ページの先頭です

ここからヘッダーです

ここからメニューです

予防会からのお知らせや、性感染症(STD)に関するコラムをお届けします。


ここから本文です

2022.05.17

STDを防ぐ

世間的認知は低いが、淋菌と同等の有病率で不妊・がん・早産の原因となる、危険なトリコモナス性感染症

一般的に、性感染症と言えば、クラミジア・淋菌が想起されるように思います。
従来の検査では精度が低かったので過小評価されていましたが、高い精度を持つ検査法の普及により、それらと同等の有病率を誇ることが分かってきたのがトリコモナスによる性感染症です。
さらに、不妊・がん・有害な産科的機転に関与していることも証明されており、定期的な検査が必須な疾患です。
これらを中心に述べていきます。

 

トリコモナス性感染症について

 

トリコモナス性感染症はトリコモナス・バギナリスという原虫によって引き起こされます。

原虫とは、生物で皆さんが習ったアメーバのようなものを想像していただければと思います。
この生物は泌尿器系の扁平上皮細胞(尿道、膣)に感染します(1)。したがって、性行為によって感染する性感染症となります(2)。

潜伏期間は4-28日と報告されており(3)、症状としては、女性の場合、膣のそう痒感、排尿困難、頻尿、下腹部痛、性交疼痛を伴う悪臭のあるおりものを来します。
悪臭のあるおりものが特徴的な症状と言われてはいますが、実は、この典型的な症状を呈するのは11~17%のみと報告されており(4)、感染者の70〜85%が 無症状とです (5)。
また、トリコモナスに感染していることは、子宮頚部がん(6)、不妊(7)や早産、低出生体重児の出産などと関連しています(8)。

男性では、4分の3以上の症例で無症状です (9)。症状がある場合は、一般的な尿道炎となり、透明または粘液性の尿道分泌物、排尿困難を来します。
また、男性においても、トリコモナスに感染していることは、前立腺がん、不妊と関連します。

有病率としては様々な報告がありますが、大規模なものとしては、全米健康・栄養調査(NHANES)による報告で、3.1%とされています(10)。
しかし、NHANESの調査(顕微鏡観察による判定)より精度の高い検査方法(核酸増幅検査)を使用した調査では、5-16%という報告があります(11)。
検査精度により、今まで正しく有病率が判定されていなかったと考えられており、クラミジアや淋病と同等かそれ以上の有病率であると推測されています(5)。

トリコモナス性感染症は、まだまだ世間的には淋菌やクラミジアほど性感染症として認知を得ている疾患ではないですが、実は、非常に多く、症状も分かりやすいわけではありません。
さらには無症状もあり、不妊、がん、有害な産科的転帰と関連していて、定期的に検査する必要がある性感染症です。

 

トリコモナス性感染症の検査

 

トリコモナス性感染症の検査方法としては、顕微鏡検査、培養検査、核酸増幅検査、プローブ検査があります。
従来は顕微鏡検査が基本でした。顕微鏡検査は低コストであり、すぐ判明するという利点はありますが、上述したように、精度が劣っていることが示されてきており、精度を求めるならば核酸増幅検査が推奨されます。
核酸増幅検査としては、DNAポリメラーゼを使用するPCR法、逆転写酵素とRNAポリメラーゼを使用するTMA法などがありますが、トリコモナスの検出で一般的に使用されているのはTMA法となります。

思春期の女性330人に対して、トリコモナスの検出の精度を比較し、顕微鏡検査、培養検査、プローブ検査(抗原検査)、核酸増幅検査(TMA法)それぞれにおいて、感度(存在する場合に、陽性と判定する確率)が65、96、90、98%で、核酸増幅検査が最も精度が高かったという報告があります(12)。
また、上述したように、クラミジア、淋菌、トリコモナスの有病率が同等であり、混合感染も多いことから、3者を同時に核酸増幅(TMA法)により検出するキットもあり、それらによる定期検査が勧められる状況になってきています。

これらに関する定量的評価は特に日本では数少なく、予防会として、核酸増幅検査の感度、3者同時スクリーニングの有用性の評価を進めており、論文報告を予定しています。
また、実臨床においては、迅速性においては顕微鏡検査に勝るものはなく、症状がある場合は顕微鏡検査により迅速に評価、陰性であったり定期的な検査では核酸増幅検査といった使い分けが必要であり、予防会では両者の検査法を提供しています。

 

トリコモナス性感染症の治療

 

