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2022.01.17

マイコプラズマ

比較的新しく、様々な見解が存在し、正しい知識を把握する必要があるマイコプラズマ性感染症

マイコプラズマ性感染症は比較的最近判明した性感染症です。まだ評価が定まっていないところもあり、文献、医師によって見解が異なることもあります。そこで、このコラムでは、Wolters Kluwerにより提供されるUpToDateと呼ばれる臨床情報電子媒体のなかのマイコプラズマに関する項目「Mycoplasma genitalium infection in men and women」「Mycoplasma hominis and Ureaplasma infections」を基にして記載しております。マイコプラズマに関する記載をする場合、様々な文献や医師と相違が生じる可能性があります。このコラムは私個人的な意見ではなく、UpToDateに準拠したものであります。UpToDateは世界で最もその項目に精通した著者により、メタアナリシス(様々な文献・疫学研究を統合して判断すること)され、日々電子媒体として更新されていることから、最新の、最も確実なエビデンスとなります。したがって、このコラムで基にしたUpToDateの内容は参照した2022年1月11日のものであり、今後、エビデンスの集積を受けて刻一刻とUpToDateの記載内容も変化していく可能性もあります。これらのことを認識して、ご覧いただければ幸いです。

 

マイコプラズマについて

マイコプラズマは、普通の細菌は持っている細胞壁というものを持たない特殊な細菌です。様々な種類が含まれますが、性感染症を引き起こすものは、マイコプラズマ・ジェニタリウム、マイコプラズマ・ホミニス、ウレアプラズマ・パルバム、ウレアプラズマ・ウレアリティカムの4種であるといわれています。このうち、マイコプラズマ・ジェニタリウムとそれ以外で性質が異なります。

 

マイコプラズマ・ジェニタリウム以外のマイコプラズマは、性器における常在菌でもあります。健康な女性の最大80%がウレアプラズマを保菌し、50%がマイコプラズマ・ホミニスを保菌しているという報告があります(1)。男性においても、健康成人の25%でマイコプラズマ・ホミニスの保菌が見られたと報告されています(2)。
マイコプラズマ・ジェニタリウム以外のマイコプラズマと、性感染症との関連ははっきりとはわかっていません。性感染症において、マイコプラズマ・ジェニタリウム以外のマイコプラズマが単独で同定されることが稀であり、他の性感染症の病原菌と共存しているだけなのか、病原体なのか判断しづらいこと等が、解釈を困難にしています。
同様に、不妊との関連についても、影響について示唆されるデータもありますが、現時点では因果関係は証明されていません。
一方、マイコプラズマ・ジェニタリウムに関しては、性感染症の原因となることが証明されており、おりものの異常や陰部不快感が生じる子宮頚管炎や、排尿時違和感や膿が生じる尿道炎を引き起こします。しかし、無症状のことの方が多く、感染しても大部分は6カ月以内に自然消失すると報告されています(3)。
また、現時点においては、不妊との関連についても、関連性を示す報告もあれば、関連がないという報告もあり、不明とされています(4)。

 

したがって、無症状であれば、マイコプラズマが発見されたとしても、正常保菌もしくは自然に消失することも多く、不妊につながる証拠も現時点ではないことから、必ず治療しなければいけないというわけではありません。基本的には、陰部不快感、排尿時違和感、おりもの異常など性感染症の症状をきたし、主要な病原菌である淋菌、クラミジア、トリコモナス、カンジダ、ガードネレラ・バギナリスが否定された場合に、マイコプラズマによる性感染症を検討し、検査することが推奨されています。しかし、特に明確な病原性を認めているマイコプラズマ・ジェニタリウムに関しては、不妊への関連性を示すようなエビデンスが発出される可能性もあり、動向を注視する必要があります。また、性感染症であることに変わりはないので、定期的に検査し、治療も行うというのも一つの立場ではあります。
検査については、培養が困難であることから、核酸検査を行えるような、性感染症専門の病院での検査が必要となります。

 

マイコプラズマの治療

マイコプラズマは治療において、難しい面があります。一般的にはマクロライド系という薬が使用されます。しかし、マイコプラズマ・ホミニスに対しては、マクロライド系薬が無効です。また、マイコプラズマ・ジェニタリウムにおいても耐性の報告が増えつつあり、報告によっては20%程度ともいわれており(5)、通常より多い投与量での治療が推奨されています。
マクロライド系薬の代用としては、テトラサイクリン系の薬が使用されますが、15-40%が耐性と報告されています(6、7)。同様に代用されるフルオロキノロン系薬(特にモキシフロキサシンやシタフロキサシン)も5-15%で耐性が報告されています(8、9)。
これらの薬剤が無効であった場合、基本的には打つ手がありません(プリスチナマイシンという薬も欧州では使用されていますが、日本では使用されておらず、また、その効果も確実ではありません)。実際に診療していても、このような場面に時折遭遇することがあります。医療の限界を感じ、申し訳ないですが、マイコプラズマの生来の病原性の低さ(自然に消失することもある)に期待して、経過観察することとなります。予防会では、このような状況を打破するために、ファージセラピーという新たな治療法の開発も行っています。いつの日か、マイコプラズマによる性感染症の症状で苦しむ方々を救えるようになることを目指しています。

