カンジダ
細菌性膣症
2020.09.14
HPV
ハイリスクHPVは子宮頸がんの発生と関係があり、ローリスクHPVは尖圭コンジローマの発生と関係があります。
「AYA世代」という言葉を聞いたことがありますか?
AYA(アヤ)とは、「Adolescent & Young Adult」の頭文字を取って、「思春期&若年成人」という意味になります(図1)。
年齢で言うと、15歳~39歳で、学業、仕事、育児などに忙しい世代です。この世代をAYA世代と呼び、AYA世代のがんは、25歳を過ぎると著しく増加していることが、国立がん研究センターの報告で明らかになりました。
これによると、30~39歳で発症しているものが、40歳未満のがん全体の約70%、AYA世代のがんに限ると75%を占めています(図2)。また、男女別に見てみると20歳以降のがんの症例は女性に多く、20歳から39歳までのがんでは、実に約80%を女性が占めるという驚くべき結果でした(図3)。
(図1)AYA世代とは・・・15歳~39歳で、学業、仕事、育児などに忙しい世代
(図2)2016年-2017年 がんの発症年齢を年齢別で見た割合
<https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2019/1018/index.htmlの図3>
(図3)男女別の年齢階級別罹患数
<https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2019/1018/index.htmlの図4>
※国立がん研究センターホームページ「院内がん登録小児・AYA世代がん集計について(2019年10月18日)」より引用
一般的に、がんは高齢者に多い病気ですが、AYA世代の女性においては、20~40歳までは、乳がんや子宮頸がんの割合が多く(表1)、特に気を付ける必要があります(図4)。
(表1)年代別の罹患率が高いがん腫順位(全がんに占める割合)
※国立がん研究センター・がん情報サービスホームページ「小児・AYA世代のがん罹患」より引用
(図4)女性の小児・AYAがんのがん腫の内訳・年齢推移
<https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/child_aya_p04.html>
※国立がん研究センター・がん情報サービスホームページ「小児・AYA世代のがん罹患」より引用
乳がんの発生には、女性ホルモンであるエストロゲンが深くかかわっていることが知られていますので、エストロゲンが活発に分泌されている若い女性に多くみられます。
一方、子宮頸がんは、乳がんよりも若い年代で発生しているがんです。発症の原因には、ヒトパピローマウィルス(HPV)の持続的な感染が関係していることがわかっています。
HPVについては、昨年12月のコラム「ありふれたウイルス:ヒトパピローマウイルス(HPV)について知っておこう」で触れていますが、ほとんどの女性が一生に一度は感染するという非常にありふれたウィルスです。
HPVは100種類以上のタイプがあり、このうちの子宮頸がんの原因となるハイリスクHPVと言われるタイプは15種類ほどあります。ハイリスクHPVに感染しても、ほとんどの方は自己の免疫力で自然に消失します。子宮頸がんを発症するのは、HPV長期感染者の約0.15%と言われており、非常に少ない確率です。
また、HPV感染が長期化しても、すぐにはがんになりません。HPV感染から子宮頸がんになるまでには、数年から十数年という長い時間がかかり、その間、細胞の形態が変化を起こす「前がん病変(異形成)」が長期間にわたってみられます。しかし、この「前がん病変」では自覚症状が現れないため、子宮頸がん検診によって見つけることができます。
定期的に子宮頸がん検診を受けていれば、がんになる以前の「前がん病変」で発見して治療することができます。
子宮頸がんになるかどうかは、HPVが陰性化するかどうかによって決まります。したがってHPVに感染するリスクよりも、個人の免疫力や環境因子の方が重要であり、妊娠・出産経験が多いこと、長期間のピルの服用、喫煙などが発がんの危険因子としてあげられます。
子宮頸がんは、乳がんと違って自己検診ができないので、その予防には、子宮頸がん検診が有効です。
しかし、日本の子宮頸がん検診の受診率は、諸外国と比べて非常に低いです。アメリカは90%、イギリスは80%の受診率ですが、日本の受診率は20%台にとどまっています。これは、妊娠の初期で必ず行う子宮頸がん検診を含んだ受診率ですので、妊娠していない女性の子宮頸がん検診受診率はもっと低いと言われています。