トリコモナス性感染症の治療は日本と世界標準で異なっています。
日本ではメトロニダゾール500mg*10日間内服が推奨されていますが、世界的には1g*7日間もしくは2g単回内服(ただし治療効率は1g*7日間が89% vs 2g単回投与が81%と報告されています(13))が推奨されており、エビデンスも充実しています。
また、メトロニダゾールを内服する際は、長らく禁酒とされていましたが、エビデンスの見直しがあり、強い因果関係が確認されず(14)、禁酒は必要ないというように変わっています。
加えて、アメリカではメトロニダゾールが効きにくいトリコモナスが4%程度存在している(15)と報告されており、その場合は2g*7日間の投与が必要となり、日本でも同様の状況となっている可能性が懸念されます。
以上、治療に関しても、一筋縄ではなく、性感染症専門の病院で行う必要があります。

 

まとめ

 

トリコモナス性感染症の有病率は淋菌、クラミジアと同等で、無症状のこともあり、不妊、がん、有害な産科的転帰と関連→定期的な検査が必要
コスト、精度を意識した検査方法の使い分けが必要→性感染症専門の病院での検査をオススメ
刻々と変化する世界的なエビデンスも参照した治療が必要→性感染症専門の病院での治療をオススメ

 

 

1) Kissinger P. Epidemiology and treatment of trichomoniasis. Curr Infect Dis Rep. 2015 Jun;17(6):484.
2) Trichomoniasis- CDC Fact Sheet. Centers for Disease Control and Prevention. January 31, 2017. www.cdc.gov/st d/trichomonas/stdfact-trichomoniasis.htm (Accessed on April 21, 2022).
3) Hesseltine H. Experimental human vaginal trichomoniasis. J Infect Dis 1942; 71:127.
4) Landers DV, Wiesenfeld HC, Heine RP, Krohn MA, Hillier SL. Predictive value of the clinical diagnosis of lower genital tract infection in women. Am J Obstet Gynecol. 2004 Apr;190(4):1004-10.
5) Workowski KA, Bachmann LH, Chan PA, Johnston CM, Muzny CA, Park I, Reno H, Zenilman JM, Bolan GA. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep. 2021 Jul 23;70(4):1-187.
6) Yap EH, Ho TH, Chan YC, Thong TW, Ng GC, Ho LC, Singh M. Serum antibodies to Trichomonas vaginalis in invasive cervical cancer patients. Genitourin Med. 1995 Dec;71(6):402-4.
7) Grodstein F, Goldman MB, Cramer DW. Relation of tubal infertility to history of sexually transmitted diseases. Am J Epidemiol. 1993 Mar 1;137(5):577-84.
8) Cotch MF, Pastorek JG 2nd, Nugent RP, Hillier SL, Gibbs RS, Martin DH, Eschenbach DA, Edelman R, Carey JC, Regan JA, Krohn MA, Klebanoff MA, Rao AV, Rhoads GG. Trichomonas vaginalis associated with low birth weight and preterm delivery. The Vaginal Infections and Prematurity Study Group. Sex Transm Dis. 1997 Jul;24(6):353-60.
9) Seña AC, Miller WC, Hobbs MM, Schwebke JR, Leone PA, Swygard H, Atashili J, Cohen MS. Trichomonas vaginalis infection in male sexual partners: implications for diagnosis, treatment, and prevention. Clin Infect Dis. 2007 Jan 1;44(1):13-22.
10) Sutton M, Sternberg M, Koumans EH, McQuillan G, Berman S, Markowitz L. The prevalence of Trichomonas vaginalis infection among reproductive-age women in the United States, 2001-2004. Clin Infect Dis. 2007 Nov 15;45(10):1319-26.
11) Ginocchio CC, Chapin K, Smith JS, Aslanzadeh J, Snook J, Hill CS, Gaydos CA. Prevalence of Trichomonas vaginalis and coinfection with Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae in the United States as determined by the Aptima Trichomonas vaginalis nucleic acid amplification assay. J Clin Microbiol. 2012 Aug;50(8):2601-8.
12) Huppert JS, Mortensen JE, Reed JL, Kahn JA, Rich KD, Miller WC, Hobbs MM. Rapid antigen testing compares favorably with transcription-mediated amplification assay for the detection of Trichomonas vaginalis in young women. Clin Infect Dis. 2007 Jul 15;45(2):194-8.
13) Kissinger P, Muzny CA, Mena LA, Lillis RA, Schwebke JR, Beauchamps L, Taylor SN, Schmidt N, Myers L, Augostini P, Secor WE, Bradic M, Carlton JM, Martin DH. Single-dose versus 7-day-dose metronidazole for the treatment of trichomoniasis in women: an open-label, randomised controlled trial. Lancet Infect Dis. 2018 Nov;18(11):1251-1259.
14) Williams CS, Woodcock KR. Do ethanol and metronidazole interact to produce a disulfiram-like reaction? Ann Pharmacother. 2000 Feb;34(2):255-7.
15) Kirkcaldy RD, Augostini P, Asbel LE, Bernstein KT, Kerani RP, Mettenbrink CJ, Pathela P, Schwebke JR, Secor WE, Workowski KA, Davis D, Braxton J, Weinstock HS. Trichomonas vaginalis antimicrobial drug resistance in 6 US cities, STD Surveillance Network, 2009-2010. Emerg Infect Dis. 2012 Jun;18(6):939-43.

