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2020.05.15

特集

メンズヘルスについて

LOH症候群をご存知ですか?
「メンズヘルス」=「エッチなお店のこと?」・・・ではないです。

「メンズヘルス(Men’s Health)」=「男性の健康」についてです。

今回は、このMen’s Healthについてのお話です。

 

 

元々産婦人科医の私は、いままでは男性の健康よりも女性の健康の方に興味が傾いていました。しかし、性感染症のクリニックに勤めていると、当然のことながら男性も診察対象です。私自身も男性ですので、この期に及んでMen’s Healthについて勉強をし始めているところです。

 

 

男性の生きがいを追求する男性医学は、女性医学に比べて注目度は低く、いままで「加齢による現象」として片付けられていた男性の諸症状のうち、勃起機能不全(ED)くらいしか診療の対象になっていませんでした。しかし、近年の日本は、少子高齢化社会で男女の平均寿命が延長し、いわゆる更年期以降の2030年を、高齢者となっても社会的に自立していくことが求められ、また貴重な労働力としても期待されるようになりました。そして、男性の平均寿命と女性の平均寿命の差が大きく開いたことから、中高年の男性の健康に対する危機感と男性特有の医学的諸問題に対する予防対策などを真剣に取り組む必要性が生じ、Men’s Healthの重要性が認識され始めています。

 

 

ところで、「男性的な人」とはどんな人?と聞かれたらどのように答えますか?

体毛の濃い人、骨や筋肉が隆々としてゴツゴツしてガッチリしている人、闘争心のある人、性欲の強い人、髪の毛が禿げ散らかっている人などと答えるでしょうか?

 

 

全部正解です。

 

 

このような「男性らしさ」は、テストステロンという男性ホルモンによってもたらされています。

テストステロンは、別名、男性ホルモンと呼ばれ、主に精巣から分泌されています。実は、女性の卵巣と副腎からも少量のテストステロンが分泌されています。ニキビができるのは、テストステロンの影響が考えられます。 

 

 【コラム】メンズヘルス①

図1.男性ホルモンの標的臓器での作用
(加齢男性性腺機能低下症候群診療の手引きより引用)

 

 

さて、「更年期障害」という言葉を聞いたことがありますか?

 

女性では、45歳ごろから月経周期が不整になったり、ほてりや動悸、不安や不眠などの症状が出ることがあります。

 

 

一方、男性はどうでしょう?

 

男性も初老期に、不安、抑うつ、全身の疲労感、気力の衰え、性欲低下、EDなどの症状がみられることがあり、女性の更年期障害と似たような症状が現れる方もいます。

 

しかし、この男性更年期障害の正体は、うつ病などのストレス性心身症が原因であったり、テストステロンの分泌低下が原因であったりと複雑であり、今のところ男性更年期障害の明確な定義はありません。

 

不安、イライラ、全身倦怠感、うつ傾向、不眠、頭重感、肩こり、動悸などの不調が、日替わりで出てくるような場合は、男性更年期障害を疑い、男性更年期外来やMen’s Health外来などの専門外来で、質問票の記入や問診、テストステロンの測定などを行ったうえで、適切な治療法を選択していくことになります。

 

 

表1.男性更年期障害の症状

【コラム】メンズヘルス②

テストステロンの分泌低下に起因する症状としては、全身の疲労感、性欲低下、ED、不眠、肩こり、精神的な気力の衰え、集中力の低下、イライラ、抑うつなどです。

このように精巣から分泌される男性ホルモン(テストステロン)の低下によって起こる病態をLOH(Late-onset hypogonadism)症候群といい、ストレス性心身症が原因のものと区別されます。

 

 

図2.LOH症候群と男性更年期障害の位置づけ
(加齢男性性腺機能低下症候群診療の手引きより引用)

【コラム】メンズヘルス③

男性も女性と同様に、加齢とともに性腺(卵巣や精巣)の機能低下を生じます。しかしながら、その低下の仕方には男女で違いがあり、女性は50歳前後で急激に卵巣機能が低下するのに対し、男性ではテストステロンの分泌は20歳代をピークにその後徐々に低下していきます。

 

 

図3. 男性ホルモンと女性ホルモンの年齢推移

【コラム】メンズヘルス④

図3のように、女性の場合は、閉経時期に性腺機能が急激に低下します。その急激な低下に身体が適応できないために症状が現れやすいのですが、男性の場合は、徐々に性腺機能が低下するため、ある程度まで身体が適応するので自覚症状を伴わないことが多いのですが、テストステロン分泌が低下しすぎると様々な不調が出現します。

 

 

表2. LOH症候群の症状および徴候

【コラム】メンズヘルス⑤
(Lunenfeld, et al: Aging Male 8 : 56-58, 2005)

 

 

生命の伝承と男性の活動維持に欠かせない男性ホルモンの分泌は、かつてヒトの寿命が40歳~50歳までであったときのままプログラムされており、近代医療の進歩によって平均寿命が急速に伸びていることは良いことですが、その反面、人体がかつてない試練を与えられている結果が不調として現れているのかもしれません。

歳を重ねても生活の質を保ちつつ、社会で活躍できる男性の健康維持のための医療がいま期待されています。

 

 

★予防会で扱っているED薬を紹介します。

 

 

・バイアグラ®(50㎎)<ファイザー株式会社>
性行為の約1時間前に服用。血中濃度半減期3.3時間。
服用後30分で効き始め、1時間後に血中濃度がmaxとなり、4~5時間後まで効果がある。服用間隔は24時間以上あける。食事の影響を受けるので、食前の服用がおススメ。
(後発品:シルデナフィル® 50㎎<武田薬品工業株式会社>)

 

 

・バイアグラODフィルム®(50㎎)<ファイザー株式会社>
水無しでも服用が可能。携帯性に優れている。
作用時間はバイアグラの錠剤とほぼ変わらない。

 

 

・レビトラ®(10㎎、20㎎)<バイエル薬品株式会社>
水に溶けやすいため、最も速効性がある。硬度が出やすい。性行為の1時間前、空腹時では20分程度で作用。血中濃度半減期3.2時間。作用時間は、10㎎は6時間、20㎎は9時間程度。脂っこい食事後は効果が弱まるため、食前の服用がおススメ。服用間隔は24時間以上あける。HIV治療中の方、血液透析中の方は処方不可。

 

 

・シアリス®(10㎎、20㎎)<日本新薬株式会社>
長時間作用型(10㎎は20~24時間、20㎎は30~36時間)、性行為直前の服用が不要、食事の影響を受けにくい。血中濃度半減期14~15時間。服用間隔は24時間以上あける。副作用が出にくい。

 

●共通する副作用:顔のほてり、頭痛、動悸など
●禁忌:心血管系障害を有し性行為不適当、不安定狭心症、重度肝障害、低血圧(血圧<90/50)、治療を受けていない高血圧(血圧>170/100)、心筋梗塞歴、脳梗塞・脳出血歴、網膜色素変性症の方。

 

予防会ドクター監修コラム

 

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