 

まとめ

マイコプラズマ・ジェニタリウムを中心としてエビデンスが刻一刻と変化する可能性がある→マイコプラズマに対する正しい知識を持つ性感染症専門の病院への受診をオススメ
マイコプラズマは、核酸検査での検査が必要であり、治療にも様々な理解と選択肢が必要→性感染症専門の病院への受診をオススメ

 

 

基本的には
Mycoplasma genitalium infection in men and women:https://www.uptodate.com/contents/mycoplasma-genitalium-infection-in-males-and-females?search=mycoplasma&source=search_result&selectedTitle=5~150&usage_type=default&display_rank=5 (Accessed on 11 January 2022)
Mycoplasma hominis and Ureaplasma infections:https://www.uptodate.com/contents/mycoplasma-hominis-and-ureaplasma-infections?search=mycoplasma&source=search_result&selectedTitle=3~150&usage_type=default&display_rank=3 (Accessed on 11 January 2022)を基にしています
1) Waites KB, Schelonka RL, Xiao L, Grigsby PL, Novy MJ. Congenital and opportunistic infections: Ureaplasma species and Mycoplasma hominis. Semin Fetal Neonatal Med. 2009 Aug;14(4):190-9.
2) Lee YH, Rosner B, Alpert S, Fiumara NJ, McCormack WM. Clinical and microbiological investigation of men with urethritis. J Infect Dis. 1978 Dec;138(6):798-803.
3) Vandepitte J, Weiss HA, Kyakuwa N, Nakubulwa S, Muller E, Buvé A, Van der Stuyft P, Hayes R, Grosskurth H. Natural history of Mycoplasma genitalium infection in a cohort of female sex workers in Kampala, Uganda. Sex Transm Dis. 2013 May;40(5):422-7.
4) Taylor-Robinson D, Jensen JS. Mycoplasma genitalium: from Chrysalis to multicolored butterfly. Clin Microbiol Rev. 2011 Jul;24(3):498-514.
5) Pond MJ, Nori AV, Witney AA, Lopeman RC, Butcher PD, Sadiq ST. High prevalence of antibiotic-resistant Mycoplasma genitalium in nongonococcal urethritis: the need for routine testing and the inadequacy of current treatment options. Clin Infect Dis. 2014 Mar;58(5):631-7.
6) Meygret A, Le Roy C, Renaudin H, Bébéar C, Pereyre S. Tetracycline and fluoroquinolone resistance in clinical Ureaplasma spp. and Mycoplasma hominis isolates in France between 2010 and 2015. J Antimicrob Chemother. 2018 Oct 1;73(10):2696-2703.
7) Manhart LE, Broad JM, Golden MR. Mycoplasma genitalium: should we treat and how? Clin Infect Dis. 2011 Dec;53 Suppl 3(Suppl 3):S129-42.
8) Xiao L, Crabb DM, Duffy LB, Paralanov V, Glass JI, Waites KB. Chromosomal mutations responsible for fluoroquinolone resistance in Ureaplasma species in the United States. Antimicrob Agents Chemother. 2012 May;56(5):2780-3.
9) Couldwell DL, Tagg KA, Jeoffreys NJ, Gilbert GL. Failure of moxifloxacin treatment in Mycoplasma genitalium infections due to macrolide and fluoroquinolone resistance. Int J STD AIDS. 2013 Oct;24(10):822-8.

 

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記事の執筆


著者情報 新宿サテライトクリニック 院長 北岡 一樹(きたおか かずき)

予防会 新宿サテライトクリニック 院長
早稲田大学招聘研究員

北岡 一樹(きたおか かずき)

三重大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院で研修を行った後、内科勤務しながら、名古屋大学大学院細菌学博士課程へ入学。薬剤耐性菌研究に携わり、博士(医学)取得。
その後、早稲田大学で招聘研究員として研究を開始。同時に、医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで性感染症診療も開始し、現在、院長を務めている。
性感染症について診療だけでなく研究も行っており、ファージを用いた性感染症予防の実現(性感染症予防のゲームチェンジャー)に取り組んでいる。

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