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2022.09.15

淋菌

STDを防ぐ

特集

新しい感染症治療法(ファージセラピー)に関する予防会の研究・論文のご紹介

現在、新型コロナウイルス感染症で危機的な状況が続いていますが、実は、「薬剤耐性菌による感染症」による脅威も進行しており、2050年には世界最大の死因となり、世界最大の不治の病となると予想されています。

その対策の切り札としてファージセラピーという新しい感染症治療法があり、その実用化に向けて予防会は早稲田大学と協同して研究に取り組んでいます。

ファージセラピーには「有効な範囲が狭い」という大きな欠点がありますが、その1つの解決策を考え、結果を論文にまとめ、JJID(インパクトファクター:1.36)という学術誌に公開されました。
ファージセラピーの欠点克服・実用化に向けた大きな一歩となり、さらに研究を進めています。そのご紹介を致します。

 

ファージセラピー

 

 

感染症を巡る今後の世界について

 

2019年に新型コロナウイルス感染症が発生し、パンデミックとなっています。

実は、新型コロナウイルスの悲惨な拡散の裏で、「薬剤耐性菌」と呼ばれる抗生物質が効きにくい感染症とそれによる死亡もどんどん増加しています。

現在の世界最大死因は「ガン」であり、「薬剤耐性菌による感染症」は死因の第5位に過ぎませんが、2050年には、「薬剤耐性菌による感染症」が世界最大の死因となると推定されています(1)。つまり、将来的には、薬剤耐性菌による感染症が世界最大の不治の病となるということです。

性感染症においても、例外ではなく、薬剤耐性菌の脅威が迫っています。

例えば、淋菌に対する第一選択薬はセフトリアキソンの注射ですが、薬剤耐性菌が増加し続けています。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)より、以前は125-250mgの用量で治療可能とされていましたが、現在は500mg-1gの用量が必要と発表されるに至っています(2)。このままではいずれセフトリアキソンの注射で治癒不可能となる可能性が高く、不治となる可能性があります。

非常に危機的な状況であり、WHOから「薬剤耐性に関するグローバル・アクション・プラン」というものが発出され、対策に取り組まれていますが、現状、打つ手はありません。抗生物質に代わる効果的な新規治療法は実現されていません。

 

ファージセラピー2

新しい感染症治療法(ファージセラピー)と欠点

 

そんななかで、抗生物質に代わる新しい感染症治療法として、ファージセラピーという治療法が注目を浴びています。

ファージセラピーとは、バクテリオファージという細菌にのみ感染する生物を用いて、感染症を引き起こしている細菌を死滅させて、感染症を治癒する治療法です。

ファージセラピー3

実は、1920年代に実際に使用されてましたが、抗生物質の隆盛により、追いやられました。

昨今の薬剤耐性菌の増加に伴い見直され、海外では既に応用されていたりします。しかし、ファージセラピーには、実際に使用するにあたり、大きな欠点があり、海外で使用されている製剤も、欠点を克服できておらず効果十分とは言えません。

その欠点とは、ファージが有効な細菌の範囲が狭いということです。同じ細菌ですら効かないないことが多く、一般的に、ファージの有効な範囲は株レベル(ある細菌種の一部にしか効果がない)とされています。抗生物質の有効な範囲が一般的には複数の細菌であることを鑑みると、ファージは実臨床において使いにくいです。

ファージセラピー4

 

予防会の研究について

 

予防会は、新宿サテライトクリニック院長の北岡を中心に、早稲田大学と協同してファージセラピーの研究を進めています。今まで、ファージセラピーの研究は、理工学的な研究を中心として行われてきており、臨床現場と乖離していることが多く、そのため、上記の欠点も、解決に工夫がされないまま研究が進行していました。

そこで、予防会は、臨床の視点を重視して、上記の欠点を解決し、なんとかファージを実際に臨床現場で使用できるようにすることに重きを置いて、ファージセラピーの研究に取り組んでいます。

その欠点の解決法の1つとして、「流行株に有効なファージを用意する」ことを考え、研究を進め、結果をまとめた論文がJJIDという雑誌にアクセプトされ、公開されました(https://doi.org/10.7883/yoken.JJID.2022.206)。

ファージの有効な範囲が狭いことを変えることは難しいです。一方、細菌には感染症を引き起こす流行株というものが存在します。

そこで、流行株に有効なファージを準備すれば、ファージの有効な範囲が株レベルであったとしても、結果的には、その細菌であればほとんど使用できるようになり、使える場面が多くなります。そこで、ある流行株に感染するファージを準備し、実際に、他の流行株にも効果があるかどうかを調べました。

ESBL E. coliという薬剤耐性菌があり、ST131と呼ばれる流行株があります。

ST131のある株に対して効果のあるファージを下水濃縮液から複数採取し、他の複数のST131株に対して効果があるかどうか確認すると、用意した全てのST131株に効果のあるファージを観察することができました。これらの研究結果を論文にまとめています。

ファージセラピー5

 

現在、この知見を基に、「流行株に有効→その細菌全体の多くに有効」ということでファージの欠点を克服し、実臨床応用へ持っていくという考えのもとで、実用化を目指してさらに研究を進めています。

クラウドファンディングを行い成功を収めた犬猫感染症へのファージセラピー応用や、細菌性膣症、淋菌感染症、薬剤耐性(ESBL)菌感染症などに対するファージセラピー応用の研究を行っています。

予防会としては、性感染症の検査・治療が中心ですが、「薬剤耐性菌による感染症が世界最大の不治の病となる」将来を見据えた研究も重要だと思っています。皆様になんとか還元できるように頑張りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

1) Tackling Drug-Resistant Infections Globally:Final Report, WHO, 2016

2) . Workowski KA, Bachmann LH, Chan PA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep 2021; 70:1.

 

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記事の執筆


著者情報 新宿サテライトクリニック 院長 北岡 一樹(きたおか かずき)

予防会 新宿サテライトクリニック 院長
早稲田大学招聘研究員

北岡 一樹(きたおか かずき)

三重大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院で研修を行った後、内科勤務しながら、名古屋大学大学院細菌学博士課程へ入学。薬剤耐性菌研究に携わり、博士(医学)取得。
その後、早稲田大学で招聘研究員として研究を開始。同時に、医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで性感染症診療も開始し、現在、院長を務めている。
性感染症について診療だけでなく研究も行っており、ファージを用いた性感染症予防の実現(性感染症予防のゲームチェンジャー)に取り組んでいる。

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