カンジダ
細菌性膣症
2020.02.14
ヘルペス
それは、いったいどういうことなのでしょうか?
ヘルペスウィルスの特徴を知ることで、感染した際の症状について理解しやすくなります。
【次回の目次】
1.ヘルペスウィルスの特徴は?
2.性器ヘルペス感染症は増加している?
3.性器ヘルペスの症状は?
4.診断は?
2億年も前からいるヘルペスウィルスについて、1回分のコラムでは書ききれなかったので、2回に分けて書くことにしました。1回目は診断までです。
ヘルペスウィルスの一番の特徴は、「潜伏感染」をすることです。
「潜伏」とは文字通り、「相手に見つからないように身を潜める」という意味です。
ではこの場合の「相手」とは誰のことでしょうか?
それはヒトです。正しくは、ヒトの免疫細胞です。
通常、ヒトの体内にウィルスや細菌が侵入すると、免疫細胞がそれを外敵とみなして攻撃します。ところが、ヘルペスウィルスの場合は、侵入した当初は免疫細胞に見つかりますが、集中攻撃が開始される前に皮膚の知覚神経を伝って遡り、深部の神経節に移動して潜伏感染状態となり、身を潜めるのです。この潜伏感染状態の時、ウィルス遺伝子の発現もほとんどなく、抗原となるたんぱく質も発現しないため、ヒトの免疫細胞はヘルペスウィルスに感染した細胞を見つけることができないので、潜伏感染中は攻撃することができないのです。これが、一度感染したあともずっと身体の中に住み続けることができるヘルペスウィルスの最大の特徴です。
さらに、身体の中に住み続けているヘルペスウィルスは、ヒトの免疫が何らかの原因で低下したときに、潜伏感染状態から増殖を開始(再活性化)して、神経節から皮膚へ移動して2度目、3度目の病変を引き起こします。これを、回帰感染あるいは再発と呼びます。回帰感染(再発)時には、免疫細胞に見つかるので、初感染の初発時よりは軽症になります。
潜伏感染(引用:maruhoより一部改変)
ところで、ヘルペスウィルスの「ヘルペス」って、変な名前だと思いませんか?
私が学生だったころ、細菌学の講義のときに、このヘルペスという名前が奇妙だったので興味を持ったのを憶えています。
「ヘルペス」はギリシャ語で「這う」という意味で、このように感染領域の知覚神経を這って所属神経節(上半身は三叉神経節、下半身は腰仙髄神経節)に潜伏したり、免疫低下時には神経節から知覚神経を這って再び皮膚に出現したりすることからこのような名前が付いたのです。
このようにヘルペスウィルスは性器自体に感染するというよりも、性器周辺の「神経に感染をする」ととらえた方が正しいです。
また、ヒトに感染する単純ヘルペスウィルスには、HSV-1とHSV-2の2種類があります。かつて、口唇周辺の症状のときはHSV-1、性器周辺の症状のときはHSV-2が原因であると言われていましたが、近年、オーラルセックスによってHSV-1が性器周辺の神経に初感染すると、性器ヘルペスとして発症することが分かってきました。HSV-1、HSV-2のどちらも性器に症状を現すので、怖いイメージを持つ方もいらっしゃると思います。
しかし、この2つのウィルスの大きな違いは、潜伏感染の場所が違うことです。HSV-1の潜伏場所は三叉神経節という顔の運動や知覚をつかさどる神経の根元で、HSV-2の潜伏場所は腰仙髄神経節という陰部・生殖器系の知覚神経の根元なので、もし、HSV-1が性器周辺の神経に感染しても腰仙髄神経節には潜伏しないので、HSV-1による性器ヘルペスの再発は起こりにくいということになります。
性器ヘルペスは、性感染症定点把握疾患に該当し、全国の指定を受けた医療機関(性感染症定点医療機関)で診断された患者数を毎月管轄の保健所へ届け出ることになっています。その報告によると、平成30年の性感染症定点医療機関は984施設であり、患者数は9128人でした。1定点医療機関あたりでみると、性器ヘルペスの患者さんは年間9.3人来院されたことになります。患者数は、平成18年までは年間10人以上のペースでしたが、平成19年以降は年間9人に下がりました。これは、平成18年に感染症法の改訂があり、「再発の性器ヘルペス」の報告は除外して良いことになったためと考えられます。しかし、以降9人台で近年やや微増している状態です。