 

【関連病気】

膣トリコモナス症 詳細を確認する

【関連コラム】

実は多い!トリコモナス感染症!

 

【関連検査キット】

最新のトリコモナス遺伝子検査ができるお得なセットです!

はじめての検査セット(女性用)

はじめての検査セット(男性用)
予防会コラム:監修医師紹介 医療法人社団予防会 新宿サテライトクリニック 院長 北岡一樹 「予防会新宿サテライトクリニックで性感染症の診療に取り組みつつ、早稲田大学で性感染症中心に新たな治療法の研究も行っています。 診療、研究両面から、性感染症でお困りの皆様のお役に立てるよう 精進しています。お気軽にご来院ください。」

性感染症が不安な方へ

性感染症は、早期発見と正しい治療が大切です。
予防会なら、保険証不要・匿名で誰にも知られずに性感染症の検査を受けることができます。全国のクリニックでも検査が可能ですし、お時間がない方や病院に行くのは抵抗があるという方は、郵送検査キットをご活用いただくのもオススメです。

予防会では、はじめて検査を受ける方に向けて、わかりやすくマンガで解説しています。是非ご覧ください。

マンガでわかるはじめての性病検査

 

コラム用

人気のコラム 人気のコラム

COLUMNS

新着情報 新着情報

NEWS

2022.05.17
コラム 世間的認知は低いが、淋菌と同等の有病率で不妊・がん・早産の原因となる、危険なトリコモナス性感染症
2022.02.15
コラム 日本でも世界的コンセンサスに準じることとなったHPVワクチンについて
2022.01.31
新機能リリースのお知らせ
2021.07.20
「東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会」の開催に伴う、商品お届けの影響について
2021.07.15
コラム 治療薬が効きにくくなり、将来治癒不可能になるかもしれない淋菌感染症
2021.03.18
HIV検査数が半減、コロナ拡大でためらいも「感染者を把握できていない可能性」
2021.02.18
コラム ある美容施術のお陰で減っている?性感染症:ケジラミ症
2021.02.01
【新型コロナウイルス検査物搬送のための3重包装】
2021.01.15
コラム くり返す外陰腟カンジダ症の原因は、ある習慣が関係しているかもしれません
2021.01.04
年始のご挨拶
2020.12.15
コラム 性器と咽頭のマイコプラズマ・ウレアプラズマ保菌率調査結果について
2020.11.16
コラム HIV感染症とAIDSについて
2020.10.15
コラム 淋しい病気と書く淋病(淋菌感染症)について
2020.09.14
コラム AYA世代に多いがん:子宮頸がんとHPV検査
2020.09.11
新型コロナウイルスの影響による、郵送物などの遅延の可能性について
2020.06.15
コラム 低用量ピルの効能と副作用について知っておこう。
2020.05.16
新型コロナウイルス抗体検査開始のご案内
2020.05.15
コラム メンズヘルスについて (LOH症候群をご存知ですか?)
2020.05.01
オンライン診療開始のお知らせ
2020.04.06
春は健康診断の季節!
2020.03.15
コラム「性器ヘルペスについて~性器ヘルペスの治療は、最初が肝心・再発はコントロールできる~」
2020.01.15
コラム「近年治療が進歩した尖圭コンジローマ」
2020.01.06
年始のご挨拶
2019.12.23
年末年始休業のお知らせ
2019.12.16
コラム「ありふれたウィルス:ヒトパピローマウィルス(HPV)について知っておこう」
2019.12.02
血液の検査セットが新しくなりました
2019.11.15
コラム クラミジアってなんだ?? ~ウィルスのような細菌・クラミジアのワクチン開発~
2019.10.15
自分の健康は自分で管理する!自分の身体のことを良く知っておこう!
2019.09.27
消費税引き上げに伴う、サイト内の検査料金の改定ついて
2019.09.13
消費税率引き上げに伴う価格改定のお知らせ
2019.08.13
コラム 梅雨~夏にかけて、あそこがかゆい!!
2019.07.23
2020東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた交通対策実験によるお届けの影響について
2019.07.09
5年で急増、日本人を襲う「梅毒」の意外な実態
2019.06.16
コラム 梅毒は治る病気!そのためには早期診断・早期治療がポイント!
2019.06.14
2019,6,27(木) ~ 2019,7,2(火) の 大阪府、兵庫県 へのお届けについて
