カンジダ
細菌性膣症
2020.10.15
淋菌
約30年前、医学生だった私は、淋病になると尿道が痛くてセックスができなくなる「淋しい病気」だから、そういう名前がついたのかな?と思っていました。
当然ながら、これは間違いです。
いま振り返ると、とても不勉強な学生だったと、恥ずかしい気持ちになります。
「淋病」の「淋」は、確かに「さびしい」と訓読みします。
ちなみに、「寂しい」と書く「さびしい」は情景がさびしいときに使い、「淋しい」と書く「さびしい」は、感情のさびしいときに使います。
淋病は、古い書物には「痳病」と書かれています。病気に関係する部首である「疒(やまいだれ)」のある「痳」の意味は、「お腹や腰が痛くなる病気」という意味があります。
これはまさに淋病の女性の症状を表しています。
一方、「淋病」の「淋」は、「さびしい」のほかに、「したたる」という意味があります。
これは、尿道から膿がしたたる淋病の男性の症状を表しています。
淋菌感染症は、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)による感染症で、泌尿生殖器に感染すると、男性の尿道炎、女性の子宮頚管炎を起こします。
淋菌は高温にも低温にも弱く、生きていくために炭酸ガスを必要とするため、人の体外では生存することができません。よって、おもな感染経路は、ヒトからヒトへの粘膜同士の接触による性行為感染になります。
図1.淋菌感染症患者報告数(定点医療機関による患者数)(厚生労働省ホームページより引用)
定点医療機関を受診した淋菌感染症の患者数を図1に示しました。患者数は、平成14年をピークに減少していますが、圧倒的に男性が多いです。その理由は、男性の方が女性よりも症状が強く現れるために、病院を受診する割合が高いことが考えられます。女性は淋菌に感染していても、感染初期は症状が現れにくいため、受診行動につながらない可能性があります。この図で表している患者数は、定点観測医療機関での報告数のため、実際の罹患者数は、この何十倍にも及ぶと予想されます。
ちなみに、淋菌の感染者数は、平成14年にピークになっていますが、この頃はデフレ不況と呼ばれる時期でした。今年は新型ウイルスによる不況が懸念されています。渋谷クリニックでは、昨年よりも今年の方が淋菌、クラミジアの患者数が増えている印象です。不況と性病の蔓延は関係があるのかもしれませんね。
図2.令和元年の淋菌感染症年代別患者数(厚生労働省ホームページより引用)
図2は、最も新しい令和元年のデーターです。淋菌感染症の罹患者を年代別で見ると、男女ともに20~24歳で多くなっています。
(1)淋菌性尿道炎
不安な性行為後2~7日の潜伏期間を経て、排尿痛、尿道分泌物が出現する尿道炎症状が現れます。分泌物は多量、黄白色、膿性で、排尿後30分くらいで、また膿性の分泌物が出てきます。自覚症状として、排尿時の強い痛みが特徴で、一刻も早く治したいという気持ちになり、病院を受診することになります。
(2)急性淋菌性前立腺炎
淋菌が尿道を上行し、前立腺に感染すると、発熱、会陰部痛、残尿感、精液に血が混じるなどの症状が現れます。
(3)淋菌性精巣上体炎
淋菌性尿道炎の時点で適切に治療されず、淋菌がさらに上行し、精巣上体に感染すると、精巣上体炎を起こします。はじめは片側性ですが、さらに放置すると両側の精巣上体に感染が及び、陰嚢内容が腫大し、疼痛で歩行困難になることがあります。治療後に無精子症(男性不妊)を生じる場合があります。
(1)子宮頸管炎
淋菌を保菌しているパートナーとの腟性交や口腔性交により発症します。女性の場合は、淋菌にかかっていても40%は自覚症状を伴わないと言われています。症状のある場合は、膿性のおりものの増加、臭いやかゆみの症状が現れます。
(2)骨盤内炎症性疾患
腟や子宮頸管にいた淋菌が、卵管を通って骨盤内に侵入して炎症が波及すると、下腹部痛や上腹部痛を生じ、骨盤内炎症性疾患と呼ばれる状態になります。この約半数の方に、発熱や腹部の激痛を生じ、重症の場合には、救急車で病院に運ばれるほどの痛みを生じることもあります。
私の経験でも、下腹部の激痛により救急車で病院に運ばれて、開腹手術までされてしまった症例も少なくありません。早期であれば、手術ではなく点滴で治療できます。骨盤内炎症性疾患はクラミジアや他の雑菌類でも起こりますが、淋菌が原因である比率は高くありません。しかし、放置していると、異所性妊娠(子宮外妊娠)や不妊症の原因になるため、早期発見早期治療で確実に治すことが重要です。
(3)肝周囲炎
骨盤内感染が重症化し、炎症が上腹部まで達すると肝周囲炎を引き起こします。これにより、肝臓周囲に癒着が形成され、右上腹部痛を発症するとフィッツ・ヒュー・カーティス症候群と呼ばれる状態になります。
(4)尿道炎・膀胱炎・腎盂腎炎およびバルトリン腺炎
淋菌が尿道に感染すると、尿道から膿性分泌物を生じます。女性の尿道は4㎝程度と短く、尿道炎から膀胱炎を併発し、排尿時痛や頻尿、残尿感などを自覚するようになります。さらに放置すると、腎臓に炎症が波及し、腎盂腎炎を生じます。高熱や腰背部痛、嘔吐などの症状があらわれます。
また、腟の入り口付近にあるバルトリン腺に感染すると、会陰部がゴルフボールくらいに腫大し、炎症を伴うと、痛みで椅子に座れないほどになります。