最新の平成30年のデータでは、男性3584人、女性5544人で女性に多く、男性では40~44歳、女性では25~29歳が一番多い年齢層になっています。また、男女ともに、60歳以上の年齢層でも患者数が多くなっています。これは、感染すると一生涯持ち続けるヘルペスウィルスが、高齢で免疫力が低下して発症することと関連していると考えられます。男性に比べて女性に多い理由は、女性の方が重い症状なので異常に気づきやすいことが推察されます。
外部から侵入したHSVの初感染によっておこる初発のケース。感染機会があってから2~21日後に外陰部の不快感、かゆみなどの前駆症状ののち、発熱、全身倦怠感、所属リンパ節の腫脹、急激に小さな水疱が多数出現し、つぶれて癒合したあとは潰瘍になって強い痛みを生じます。男性では、陰茎包皮、冠状溝、亀頭に、女性では、外陰部や子宮頸部に病変を生じ、無治療でも自然軽快しますが、治癒するまでに2~4週間近くかかります。女性は痛みが強いために、排尿困難や歩行困難になることがあり、重症になると入院して点滴治療が必要になります。後に詳しく述べますが、初発の症状が長引くと再発頻度が高まるので、早期に抗ウィルス薬で積極的に治療することが大切です。ヘルペスに対する抗ウィルス薬はほとんど副作用がありませんので、疑わしきは罰するを原則に、私は積極的に治療するようにしています。
潜伏感染していたHSVの再活性化によっておこるケース。疲労、月経、性交などの刺激で誘発され症状が出ますが、急性型に比べて水疱の数は少なく症状も軽度であり1週間以内に治癒することが多いです。再発の回数は月に2~3回から年に1~2回と様々です。この年末年始は皆さん忙しかったせいか、性器ヘルペス再発の患者さんが多く来院されました。
過去に感染したものの、その時は無症状で、免疫低下を契機としてウィルスが活性化し、初めて症状が出るケースです。症状は軽いため、海外では再発型として分類されています。
問診と視診以外に有用な検査方法が無いのが現状です。
<問診>
発熱の有無や痛みのある場所、痛みの程度、坐骨神経痛や腰痛の随伴症状についてお聞きします。
<視診>
水疱、潰瘍、発赤、びらん、痂疲など、ヘルペスに典型的な皮膚症状を見て判断します。HSVの分離培養検査が信頼度の高い検査ですが、未承認検査のため結果が出るまで時間がかかり、高額なのが難点です。近年、HSV抗原の迅速検査ができるようになりましたが、潰瘍面をしっかり拭わないと偽陰性になることが多く、また、HSV-1とHSV-2の区別はできません。血清抗体による診断は、初感染では病状の落ち着く7~10病日にようやく陽性になるため、発症早期の診断には向いていません。
性器ヘルペスは、症状や特徴的な皮膚病変を専門的に見ることによって確実に診断できますので、外陰部の違和感や痛みなどがあれば、なるべく早い段階での受診をお勧めします。
ヘルペスウィルスは一度感染すると根治することは難しく、個人差はありますが、繰り返し再発することが問題になります。アメリカでの調査によると、HSV-2に感染したほとんどの人が、その後何らかの症状を伴って再発し、そのうちの35%以上は頻繁に再発をすることがわかりました。特に、初感染時の症状が長引いた方は頻繁に再発します。また、男性の方が女性よりも約20%再発率が高いので、性器ヘルペスの罹患者数が減らないのは、男性から女性への感染率が高いためと言われています。
再発は、免疫の低下、疲労、ストレス、月経周期などが誘因と言われていますが、再発しないように、これらの誘因を避けて生活することなんて無理ですし、そのように気を使って生活する方がよっぽどストレスです。
それでも、ごく少数の方は頻繁に再発してしまいますが、再発の頻度や症状に応じて、再発を抑える治療が受けられます。この治療は、再発による症状の期間を短縮したり、再発の頻度を減らす効果があります。
次回は後半の性器ヘルペスの治療についてです。
>>次回の記事はこちら
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