カンジダ
細菌性膣症
2019.06.11
梅毒
★ 梅毒は治る病気!そのためには早期診断・早期治療がポイント!
前回は梅毒の症状についてお話ししました。今回は検査と治療についてのお話しです。
・問診(まず初めにお話をうかがいます)
「いつ頃?」、「誰と?」、「どこで?」、「どのような性行為がありましたか?」など、答えるのが恥ずかしい質問もありますが、症状の出る場所の推定や血液検査ができるかどうかを判断します。
・視診(患部を見ます)
どのような症状がどこに出ているのかを見て確認します。梅毒の進行期を判断します。
・内診(女性の場合)
ご自身では見えづらい外陰部や膣、子宮頸部の異常を診察します。
① 梅毒の菌体を直接検出する方法
病変部位が無いと検査が困難で、特殊な装置や技術が必要なため一般的ではありません。
② 血液検査(1度の採血で2項目の検査を実施します。)
無症状でも感染から4週間以上経過していればできます。
◆ 脂質抗原法(RPRテスト、ガラス板法など)
:梅毒の活動性の指標となる検査。非特異的検査のため疑陽性も多い。
◆ TP抗原法(TPHA、FTA-ABSなど)
:梅毒に特異的な検査(陽性の場合は梅毒確定です)
一般的には、梅毒の症状と血液検査の結果で診断します。
図1:梅毒定性検査の結果解釈
脂質抗原法は梅毒以外の疾患でも(+)になることがあり、また、梅毒に一度かかると、TP抗原検査は一生涯(+)のままになります。そのため、脂質抗原法とTP抗原法の結果を組み合わせて、過去の感染なのか、梅毒の病原体が現在活動している状態なのかを診断します。
<梅毒定性検査と梅毒定量検査>
定性検査は、現在梅毒に「かかっている」のか、「かかっていない」のかを調べる検査です。
定量検査は、定性検査で陽性の場合や、梅毒の症状が明らかな場合におこないます。
また、定期的に抗体(自分の身体を守るために作られる武器のような免疫物質)の量を測り、その量の増減によって治療の効果を判定します。
不安な性行為があって心配・・・。
という場合も、接触から4週間以上経っていれば血液検査で調べることは可能です。
検査時期が早すぎると、脂質抗原検査・TP抗原検査の両方が(-)となり、その場合は日にちをあけて再検査をすることがあります。
図2:梅毒疑い患者への対応の概略:
(引用:日本性感染症学会-梅毒治療ガイドより)
(治癒するまでお薬を飲み続けることが大事です)
検査の結果、梅毒と判明したらショックだと思いますが、ペニシリン系のお薬がよく効きますのでご安心ください。かつては不治の病とされていた梅毒ですが、ペニシリンの発見により治る病気になりました。日本の標準治療は抗生剤の長期間の服用です。治るまできちんと服用しましょう!
●日本性感染症学会の推奨する治療(神経梅毒以外)
① アモキシシリン1回500mgを1日3回、4週投与が基本治療です。
<ペニシリン系製剤にアレルギー症状(発疹、かゆみ、呼吸困難など)がある方の治療>
② ミノサイクリン、あるいはドキシサイクリン1回100㎎を1日2回、4週投与。
③ スピラマイシン1回200㎎を1日6回、4週投与。
<神経梅毒の治療:入院して行う治療です>
④ ペニシリンGカリウム1回400万単位を4時間ごとに点滴静注、14日間。
⑤ セフトリアキソン1回2gを24時間ごとに点滴静注、14日間。
・妊娠中の方は、②と③のお薬が胎児へ影響することがあるため、基本的には①の治療になります。
・たび重なる飲み忘れや服用の中断によって、菌が薬剤耐性(薬が効きづらい性質に変化する)を持つようになり、治癒しづらくなるだけでなく、結果的に医療費がかさんでしまうことにもなるので注意しましょう!
