HPVワクチンが定期接種されてきました。しかし、「ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛」の報告が見られるようになり、平成25年に定期接種の積極的な推奨が控えられることとなりました。その後も継続的にHPVワクチンの安全性について議論が行われ、改めてHPVワクチンの安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められたことにより、令和3年11月26日に再度、HPVワクチン定期期接種が積極的に推奨されることとなりました(健発1126第1号)。
したがいまして、現在は、日本においても、世界的なHPVワクチンのコンセンサスに準じることとなり、小学生6年生-高校1年生の女子は、サーバリックスかガーダシルの3回接種を無料で受けられることとなりました。また、積極的な接種が控えられていた時期に接種時期を迎えられていた方は不利益を被っているので、キャッチアップ接種というのも行われています。平成9年生まれから平成17年生まれの方も、令和4年4月から令和7年3月まで、無料で接種できます。
また、上記に該当しない年齢の方も、2で述べたように、高リスクのHPVにかかっていないと考えられる場合に接種が推奨されます。予防会ではHPV型同定検査も行っており、気になる方は一度、検査して、高リスクのHPVにかかっているかどうか確認することをご検討ください。

 

4.まとめ

日本でも、HPVワクチンが世界的コンセンサスに準じて接種されるようになりました。キャッチアップ接種もあり、現在、小学生6年生-高校1年生の女子に加えて、平成9年生まれから平成17年生まれの方は接種が推奨されます。また、該当しない方も高リスクのHPVに感染していなければ接種推奨となり、予防会ではHPV型同定検査も行っておりますので、お気軽にご相談ください。

 

1) Palefsky JM. Cutaneous and genital HPV-associated lesions in HIV-infected patients. Clin Dermatol. 1997 May-Jun;15(3):439-47.
2) http://www.cdc.gov/std/HPV/STDFact-HPV.htm (Accessed on January 15, 2022).
3) de Sanjose S, Quint WG, Alemany L, et al. Human papillomavirus genotype attribution in invasive cervical cancer: a retrospective cross-sectional worldwide study. Lancet Oncol 2010; 11:1048.
4) Serrano B, Alemany L, Tous S, Bruni L, Clifford GM, Weiss T, Bosch FX, de Sanjosé S. Potential impact of a nine-valent vaccine in human papillomavirus related cervical disease. Infect Agent Cancer. 2012 Dec 29;7(1):38.
5) Beutner KR. Nongenital human papillomavirus infections. Clin Lab Med. 2000 Jun;20(2):423-30.
6) von Krogh G, Lacey CJ, Gross G, Barrasso R, Schneider A. European course on HPV associated pathology: guidelines for primary care physicians for the diagnosis and management of anogenital warts. Sex Transm Infect. 2000 Jun;76(3):162-8.
7) Garland SM, Hernandez-Avila M, Wheeler CM, et al. Quadrivalent vaccine against human papillomavirus to prevent anogenital diseases. N Engl J Med 2007; 356:1928.
8) FUTURE II Study Group. Quadrivalent vaccine against human papillomavirus to prevent high-grade cervical lesions. N Engl J Med 2007; 356:1915.
9) Joura EA, Giuliano AR, Iversen OE, et al. A 9-valent HPV vaccine against infection and intraepithelial neoplasia in women. N Engl J Med 2015; 372:711.
10) Paavonen J, Naud P, Salmerón J, et al. Efficacy of human papillomavirus (HPV)-16/18 AS04-adjuvanted vaccine against cervical infection and precancer caused by oncogenic HPV types (PATRICIA): final analysis of a double-blind, randomised study in young women. Lancet 2009; 374:301.
11) Hildesheim A, Wacholder S, Catteau G, et al. Efficacy of the HPV-16/18 vaccine: final according to protocol results from the blinded phase of the randomized Costa Rica HPV16/18 vaccine trial. Vaccine 2014; 32:5087.
12) World Health Organization. Global Advisory Committee on Vaccine Safety statement on the continued safety of HPV vaccination. March 12, 2014.

 

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記事の執筆


著者情報 新宿サテライトクリニック 院長 北岡 一樹(きたおか かずき)

予防会 新宿サテライトクリニック 院長
早稲田大学招聘研究員

北岡 一樹(きたおか かずき)

三重大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院で研修を行った後、内科勤務しながら、名古屋大学大学院細菌学博士課程へ入学。薬剤耐性菌研究に携わり、博士(医学)取得。
その後、早稲田大学で招聘研究員として研究を開始。同時に、医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで性感染症診療も開始し、現在、院長を務めている。
性感染症について診療だけでなく研究も行っており、ファージを用いた性感染症予防の実現(性感染症予防のゲームチェンジャー)に取り組んでいる。

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