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2022.07.15

ヘルペス

重症化を防ぐために、発症早期の治療が重要であり、知っておく必要がある性器ヘルペス感染症

性器ヘルペス感染症は不顕性感染(感染しているが、発症しない)が多く、知らずに性器ヘルペスウイルスを保持している方が多いです。
発症した際、重症化を防ぐためには早期の治療が必要であるため、知っておく必要がある疾患です。
また、最近のエビデンスでは適切な薬の投与量も変わってきています。これらを中心に述べていきます。

*この記事は、最も信頼性の高いメタアナリシスレビューの1つとされているUpToDate(Epidemiology, clinical manifestations, and diagnosis of genital herpes simplex virus infection、Treatment of genital herpes simplex virus infection、Prevention of genital herpes virus infections:accessed on 7 July)を基にしています。

性器ヘルペス感染症について

性器ヘルペス感染症は、HSV-1もしくはHSV-2と呼ばれるウイルスによって引き起こされる、性器の感染症です。

通常の病気とは少し異なっていて、多くの人が不顕性感染(感染しているが、発症しない)という状態で経過します。
ニューヨークの疫学研究で、成人の約28%がHSV-2に感染していましたが、88%は発症したことがなかったという報告があります(1)。

伝播としては、基本的には発症病変部位の接触で感染しますが、不顕性感染の状態でも、性器へのウイルスの排出が認められており、発症していないからといって感染しないわけではありません(2)。
また、現状の医療では、感染した場合、薬で根治することが出来ず、症状が治っても、再発を繰り返すことがあります。
特に、HSV-2の方は再発率が高く、初発症状があった方のうち60%で再発症状があったと報告されています(HSV-1では14%)(3)。

 

性器ヘルペス感染症の症状・検査

性器ヘルペスに感染し、発症する場合、平均潜伏期間は4日(2~12日)と報告されています(4)。

症状としては、有痛性性器小水疱・潰瘍を基本として、排尿障害、発熱、圧痛を伴う鼠径部リンパ節腫脹などがあります。
まれに、重症化し、髄膜炎を引き起こしたり、仙骨神経根炎として、下肢脱力・尿閉(排尿できなくなること)を引き起こすことがあります。
また、小水疱・潰瘍が出現する前に、陰部おける局所的な軽度のチクチクした痛み(射撃痛)を来すことがあります(前駆症状)。

診断としては、身体検査が基本となりますが、病変部位を擦過し、培養やPCR検査を行うこともあります。
また、抗体を検出する血液検査もありますが、不顕性感染でも陽性となるため、現在発症しているかどうかは不明で、感染しているかどうかを確認する検査となります。
しかし、不顕性感染が多く、発症した場合は早期の治療が重要となることから、血液検査で感染の有無を確認しておくことも大事です。

 

性器ヘルペス感染症の治療

性器ヘルペス感染症は、重症化することもあるために、症状が出現した場合、薬の服用が必要とされています。初発と再発で薬の内容が異なります。

2021年にCDC(アメリカ疾病予防管理センター)のガイドランが改訂され、以前より薬の投与量等が変更となり、初発発症では、アシクロビル:400mg3回/日、ファムシクロビル:250mg 3回/日、バラシクロビル:1000mg 2回/日のいずれかを7-10日間使用することが推奨となりました(5)。
まれに新たな病変が継続することがあり、その場合は5-7日間の延長が必要です。初発発症においては、症状出現から72時間以内の薬服用開始により、確実な効果が得られ、重症化を防ぐことができるとされており、性器ヘルペス感染症を疑った場合は、すぐに病院を受診することが重要となります。
また、薬を服用しても性器ウイルスの根絶は出来ないことに注意が必要です。