・梅毒治療開始後24時間以内に、発熱、皮疹、全身倦怠感、頭痛、筋肉痛などを生じることがあります(10~35%程度)が、自然に改善します。これは、ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応と言い、抗生剤により梅毒の菌体が大量に破壊されたときに出る物質に原因があると言われています。市販の解熱鎮痛剤を併用しても問題ありません。
(梅毒定量検査で判断します)
脂質抗原検査の抗体定量と梅毒抗原検査の抗体定量の同時測定を4週ごとに行います。この際、自動化法(自動分析器で抗体価を測定する方法)による測定が望ましく、一貫して同じ検査キットを用いることが推奨されています。病院が変わると検査方法も違う場合があるので、なるべく同じ病院で診てもらうようにしましょう。
(治癒の判断)
自動化法による治療後のRPR抗体定量値が、治療前の値に比べて半減していれば治癒と判定します。その際、梅毒トレポネーマ抗体の値も減少傾向であれば、なお良いとされています。
治療が成功し治癒と診断できた場合でも、検査の間隔をあけながら可能な限り1年間は定期的なフォロー(血液検査)をして、再発していないかをみていく必要があります。
(あたりまえのことだけど、なかなか聞きづらい)
日本人が一番苦手にしている分野ですが、一番大事なところです。
梅毒になった後の性行為の開始時期について記載している日本の教科書は残念ながら一冊もありませんでした・・・。例えば、カナダの疾病対策予防センターのガイドラインを参考に記載しますが・・・。かなり厳しいです!しかし、これくらいしないと感染は防げないものなのです。
① 治癒と診断がつくまでは、他人との性行為は禁止です。(少なくとも2週間は絶対に禁止です。)
② 診断前3か月以内に関係のあったすべてのセックスパートナー(過去3か月間にオーラル、アナルも含めた性行為をおこなったすべての人)たちへ、早期梅毒の接触があったということで治療、検査、検診が必要になります。(たとえ検査結果が陰性であっても梅毒の治療が必要な方たちです)
③ 診断前3~12か月の間に性交渉を持ったパートナーには検査と検診が必要です。
(BC Center for Disease Control)
★カミングアウトの大切さ(性病を憎んで人を憎まず)
梅毒に限らず、自分が性感染症にかかったとき、「私にうつしたのは誰だ!?」と、犯人探しをしたくなるものです。しかし冷静に考えると、自分も他人にうつしてしまう側になっているということでもあるのです。ここで一貫して強調したいことは、たった一度の性行為でもうつってしまうのが性感染症なので、かかってしまったことを嘆くよりも、早く見つけて早く治療することが一番良いことなのです。ですから、自分がうつしてしまったかもしれない人に早く検査をしに行くことを勧めてください。また、自分の大事なパートナーと同時に治療していくことが大切です。ひとりひとりが気を付けて検査と治療を受けることが、昨今の梅毒の流行を抑えることにつながるのです。
図3:性感染症の流行について:( 引用:girls health.gov )https://www.girlshealth.gov/body/sti/symptoms.html
(妊婦健診をきちんと受けていれば防げます)
妊娠中の女性が梅毒にかかると、胎児にまで感染が及んで生まれつき梅毒になってしまう「先天梅毒」という病気に赤ちゃんがかかってしまうことがあります。妊娠中に適切な治療がなされなければ流早産や死産、赤ちゃんの肝臓の腫大にともない全身に異常が生じます。先天梅毒も2014年以降増加傾向であり、今後もさらに増加することが心配されています。
私は新生児集中治療室(NICU)勤務時代に先天梅毒の赤ちゃんを治療した経験があります。その赤ちゃんは出生後すぐにNICUに入院し、長期間の集中治療が必要でした。あらゆる手を尽くしましたが、残念ながらその赤ちゃんは再びお母さんの元に帰ることはできませんでした。
妊婦さんになると梅毒は妊婦健診で必ずチェックします。早期診断し治療をすれば先天梅毒のほぼ100%近くは、防ぐことができます。近年、経済的な理由や社会的な事情で母子手帳の交付を受けず、妊婦健診も受けずに飛び込み出産するケースが増えてきています。妊婦健診は、健康な赤ちゃんを出産し育てていくための妊婦さんの義務だと思って必ず受けるようにしましょう。
図4(引用:http://www.humanillnesses.com/Infectious-Diseases-Co-Ha/Congenital-Infections.html)
~~~筆者の独り言~~~
欧米における梅毒の標準治療はベンザチンペニシリンG(BPG)の筋肉注射です。1回の注射で十分な治療効果が得られるのですが、日本には現在このBPGの注射薬がありません。
正確にはあったのに消えたのです!こんなに良いお薬がなぜ消えた?
「ペニシリンアレルギー」を知っている方もいらっしゃるかもしれません。かつて日本でペニシリン注射のアレルギーによってある偉い人が亡くなり、ペニシリンが悪者扱いされたために消えた、と言われています。
薬剤アレルギーはある一定程度はどうしても生じるもので、大半の方は安全に使用できます。アレルギーを生じた後の救命処置が悪かったのに、ペニシリンによるアレルギーを恐れるあまり、日本の梅毒治療は世界の標準治療から逸脱しています。アモキシシリンの長期間内服でも治療効果はありますが、患者さんに長期間服用を強いる治療と1回の注射で済む治療とを比較したとき、確実性が高いのは1回の注射で済む治療の方だと思います。
日本は今後も国際交流が盛んになり、梅毒患者も増加する一方で、BPGの必要性について国や自治体が再認識し、BPGの使用再開について前向きに検討していただくことを願っています。
また、梅毒などの性感染症にかかったとき、自分でセックスパートナーたちへ通知することは勇気のいることです。諸外国では、自分の代わりに匿名で通知してくれるシステムがあります。これは、自分がうつしてしまったかもしれない相手や、うつされたかもしれない相手に検査や診察に行くように伝えることができるので、このようなシステムを日本でも取り入れていく必要があると考えています。
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