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2021.06.15

クラミジア

実はしつこくて、難しい、クラミジア性感染症

性感染症の中で最もかかっている人が多い病気が、クラミジア性感染症です。治りやすいイメージがあるかもしれませんが、実はしつこくて、難しい病気なのです。それについて説明していきます。

クラミジア性感染症とは?

クラミジア性感染症は、クラミジア・トラコマチスという細菌によって引き起こされます。
男性と女性の両方で最も多い性感染症です(1)。男性のクラミジア感染の最も一般的な所見は尿道炎で、女性の最も一般的な所見は子宮頸管炎です。さらに、直腸や結膜などでも感染を引き起こすことがあります。加えて、感染した産道を通じて生まれた乳児では、結膜炎や肺炎が起こることがあります。

 

クラミジア性感染症のしつこさ①:無自覚

女性において、子宮頸管拭い液でクラミジア感染が確認されたなかで、症状がない人は、 85%以上と言われています(2)。男性においても、尿道分泌物でクラミジア感染が確認されたなかで、症状がない人は、40%から96%にまでのぼると報告されています(3)。
したがって、ほとんどの人が無自覚のまま、性行為で伝播させていくため、治しても、また知らぬ間に再感染してしまうこととなり、しつこい病気です。かかっているかどうか見つけて、治療するには、定期的に検査するしか方法はありません。

 

クラミジア性感染症のしつこさ②:再発の高さ

クラミジアの再陽性率は 15 ~ 30% といわれています(4)。再陽性は薬が効かなかった(薬剤耐性菌)からじゃないかと思うかとも思われますが、実は、今日まで、クラミジアにおいて、通常使用するアジスロマイシンまたはドキシサイクリンに対する薬剤耐性は、証明されていません。つまり、再陽性は、薬剤耐性によるものではありません。通常、治療を受けずクラミジアに感染しているままの性的パートナーとの性行為の再開に起因します。新しい性的パートナーとの性交によって生じるものもあります。女性の場合、感染を繰り返すと、骨盤内炎症性疾患などの複雑な性器感染症を発症するリスクが高まり、不妊にもつながってしまいます。
理想的には、クラミジア感染者の性的パートナーも検査して、治療するのが望まれます。しかし、費用や手間からされないことも多く、米国中心に「迅速なパートナー治療」 (Expedited Partner Therapy:EPT) と呼ばれる戦略が提案、実施されています。薬アレルギー等確認し、性的パートナー分の治療薬をお渡しするというものです。性的パートナーに来院してもらい、検査、治療という従来の方法より、再発感染者を有意に減少させ(5)、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)においても推奨されていますが、日本の保険診療の規制では不可能な治療です。当グループのような保険外診療の医院でしか行えません。
まとめると、クラミジア性感染症は、性的パートナーからの再感染が多く、再発率が高く、しつこい病気となっています。

 

クラミジア性感染症の難しさ①:咽頭感染

クラミジアは咽頭にも感染し、咽頭から性器部位への感染の貯蔵庫のようになると言われています(6)。ただし、咽頭感染に対する治療はほかの部位より困難なことが多いです。理由としては、食物が通る場所は、食物に反応しないように免疫機能が低下しています(免疫寛容といいます)。したがって、通常の部位より免疫機能による治療効果が期待できず、治りにくくなります。他部位の服薬容量よりも多い方が良いと考えられていますが、まだまだ研究も少なく、定まっていません。咽頭感染に関しては、性感染症治療に詳しい医療機関で治療する必要があります。

 

クラミジア性感染症の難しさ②:上行感染

クラミジアが子宮頸部に感染したあと、治療されない場合、20% の割合で上部生殖管に到達し、骨盤内炎症性疾患(卵管、子宮、卵巣へ感染すること:PID)となります(7)。PIDになると強い腹痛を引き起こすことが多いですが、それでも無症状なこともあります。PIDを放置すると不妊の原因になってしまいます。また、治療も、比較試験が少ないということもありますが、通常使用されるアジスロマイシンよりドキシサイクリンの方が良いという難しさがあります。この治療に関しても、性感染症治療に詳しい医療機関で治療する必要があります。

 

まとめ

クラミジア性感染症は一般的には治療しやすいとされていますが、
・しつこい!:ほとんどの場合症状がない、再発率が非常に高い
→定期的な検査、できる限りパートナーの治療(EPT治療が可能な病院で)が必要
・難しい!:咽頭感染、上行感染の治療は通常治療とは異なる
→適切な病院での加療が必要
病気であることを意識する必要があります。

 

1) Centers for Disease Control and Prevention. Sexually Transmitted Disease Surveillance, 2018. Atlanta, GA: US Department of Health and Human Services; 2019.
2) Detels R, Green AM, Klausner JD, Katzenstein D, Gaydos C, Handsfield H, Pequegnat W, Mayer K, Hartwell TD, Quinn TC. The incidence and correlates of symptomatic and asymptomatic Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae infections in selected populations in five countries. Sex Transm Dis. 2011 Jun;38(6):503-9.
3) Cecil JA, Howell MR, Tawes JJ, Gaydos JC, McKee KT Jr, Quinn TC, Gaydos CA. Features of Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae infection in male Army recruits. J Infect Dis. 2001 Nov 1;184(9):1216-9.
4) Hogben M. Partner notification for sexually transmitted diseases. Clin Infect Dis. 2007 Apr 1;44 Suppl 3:S160-74.
5) Khan A, Fortenberry JD, Juliar BE, Tu W, Orr DP, Batteiger BE. The prevalence of chlamydia, gonorrhea, and trichomonas in sexual partnerships: implications for partner notification and treatment. Sex Transm Dis. 2005 Apr;32(4):260-4.
6) Chan PA, Robinette A, Montgomery M, Almonte A, Cu-Uvin S, Lonks JR, Chapin KC, Kojic EM, Hardy EJ. Extragenital Infections Caused by Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae: A Review of the Literature. Infect Dis Obstet Gynecol. 2016;2016:5758387.
7) Wiesenfeld HC, Sweet RL, Ness RB, Krohn MA, Amortegui AJ, Hillier SL. Comparison of acute and subclinical pelvic inflammatory disease. Sex Transm Dis. 2005 Jul;32(7):400-5.

 

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記事の執筆


著者情報 新宿サテライトクリニック 院長 北岡 一樹(きたおか かずき)

予防会 新宿サテライトクリニック 院長
早稲田大学招聘研究員

北岡 一樹(きたおか かずき)

三重大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院で研修を行った後、内科勤務しながら、名古屋大学大学院細菌学博士課程へ入学。薬剤耐性菌研究に携わり、博士(医学)取得。
その後、早稲田大学で招聘研究員として研究を開始。同時に、医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで性感染症診療も開始し、現在、院長を務めている。
性感染症について診療だけでなく研究も行っており、ファージを用いた性感染症予防の実現(性感染症予防のゲームチェンジャー)に取り組んでいる。

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