カンジダ
細菌性膣症
2025.01.14
カンジダ
細菌性膣症
STDを防ぐ
ネット上には様々な誤情報が散見されるため、UpToDateに基づき、Tips(問題解決に役に立つちょっとしたヒントやアドバイス)としてまとめます。
*この記事は、世界で最も信頼性のあるメタアナリシス(様々な研究・文献を統合して判断すること)エビデンスの1つであるUpToDate(https://www.uptodate.com)をエビデンスとして記載しております。
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まず、カンジダは人体に当たり前に存在しているカビの一種で、普段は身体に影響を及ぼすものではありません。
正常細菌叢(せいじょうさいきんそう)と呼ばれる、無害な細菌集団の一部として存在していています。
この無害な細菌集団がいることで、悪い菌が入る隙間がなくなるため、身体にとっては必要なものです。
しかし、後述する様々な要因によって、カンジダの割合が過剰に増えてしまうと、結果的に症状を引き起こすことがあります。
膣にそれが起こった場合、カンジダ膣炎となります。
過剰な膣洗浄はカンジダの原因と言われていますが、実際はどうなのでしょうか。
カンジダ膣炎を引き起こすリスクとして、エビデンスを以って認められているのは、以下の4つです。
カンジダ膣炎を引き起こすリスク
◆糖尿病(1)
正常血糖の方よりも外陰腟カンジダ症になりやすいです。
◆抗生物質の使用(2)
上述したように、カンジダは無害な細菌集団の一部です。
しかし、抗生物質でカンジダ以外の細菌が減り、カンジダの割合が多くなってしまうことでカンジダ膣炎を引き起こします。
◆エストロゲンレベルの上昇
例:妊娠など(3)
※ピルはエストロゲンレベル上昇するが、リスクとは証明されない
妊娠によるエストロゲン分泌の上昇した状況で、より頻繁に発症します。
◆免疫抑制
例:ステロイドなど免疫抑制剤の使用、HIVなど自己免疫疾患(4)
長期間ステロイド薬・免疫抑制薬を服用している方、HIVによって免疫が低下している方もリスクが高くなります。
逆に、カンジダ膣炎と関連が無いことを、エビデンスを以って認められているのは以下です。
カンジダ膣炎と関連がないもの
◆衛生習慣
例:タンポン、ナプキンの使用、膣洗浄など(5)
◆食事:ヨーグルトの摂取など(6)
研究されましたが、関連性が証明されませんでした。
◆膣内乳酸菌(善玉菌)の減少
※類似の疾患の細菌性膣症においては、乳酸菌の減少が大きなリスクですが、カンジダでは関連がありません(7)
よく耳にする情報として、膣の洗いすぎでカンジダ膣炎になりやすくなるとか、ヨーグルトの摂取でカンジダ膣炎になりにくくなるといったことがあります。
しかし、これらの噂は上記のとおり、証明されていません。
カンジダの症状の特徴は外陰部、膣のかゆみや痛みです(8)。
おりもの異常はある時もない時もあります。
よく、チーズみたいなおりものが出たらカンジダと考える人がいますが、カンジダかどうかはおりものだけでは区別できません。
細菌性膣症のこともあります。
しかし、細菌性膣症は、カンジダ膣炎と異なり、基本的にかゆみや痛みが出ません。
「外陰部や膣のかゆみや痛み」がカンジダ膣炎の特徴で、この症状がある場合、カンジダ膣炎の可能性があるということを覚えていただければと思います。
顕微鏡検査によるカンジダ膣炎を正しく判定できるのは、50%程度に過ぎません(9)。
つまり、検査陰性でもカンジダ膣炎を否定できません。
結果が陰性であっても、症状が気になるようであれば、医師に申し出た方がいいでしょう。
また、逆に検査の結果が陽性でも、症状が無ければ治療不要の場合があります。
最初に述べた通り、カンジダ自体はそもそも身体にいて当たり前なのです。
気になる症状がなければ、治療に積極的になる必要性は高くありません。
カンジダ膣炎においては、症状を中心的に対処することが大事です。
実は、明確なエビデンスをもったカンジダ膣炎の予防法があります。
日本国内ではまだまだですが、欧米ではよく行われていて、UpToDateで認められたカンジダ膣炎の再発予防があります。
その予防方法は簡単で、カンジダの治療薬を週に1~2回使用し続けるというものです。
この方法は80%以上の場合で症状のコントロールが報告されています(10)。
そして、6カ月行うと、半数の人はカンジダ膣炎になりにくい体質に変わります(11)。
新宿サテライトクリニックでは、デリケートゾーン専門外来として、この治療を提供しています。
上述しましたが、膣内の乳酸菌とカンジダ膣炎に関連がありません。
実際に試された研究もありますが、効果を証明できませんでした(12)。
カンジダ膣炎や細菌性膣症といった分野は、日本では研究者が少ないこと、予防医療が進んでいないこともあって遅れています。
これを機に正しい認識を持っていただければ幸いです。
UpToDate: Candida vulvovaginitis: Clinical manifestations and diagnosis
UpToDate: Candida vulvovaginitis in adults: Recurrent infection
1) Donders GG. Lower Genital Tract Infections in Diabetic Women. Curr Infect Dis Rep 2002; 4:536
2) Wilton L, Kollarova M, Heeley E, Shakir S. Relative risk of vaginal candidiasis after use of antibiotics compared with antidepressants in women: postmarketing surveillance data in England. Drug Saf 2003; 26:589.
3) Haddad LB, Wall KM, Tote K, et al. Hormonal Contraception and Vaginal Infections Among Couples Who Are Human Immunodeficiency Virus Serodiscordant in Lusaka, Zambia. Obstet Gynecol 2019; 134:573.
4) Duerr A, Heilig CM, Meikle SF, et al. Incident and persistent vulvovaginal candidiasis among human immunodeficiency virus-infected women: Risk factors and severity. Obstet Gynecol 2003; 101:548.
5) Foxman B. The epidemiology of vulvovaginal candidiasis: risk factors. Am J Public Health 1990; 80:329.
6) Janković S, Bojović D, Vukadinović D, et al. Risk factors for recurrent vulvovaginal candidiasis. Vojnosanit Pregl 2010; 67:819.
7) Swidsinski A, Guschin A, Tang Q, et al. Vulvovaginal Candidiasis: Histologic lesions are primarily polymicrobial and invasive and do not contain biofilms. Am J Obstet Gynecol 2018.
8) Blostein F, Levin-Sparenberg E, Wagner J, Foxman B. Recurrent vulvovaginal candidiasis. Ann Epidemiol 2017; 27:575.
9) Jaeger M, Plantinga TS, Joosten LA, et al. Genetic basis for recurrent vulvo-vaginal candidiasis. Curr Infect Dis Rep 2013; 15:136.
10) Nguyen Y, Lee A, Fischer G. Quality of life in patients with chronic vulvovaginal candidiasis: A before and after study on the impact of oral fluconazole therapy. Australas J Dermatol 2017; 58:e176.
11) Crouss T, Sobel JD, Smith K, Nyirjesy P. Long-Term Outcomes of Women With Recurrent Vulvovaginal Candidiasis After a Course of Maintenance Antifungal Therapy. J Low Genit Tract Dis 2018; 22:382.
12) Patel DA, Gillespie B, Sobel JD, et al. Risk factors for recurrent vulvovaginal candidiasis in women receiving maintenance antifungal therapy: Results of a prospective cohort study. Am J Obstet Gynecol 2004; 190:644.
記事の執筆
北岡 一樹(きたおか かずき)
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