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2021.07.15

淋菌

治療薬が効きにくくなり、将来治癒不可能になるかもしれない淋菌感染症

性感染症の中で最も薬剤耐性化が進行しつつある感染症が淋菌性感染症です。恐ろしい未来が待っているかもしれません。それも含めて説明していきます。

 

淋菌性感染症について

淋菌性感染症は、ナイセリア・ゴノレアという細菌(日本語では淋菌と訳されてきました)によって引き起こされます。
多くの国において、クラミジアの次に多い性感染症です。淋菌は、性器粘膜への定着力に優れるため、性行為を通じて感染していきます。
淋菌は、男性の尿道炎、女性の子宮頚管炎の主要な原因となります。子宮頚管炎は、骨盤内炎症性疾患(PID)、不妊症、子宮外妊娠、および慢性骨盤痛へ発展することもあります。また、咽頭や直腸にも感染し、まれに播種(はしゅ)性淋菌感染症、心内膜炎、髄膜炎といった深刻な病気を引き起こすこともあります。

 

 

淋菌性感染症の症状

まず、女性において、最も一般的な淋菌の感染部位は子宮頚管です。70%の女性は症状がありません(1)。症状がある場合、おりものの性状変化、膣のかゆみが多く、まれに不正出血を来すこともあります。また、淋菌が子宮頸管に感染している人のうち最大90%で尿道にも淋菌が感染しています(2)。しかし、ほとんど無症状であり、まれに排尿時痛や頻尿を引き起こします。さらに淋菌が子宮頸管に感染している人のうち10-20%において、卵管、子宮、卵巣といった骨盤内へ感染しています(PIDといいます)(3)。PIDに至ると、骨盤・腹痛、不正出血、性交時の痛みを自覚するようになります。

 

男性の場合は、最も一般的な淋菌の感染部位は尿道となり、症状としては排尿時痛、尿道分泌物となります。しかし、60%は無症状という報告もあります(4)。また、尿道から、睾丸(正式には精巣上体という部位)へ侵入することもあります。その場合は、睾丸痛を来します。

オーラルセックスにより咽頭へ感染することも一般的になってきました。しかし、淋菌咽頭感染症の大部分は無症候性です。咽頭痛、咽頭滲出液、頸部リンパ節腫脹を来す人もいますが、非常にまれです。
まとめますと、淋菌は様々に症状を引き起こすこともありますが、多くが無症状なので、定期的な検査が必要となります。

 

 

淋菌性感染症の治療

淋菌性感染症の治療においては、セフトリアキソンという薬を1回投与するだけで、治癒可能なことが示され、長らく標準治療として使用されてきました。しかし、昨今、セフトリアキソンが効かない(耐性)淋菌が出現するようになり、世界中の薬剤耐性菌の動向を監視し、対策に取り組んでいるアメリカ疾病予防管理センター(CDC)によって、最も危険レベル(Urgent threat)に位置付けられました(5)。性感染症のなかで、このような脅威を示している菌は淋菌だけです。理由は淋菌の特殊な特徴に基づいています。少し難しい話になりますが、通常、細菌は外部のDNAを自然に取り込むことはありませんが、淋菌は外部のDNAをごく普通に取り込むという特徴(自然形質転換)を持ちます。それにより、変異していくスピードが非常に高いです。

 


このような現状から、CDCはセフトリアキソン単独治療を推奨せず、セフトリアキソン250mg+アジスロマイシン1g二重療法を標準治療とする指針を示しています(6)。ただし、日本では事情が異なり、アレルギーの懸念から欧米で行われているセフトリアキソン250mg筋注が認められず、1g点滴が行われてきました。実は、これが功を奏しています。現在のセフトリアキソン耐性淋菌も、250mgでなく1gでは治療可能といわれています(7)。しかし、効果不十分となることもあり、その場合は二重療法が必要となります。

 


先ほど述べた淋菌の特徴から、いずれセフトリアキソン1gに耐性を示すようになるのは時間の問題です。また、アジスロマイシン耐性淋菌もすでに報告されています。そして、これらの耐性菌に対しては、実はカルバペネムという現時点で最強の抗菌薬によって治療可能ではあります。しかし、それもいずれは耐性となり、何も効かない淋菌が出てくると想定されます。セフトリアキソンが標準治療となって15年で耐性化が進みました(8)。15年後にはセフトリアキソンが完全に効かなくなり、30年後には何も効かなくなることが予想されます。そのためにも、今のうちに検査し、治療しておく必要があります。何も効かなくなり、治癒不可能となる未来の前に。

 

まとめ


淋菌性感染症は無症状のことが多い → 定期的な検査が必要


将来治癒不可能になるかもしれません → 今のうちに治療を

 

1) McCormack WM, Stumacher RJ, Johnson K, Donner A. Clinical spectrum of gonococcal infection in women. Lancet. 1977 Jun 4;1(8023):1182-5.
2) Barlow D, Phillips I. Gonorrhoea in women. Diagnostic, clinical, and laboratory aspects. Lancet. 1978 Apr 8;1(8067):761-4.
3) Eschenbach DA, Buchanan TM, Pollock HM, Forsyth PS, Alexander ER, Lin JS, Wang SP, Wentworth BB, MacCormack WM, Holmes KK. Polymicrobial etiology of acute pelvic inflammatory disease. N Engl J Med. 1975 Jul 24;293(4):166-71.
4) Klouman E, Masenga EJ, Sam NE, Klepp KI. Asymptomatic gonorrhoea and chlamydial infection in a population-based and work-site based sample of men in Kilimanjaro, Tanzania. Int J STD AIDS. 2000 Oct;11(10):666-74.
5) CDC. Antibiotic Resistance Threats in the United States, 2019. Atlanta, GA: U.S. Department of Health and Human Services, CDC; 2019
6) St Cyr S, Barbee L, Workowski KA, Bachmann LH, Pham C, Schlanger K, Torrone E, Weinstock H, Kersh EN, Thorpe P. Update to CDC’s Treatment Guidelines for Gonococcal Infection, 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020 Dec 18;69(50):1911-1916.
7) Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Cephalosporin susceptibility among Neisseria gonorrhoeae isolates–United States, 2000-2010. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2011 Jul 8;60(26):873-7.
8) Wi T, Lahra MM, Ndowa F, Bala M, Dillon JR, Ramon-Pardo P, Eremin SR, Bolan G, Unemo M. Antimicrobial resistance in Neisseria gonorrhoeae: Global surveillance and a call for international collaborative action. PLoS Med. 2017 Jul 7;14(7):e1002344.

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記事の執筆


著者情報 新宿サテライトクリニック 院長 北岡 一樹(きたおか かずき)

予防会 新宿サテライトクリニック 院長
早稲田大学招聘研究員

北岡 一樹(きたおか かずき)

三重大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院で研修を行った後、内科勤務しながら、名古屋大学大学院細菌学博士課程へ入学。薬剤耐性菌研究に携わり、博士(医学)取得。
その後、早稲田大学で招聘研究員として研究を開始。同時に、医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで性感染症診療も開始し、現在、院長を務めている。
性感染症について診療だけでなく研究も行っており、ファージを用いた性感染症予防の実現(性感染症予防のゲームチェンジャー)に取り組んでいる。

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