子宮頸がん検診が開始されてから40年近くなりますが、検診の普及によって子宮頸がんの死亡率は著しく減少しました。しかし、近年、検診受診率の伸び悩みや、性交年齢の若年化、性行動の活発化、性行為感染症としてのHPV感染が原因で、再び増加しています(図5)。
現在、日本の子宮頸がん検診は、細胞診(子宮頸部の細胞を採取して顕微鏡で異常な細胞の有無を確認する検査)が主流です。
異常な細胞は子宮頸部の移行帯と呼ばれる部分に出現しやすいため、その部分を中心に医療用のブラシで細胞を採取し、顕微鏡で確認します。結果の報告までに通常2週間くらいかかります。
最近は、子宮頸がん検査の自己採取キットがネット通販やドラッグストアで購入できるようになりました。医療機関を受診しなくても検査ができるメリットがありますが、医師が目視で子宮頸部の移行帯の細胞をしっかり採取するのとは違い、精度は低くなります。
(図5)子宮頸がん検診(細胞診)の検体採取について
厚生労働省は、20歳以上の女性は2年に1回の頻度で子宮頸がん検診を受診するように勧めています。お住いの自治体から子宮頸がん検診の受診券が送られてきますので、症状が無くても是非受診しましょう。
ところが、この子宮頸がん検診のあり方が今後変わる可能性があります。
子宮頸がんの発生にはHPVの感染が関わっていることが明らかになっているので、HPVに感染していなければ、子宮頸がんになる可能性は非常に低いと言えます。
ということは、ハイリスクHPV検査を受けて「陰性」の結果であれば、少なくとも数年先に子宮頸がんになる可能性は低いということが言えるかもしれません。
では、HPVの検査を受けておけば、従来の細胞診の検査を受けなくても良い、ということになるのでしょうか?
その答えは、このほど国立がん研究センターが公表した「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン」によって示されました。
このガイドラインでは、2009年度版の子宮頸がん検診ガイドラインから、新たな研究の科学的根拠を検証し、日本で推奨する子宮頸がんガイドラインとして10年ぶりに更新したものです。
ポイントは、検診対象年齢と検診間隔、検体採取法を明示し、従来推奨している細胞診検診に加え、HPV検査単独法検診も推奨になったことです(表2)。
しかし、HPV単独検診は、細胞診による検診に比べて、偽陽性率が1000人あたり42人増加することから、陽性の結果が出た場合のフォローの指針が必要になります。
(表2)子宮頸がん検診の推奨グレード
<http://canscreen.ncc.go.jp/shikyukeiguide2019.pdf:P7の表>
※有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン更新版 2020年3月31日 国立がん研究センター 社会と健康研究センターより引用。
HPV検査単独検診は、すでにオーストラリア、オランダ、イギリスなどで採用されていますが、HPV陽性者のフォローアップについては、どの国も苦慮している状況です。HPV陰性の場合は、近い将来子宮頸がんに進展する可能性は低いですが、問題なのはHPV陽性の場合です。今後、経過観察を含めたフォローアップのアルゴリズムがしっかりと構築され、適切に運用されるようになれば、HPV検査単独検診は検診間隔を伸ばすことができるメリットがあります。
しかし、わが国での子宮頸がん検診で異常の結果が出た場合の精密検査受診率は、74.3%であり、必ずしも高いものではありません。がん検診の結果に異常がみられた場合には、放置せずに医療機関で精密検査を受診しましょう。
また、子宮頸がんは、原因やがんになる過程がほぼ解明されているため、他のがんとは違って予防が可能です。子宮頸がんワクチンを性交渉経験前の10代前半に接種すると、HPVの感染を予防することができますが、副作用とみられる症状がおおげさに取り上げられて以来、接種の積極的推奨が中止されたままであり、平成14年度以降生まれの女性では1%未満の接種率となっています。このことから、今年20歳になる女性より若い世代では、子宮頸がんの発症リスクは、ワクチン導入以前と同程度に戻ってしまうことが推計されています。
子宮頸がんワクチンの積極的推奨の再開と、接種を見送って対象年齢を超えてしまった世代にも接種機会が与えられることが求められていますが、HPV検査の結果が陰性であれば、ワクチンを接種することで、将来HPVに感染することを予防できます。もし、HPVに感染していたとしても、子宮頸がんになる前段階で発見できるように、定期的に子宮頸がん検診を受診することがとても重要です。
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