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2022.11.15

特集

最適な性感染症検査方法と予防会の新システムについて

感染症の判定方法は日進月歩であり、以前は培養による判定が中心でしたが、性感染症として陽性件数の多いクラミジアや淋菌、トリコモナスの検査では、遺伝子による判定が導入されるようになってきました。

それにより性感染症の検査において、どのような変化が起こったのか、遺伝子検査の中でどの方法が優れているのか解説します。併せて、10月から始まった予防会の新システムについても説明します。

*この記事は、世界で最も信頼性のあるメタアナリシス(様々な研究・文献を統合して判断すること)エビデンスの1つであるUpToDate(https://www.uptodate.com)をエビデンスとして記載しております。

 

 

 

 

性感染症の検査について

 

かつては病原体に感染しているか調べる方法は、培養という手法が中心でした。ただし、数日かかること、病原体が沢山いないと陽性とならない(感度が低い)、医師による採取検体でないといけないということが問題点でした。

遺伝子解析技術が発展するにつれ、病原体の遺伝子を直接増幅して検出することで(核酸増幅検査、NAATと呼びます)、感染の有無を判定できるようになりました。これは素晴らしい技術革新でした。

まず、数時間で特定の病原体に感染しているかわかるようになりました。さらに病原体が少なくても陽性と判定できるようになりました(高感度)。培養など他の方法では約1000菌採取できないと陽性と判定できなかったことに比べ、理論上、わずか1菌でも採取できれば検出が可能です。

加えて、この高感度により、医師採取検体でなく、患者が採取した検体でも精度が保つことが出来、自己採取検体による検査が可能となりました(1)。また、膿みがあったり、血液があっても影響を受けないので、生理中でも検査が可能です(2)。

以上の特徴から、特に性感染症では、NAATによる検査が進んでおり、最適な診断方法(ゴールドスタンダード)に認定されています(3, 4)。

従いまして、性感染症の検査には、NAATを使用している病院での検査をお勧めします。また、自己採取でも精度は変わらないので、郵送キットも安心してお使いいただけます。

 

NAATには主に3つのやり方があり、PCR法を用いるもの、TMA法を用いるもの、SDA法を用いるものがあります。

それぞれのメカニズムの違いにより様々な違いがありますが、予防会のクラミジア、淋菌、トリコモナスの検査ではTMA法を使用しております。

TMA法は、病原体の遺伝子のうちRNAを採取し、RNAをDNAに変えたのち、そのDNAからRNAを一気に合成(転写といいます)することで、感染の有無を判定する方法です。

TMA法の利点としては、TMA法のみがDNAより存在量の多いRNAを対象としており、感度(感染している場合に陽性としっかり判定すること)が高いということです。

実際に、これらの感度についてまとめた報告があります(5)。クラミジアの検出を対象として、PCR法においては尿検体で83%、子宮頸部検体では86%、TMA法においては尿検体で93%、子宮頸部検体で97%、SDA法においては尿検体で80%、子宮頸部検体で94%であり、いずれにおいてもTMA法が感度で最も優れていました。

これらのことより、欧米で最も一般的に使用されているNAAT検査キットもTMA法を用いたホロジック社のAptimaというシリーズとなっています。従いまして、性感染症のNAAT検査を実施している病院の中でも、TMA法を使用している病院での検査をお勧めします。

 

 

遺伝子検査

By Casey Utzinger

 

予防会の新システムについて

 

上記で述べたように、NAAT検査は、数時間で判定でき、感度が高く、自己採取可能な検査であり、中でもTMA法はさらに高感度となっています。

予防会はこの検査機器を自社で持っているため、正確な検査を短時間で提供できます。この強みを生かし、10月から午前中に検査を受けていただければ、このNAAT(TMA法)による高感度の検査の結果を当日中にお知らせ出来るようなシステムを稼働しております。

業界随一となっており、是非、ご利用いただければと思います。

新サービス開始のお知らせ

 

まとめ

性感染症の検査は早さ、高感度からNAAT検査がゴールドスタンダード、さらにTMA法だとより高感度→NAAT(TMA法)検査を行っている病院での検査をオススメ

予防会は自社でNAAT(TMA法)検査が可能であり、今まで翌日に結果をお知らせしていたシステムを、午前中に受診いただくと当日中に結果をお知らせできるシステムに変更→正確に早く結果を知りたい方は、予防会午前中の受診をオススメ

 

 

1) Knox J, Tabrizi SN, Miller P, et al. Evaluation of self-collected samples in contrast to practitioner-collected samples for detection of Chlamydia trachomatis, Neisseria gonorrhoeae, and Trichomonas vaginalis by polymerase chain reaction among women living in remote areas. Sex Transm Dis 2002; 29:647.

2) Marrazzo JM, Johnson RE, Green TA, et al. Impact of patient characteristics on performance of nucleic acid amplification tests and DNA probe for detection of Chlamydia trachomatis in women with genital infections. J Clin Microbiol 2005; 43:577.

3) Workowski KA, Bachmann LH, Chan PA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep 2021; 70:1.

4) Centers for Disease Control and Prevention. Recommendations for the laboratory-based detection of Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae–2014. MMWR Recomm Rep 2014; 63:1.

5) Cook RL, Hutchison SL, Østergaard L, et al. Systematic review: noninvasive testing for Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae. Ann Intern Med 2005; 142:914.

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記事の執筆


著者情報 新宿サテライトクリニック 院長 北岡 一樹(きたおか かずき)

予防会 新宿サテライトクリニック 院長
早稲田大学招聘研究員

北岡 一樹(きたおか かずき)

三重大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院で研修を行った後、内科勤務しながら、名古屋大学大学院細菌学博士課程へ入学。薬剤耐性菌研究に携わり、博士(医学)取得。
その後、早稲田大学で招聘研究員として研究を開始。同時に、医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで性感染症診療も開始し、現在、院長を務めている。
性感染症について診療だけでなく研究も行っており、ファージを用いた性感染症予防の実現(性感染症予防のゲームチェンジャー)に取り組んでいる。

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