近年、オーラルセックスの増加によって、淋菌が咽頭に感染する症例が増えています。
咽頭に淋菌が感染すると、のどの違和感、扁桃腺痛、発熱などの症状が現れる場合もありますが、ほとんどは自覚症状が乏しいので、咽頭の検査は実施されないことが多いです。しかし、性器の淋菌感染者の10~30%に咽頭からも淋菌が検出されるという報告もあり、オーラルセックスがあった場合には咽頭の淋菌感染も念頭に置いた検査や十分な治療が必要になります。
肛門性交により淋菌が直腸粘膜に感染することで起こります。男性同性間性的接触者(MSM)や女性でもみられます。多くの場合は無症状ですが、肛門の掻痒感・不快感、肛門性交痛、下痢、血便、膿性血便がみられることがあります。
グラム染色標本の検鏡法、分離培養法、核酸増幅法などがあります。
グラム染色標本の検鏡法は、男性の尿道炎では有効な方法ですが、女性の腟分泌物では、淋菌の同定が困難であり推奨されていません。
培養法は、淋菌が温度などの環境変化に弱いため、検体の保管状況によっては検出感度が著しく低下する可能性があります。通常、結果が判明するまでには3~4日要しますが、薬剤感受性試験が可能であり、薬剤耐性淋菌の感染が疑われる場合には有効な方法です。
核酸増幅法は、クラミジアと淋菌を同時に検出できる方法が主流になっており、結果が判明するまでの時間は培養法より短時間ですが、薬剤感受性検査は行えません。男性の淋菌性尿道炎患者では、約20~30%の症例でクラミジアが重複感染していると言われていますので、クラミジアと淋菌を同時に検出できる核酸増幅法による検査が有用です。
・淋菌性尿道炎および淋菌性子宮頸管炎
<第一選択>
セフトリアキソン1g静注点滴、単回投与。
<第二選択>
スペクチノマイシン2g臀部筋注、単回投与。
・淋菌性精巣上体炎および淋菌性骨盤内炎症性疾患
1)セフトリアキソン1g 静注点滴、1~2回/日、1~7日間。
2)スペクチノマイシン2g筋注で効果が無ければ、4g臀部筋注。
※投与期間は重症度に応じて判断。
・淋菌性咽頭感染
セフトリアキソン1g静注点滴、単回投与。
※スペクチノマイシンは咽頭への移行が悪く効果が劣るため使用すべきではない。
・淋菌性結膜炎
スペクチノマイシン2g臀部筋注、単回投与。
※キノロン系点眼薬については80%以上が耐性株であるため、使用すべきではない。
男性は、感染初期から症状が強くあらわれるため、比較的早期に病院を受診し重症化することはほとんどありませんが、女性は感染初期の症状が軽度か無症状なことも多く、放置されがちです。女性は、淋菌感染を放置することで、子宮外妊娠、不妊症、母子感染などの重篤な合併症を生じる恐れがあるため、感染源と思われるパートナーに対して、男性の方から女性に早めに受診するように伝えることが重要です。
Q1. 淋菌は性行為以外でも感染しますか?
A1. 性行為(性器性交、口腔性交、肛門性交)、出産時の産道感染、淋菌が手についた状態で眼をこする(自家感染)などした場合に感染することがあります。淋菌は高温にも低温にも弱く、生きていくために炭酸ガスを必要とするため、人体の外では生存することができない弱い菌です。しかし、インターネット上のある記事では、お風呂や日常生活でのタオルの共有でも感染するようなことが書かれていますが、淋菌の性質上、性行為以外の感染経路は考えにくいと言えます。
Q2. 性行為で淋菌がうつる確率はどのくらいですか?
A2. 避妊無しの性器性交によって相手に淋菌が感染する確率は、1回の性行為で30%程度と高い確率です。また、性行為が1回だけではなく何回もあれば、感染する確率も30%より高くなる可能性があります。
Q3. 淋菌を治すための飲み薬はありますか?
A3.近年、抗生剤に対する淋菌の耐性化が問題になっています。現在、抗生剤を点滴する治療で一番効果があり、第一選択の治療です。経口抗生剤もある程度の効果はありますが、無効例も多数報告されており、咽頭淋菌に対しては、ほとんど効果がありません。クラミジアの治療薬であるアジスロマイシンは、点滴用については淋菌にも有効という報告がありますが、経口用のアジスロマイシンについては治療失敗例の報告もあり、淋菌の治療薬としてはあまり期待できません。
Q4. 治療後の再検査は必要ですか?
A4.治癒判定のための再検査は必要です。近年、薬剤耐性淋菌の報告が増加しており、一度の治療では治りづらいことがあります。また、咽頭と性器の同時感染例では、薬剤が咽頭へ移行しにくいため、性器の淋菌が消失しても、咽頭の淋菌は残存するという症例も少なくありません。治療してから1週間以降で治癒確認の再検査をお勧めします。
Q5. パートナーの検査は必要ですか?
A5.パートナーの検査は必要です。特に、女性は初期の症状が軽度のこともあり、自ら病院を受診しない可能性があります。また、淋菌感染を放置することによって、男女ともに将来的に不妊症になったり、女性の場合は、子宮外妊娠による出血によって命に関わる事態に陥ったりすることもあります。自分は治療して完治したとしても、パートナーが未治療ならピンポン感染する可能性があります。
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