再発発症では、アシクロビル:800mg3回/日を2日間、または800mg2回/日を5日間、ファムシクロビル:1000mg2回/日を1日間、または125mg2回/日を5日間、または、500mg 1 回/日を1日間+250mg 1 回/日を2 日間、バラシクロビル:500mg2回/日を3日間、または1000mg1回/日を5日間が推奨されています(5)。
初発発症においては、症状出現から24時間以内の薬服用開始により、確実な効果が得られ、重症化を防ぐことができるとされています。
初発、再発発症共に、どの薬剤を使用しても効用としては同等とされています(6, 7)
また、再発発症が多い場合は、再発抑制療法を行うことも検討されます。再発抑制療法には、パートナーへの感染リスクを下げることが出来るメリットもあります。

再発抑制療法においては、バラシクロビルの優位性が示されており(8)、500mg1回/日を連日服用します。いつまで継続すればよいかということについては、明確なエビデンスがありません。
1年再発抑制療法を受けた後、中止すると、4週間以内に再発発症したという報告があり(9)、副作用なく6年以上長期服用可能であったという報告もある(10)ことから、ある程度長期的なスパンで服用を継続する必要があると考えられています。
一方、再発発症リスクは、初発発症から時間が経つにつれ減少していくことから、実際には、年単位で見直しながら進めていくような形となります。

また、外用薬はかつてよく使用されていましたが、最近のエビデンス(2021年CDCガイドライン)では、効果はわずかであり、使用するメリットが認められなくなりました(5)。

 

まとめ

不顕性感染(感染しているが、発症しない)が多いが、発症した場合早期に治療することで重症化を防ぐことができる→発症したことがない人でも、感染しているかどうか調べておくことをオススメ
薬の投与内容が変化している→性感染症専門の病院での治療をオススメ

1) Schillinger JA, McKinney CM, Garg R, et al. Seroprevalence of herpes simplex virus type 2 and characteristics associated with undiagnosed infection: New York City, 2004. Sex Transm Dis 2008; 35:599.
2) Workowski KA, Bolan GA, Centers for Disease Control and Prevention. Sexually transmitted diseases treatment guidelines, 2015. MMWR Recomm Rep 2015; 64:1.
3) Reeves WC, Corey L, Adams HG, et al. Risk of recurrence after first episodes of genital herpes. Relation to HSV type and antibody response. N Engl J Med 1981; 305:315.
4) Kimberlin DW, Rouse DJ. Clinical practice. Genital herpes. N Engl J Med 2004; 350:1970.
5) Workowski KA, Bachmann LH, Chan PA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep 2021; 70:1.
6) Corey L, Bodsworth N, Mindel A, et al. An update on short-course episodic and prevention therapies for herpes genitalis. Herpes 2007; 14 Suppl 1:5A.
7) Patel R, Stanberry L, Whitley RJ. Review of recent HSV recurrent-infection treatment studies. Herpes 2007; 14:23.
8) Wald A, Selke S, Warren T, et al. Comparative efficacy of famciclovir and valacyclovir for suppression of recurrent genital herpes and viral shedding. Sex Transm Dis 2006; 33:529.
9) Molin L, Ruhnek-Forsbeck M, Svennerholm B. One year acyclovir suppression of frequently recurring genital herpes: a study of efficacy, safety, virus sensitivity and antibody response. Scand J Infect Dis Suppl 1991; 80:33.
10) Fife KH, Crumpacker CS, Mertz GJ, et al. Recurrence and resistance patterns of herpes simplex virus following cessation of > or = 6 years of chronic suppression with acyclovir. Acyclovir Study Group. J Infect Dis 1994; 169:1338

 

 

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記事の執筆


著者情報 新宿サテライトクリニック 院長 北岡 一樹(きたおか かずき)

予防会 新宿サテライトクリニック 院長
早稲田大学招聘研究員

北岡 一樹(きたおか かずき)

三重大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院で研修を行った後、内科勤務しながら、名古屋大学大学院細菌学博士課程へ入学。薬剤耐性菌研究に携わり、博士(医学)取得。
その後、早稲田大学で招聘研究員として研究を開始。同時に、医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで性感染症診療も開始し、現在、院長を務めている。
性感染症について診療だけでなく研究も行っており、ファージを用いた性感染症予防の実現(性感染症予防のゲームチェンジャー)に取り組んでいる。

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