2019.06.07
性病に毎日100万人が感染 「感染率下がっていない」 WHO
2019.05.24
コラム掲載
2019.04.01
渋谷クリニック開院のお知らせ
2019.03.04
池袋サテライトクリニック開院のお知らせ
2019.02.20
池袋サテライトクリニックOPENのお知らせ
2018.12.27
年末年始のお知らせ
2018.11.14
18年の梅毒患者が5811人に この20年で最多
2018.10.11
梅毒2年連続5千人台…感染3週間で「しこり」
2018.07.30
若者の新規HIV感染者年間25万人、3分の2は女子:ユニセフが「HIV/エイズ報告書」
2018.06.29
梅毒感染、知らぬ間に 地方都市や若い女子にも広がる
2018.06.15
Web版 定期検査実施証明書デザイン変更のお知らせ
2018.05.31
沖縄の梅毒患者が過去最多 HIV感染者・エイズ患者数は過去3番目の多さ
2018.05.21
エイズ かつて死の病、今は早期発見で治療可能に
2018.05.15
【熊本県感染症情報】梅毒患者増加 県内3人確認
2018.05.07
梅毒患者、県内(埼玉県)は47人に…最多の昨年を超すペース 女性 は20代、男性は40代が多く 早めの受診を
2018.04.17
若い女性の梅毒患者が急増している理由…コンドーム着用でも安心禁物、誰でも感染 のリスク
2018.03.22
HIV感染者と患者「増加傾向変わらず」 福岡県で過去2番目の多さ [福岡県]
2018.03.22
HIV感染、昨年は1407人…すでにエイズ発症していた患者が415人〔読売新聞〕
2018.03.02
HIV感染者と患者が過去2番目の54人に 昨年の福岡市 [福岡県]
2018.01.23
検査結果確認画面リニューアル (スマートフォン・タブレット用)
2018.01.22
梅毒が全国的に流行、特に女性患者が急増
2018.01.18
平成29年の長野県の梅毒感染30人 33年ぶりの多さ 女性患者増
2018.01.05
梅毒5千人、初めて突破 患者最多は東京 若い女性らに感染拡大
2018.01.04
年始のご挨拶
2017.12.25
「梅毒」急増中の日本、世界は「淋病」制御不能時代を危惧
2017.12.25
今年も記録更新!梅毒の流行が止まらない!
2017.12.21
梅毒患者、全国で急増…主婦・OLにも感染拡大
2017.11.14
梅毒患者過去最多。「身に覚えがない」が最も危険
2017.11.01
梅毒患者 現行統計で年間過去最多の4568人
2017.11.01
梅毒感染、地方でも増加 岡山・熊本は昨年の3倍超
2017.09.22
九州でエイズ感染急増 16年福岡は61%増 佐賀、熊本過去最多
2017.09.14
梅毒の患者数 約20年で最も多いペース
2017.09.11
性行為感染症(STD) 性行為以外でうつることも
2017.09.06
梅毒の勢い止まらず、年間5000人突破の恐れも
2017.08.31
「いきなりエイズ」なお3割=HIV感染・発症1448人-昨年厚労省
2017.08.28
過去の性病と侮るな 梅毒、20代女性患者が急増中 国内患者数6年間で7倍超
2017.08.14
広がる梅毒、母子感染も 昨年の報告数 42年ぶりに4000人突破
2017.07.24
ダイヤモンドオンラインの記事について②
2017.07.15
ダイヤモンドオンラインの記事について
2017.06.28
NHKにて梅毒の報道がありましたので抜粋して御案内します
2017.06.15
今年の梅毒患者が2000人超、過去最悪ペースで感染拡大 
2017.06.06
梅毒の届け出数、「多くの地域で増加」 感染研、昨年同時期と比較
2017.04.26
梅毒早くも1000例に
2017.04.21
急増する梅毒感染者、過去最速ペース 把握しておきたいHIV感染との関係
2017.04.13
HIVの郵送検査、10年で3倍超 顔合わせず可能
2017.04.07
梅毒感染者が急増!最速1000人超え 20代女性患者が目立つも「原因は不明」
2017.04.04
梅毒患者1000人超、過去最速で感染拡大
2017.03.31
HIV感染に気付いてない人 推計5800人
2017.01.17
新宿セントラルクリニックの報道について
2017.01.13
梅毒感染、42年ぶり4千人超 20代女性で急増
2017.01.13
梅毒患者4千人超、5年で5倍に…増加要因不明
  • ホーム
  • コラム・ニュース
  • 世間的認知は低いが、淋菌と同等の有病率で不妊・がん・早産の原因となる、危険なトリコモナス性感染症

ここまでが本文です