カンジダ
細菌性膣症
2022.08.16
梅毒
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梅毒は、スピロヘータという細菌(Treponema pallidum)によって引き起こされる感染症です。
梅毒の感染が急増していますが、明確な原因はまだ分かっていません。病気が増えたり減ったりしたとき、疫学研究という研究手法を用いて、その原因を探ることが行われますが、複数の原因が混在していることが多く、なかなか難しいです。
一方、梅毒は生来、非常に感染性の強い性感染症です。梅毒の皮膚病変にはT. pallidumが大量に存在し、わずか数個のT. pallidumが直接接触するだけで感染が成立します。
したがって、性交渉における性器挿入行為が無くても感染し、コンドームをしていても病変を完全に覆えていなければ感染します。
さらに梅毒病変においては、痛みがないことがほとんどで症状に気づかれないことが多いです。
これらのことから、一度流行り始めると、加速度的に流行すると考えられます。急増の原因としては、他にも様々な要因が考えられますが、この生来の感染しやすさも影響していると思われます。
「気づかないまま、性交渉のわずかな接触でどんどん感染していく」という梅毒の性質に注意しておく必要があります。
梅毒皮膚病変と直接接触することで梅毒に感染します。
性交渉で触れる場所に皮膚病変があり、それが性交渉で伝播し、また性交渉で触れた場所に病変が出来るということを繰り返していくため、性交渉によって感染していきます。
病変と触れるだけで感染するため、感染に性器挿入は必須ではなく、コンドームをしていても病変が少しでも露出していれば感染します。また、T. pallidumは胎盤を通過するため、胎児への感染も起こります。
梅毒は進行具合によって症状が分かれ、一次梅毒・二次梅毒・三次梅毒があります。
一次梅毒の症状は、下疳(げかん)と呼ばれる皮膚病変です。
性交渉相手の梅毒皮膚病変と接触した場所が粘膜であればどこでも、粘膜でなければ傷があるとそこから、T. pallidumが侵入します。約21日(3-90日)の潜伏期間ののち(1)、下疳(げかん)を生じます。
したがって、下疳(げかん)の出来る場所は性交渉で接触する場所として性器が中心にはなりますが、口唇や乳房、肛門もあり得ます。
下疳(げかん)は、無痛性の丘疹(きゅうしん)(数mmの皮膚の隆起)として現れ、すぐに潰れて潰瘍(かいよう)(数mmの皮膚の欠損)となります。
また、この下疳(げかん)にT. pallidumが大量に含まれており、梅毒感染を引き起こす皮膚病変は下疳(げかん)が中心となります。
一次梅毒においては、下疳(げかん)部位近くのリンパ節腫脹を伴うことが多く、片方だけのこともあれば、左右両方にあることもあります。下疳(げかん)・リンパ節腫脹ともに、治療しなくても3~6週間以内に自然に治癒します。
下疳(げかん)の発生後数週間から数ヵ月以内に、二次梅毒となります。
二次梅毒では、体幹、四肢、手掌、足底などに対称性の紅斑または丘疹(きゅうしん)を来し、バラ疹と呼ばれます。これらも治療を受けなくても自然に消失します。また、バラ疹にはT. pallidumはほとんど含まれておらず、感染力は低いです。
三次梅毒においては、全身に肉芽種と呼ばれる、丸く盛り上がった発疹が出来ます。加えて、大動脈血管炎、大動脈弁閉鎖不全から左心不全となります。
さらに、どの時点であっても、中枢神経系が侵され、髄膜炎、脳卒中、全身麻痺、運動失調などを来す神経梅毒という状態になることもあります。
梅毒にかかっているかどうか調べるには血液検査が必要です。
梅毒を確定的に検査するのは、梅毒を直接(梅毒の抗原)測定するトレポネーマ検査(様々な検査名・検査法がありますが、代表的なのものはTP検査と略されるものです)です。
TP検査だけでよいように思われますが、診断・治療にあたり、病勢の情報が必要となるため、梅毒を間接的に測定する非トレポネーマ検査(様々な検査名・検査法がありますが、代表的なのものはRPR検査と略されるものです)も必要となり、基本的にはこれら両者を検査することとなります。
基本的には、TP検査・RPR検査両方陽性で初めて梅毒陽性と判定します。片方だけ陽性である場合は、偽陽性の可能性もありますが、梅毒早期の可能性もあり、感染機会(最終性交渉)から十分な期間(6-8週間)が経っていない場合は、2-4週間後に再検査する必要があります。
梅毒治療の基本薬剤はペニシリン系となります。海外では昔からペニシリンGという筋肉注射が使用されてきました。日本ではアレルギーの懸念から内服薬(アモキシシリン)で治療されてきましたが、2021年にペニシリンGの筋肉注射の使用が承認されました。
治癒の判断は、通常の病気によくあるような、陰性を以て治療終了ということにはならず、難しさがあります。世界的な感染症治療の権威であるアメリカ疾病予防管理センター(CDC)より示されているのは、RPR検査値で4倍以上の低下を判断基準にするということです(2)。
海外ではペニシリンGの使用が一般的であり、アモキシシリンは主に日本だけで実績が積み上がっており、差を比較したエビデンスの高い研究はありません。ただ、実際に診療をしていて、新たに承認されたペニシリンGと従来のアモキシシリン内服で治癒までの期間にいまのところ差を感じてはいません。症例を積み重ねて、いずれ比較研究を行い、論文報告したいと考えています。
PF, et al (Eds), McGraw-Hill, New York 1990. p.213.
2) Workowski KA, Bolan GA; Centers for Disease Control and Prevention. Sexually transmitted diseases treatment guidelines, 2015. MMWR Recomm Rep. 2015 Jun 5;64(RR-03):1-137. Erratum in: MMWR Recomm Rep. 2015 Aug 28;64(33):924.
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