ページの先頭です

ここからヘッダーです

ここからメニューです

予防会からのお知らせや、性感染症(STD)に関するコラムをお届けします。


ここから本文です

2022.10.17

淋菌

クラミジア

性感染症病原菌の咽頭(のど)感染についてのQ and A

咽頭記事用1

*この記事は、世界で最も信頼性のあるメタアナリシス(様々な研究・文献を統合して判断すること)エビデンスの1つであるUpToDate(https://www.uptodate.com)をエビデンスとして記載しております。

 

 

 

性感染症病原菌は咽頭(のど)にも感染するの?

 

一般的に感染症において、病原菌の感染する部位は決まっています。

病原菌は接着因子というものを持っていて、それにより宿主(ヒト)に感染するため、宿主の部位によって接着しやすさが異なり、病原菌が感染する場所が決まります。

淋菌、クラミジア、梅毒など性感染症の病原菌は「粘膜」に接着しやすいという特徴を持っており、多くが粘膜同士の直接接触により移行します。

また、「粘膜」とは、どこかと言いますと、体の中で、外界と面している部分は全て「粘膜」となります。

したがって、具体的な部位としては、目、咽頭、消化管、肺、尿道、膣、子宮などの表面です。すなわち、性感染症の病原菌は、目、咽頭、消化管、肺、尿道、膣、子宮全てに感染できます。

粘膜と粘膜が直接接触するような部位で感染が成立しやすいので、尿道、膣、子宮、咽頭、直腸が主な部位となります。

そして、咽頭に感染する行為としては、オーラルセックスをした場合や、ディープキスをした場合となります。

感染が成立するには、粘膜同士が強く接触する必要があるので、尿道に性感染症病原菌を保持している男性の陰茎に対してオーラルセックスをした場合がほとんどであり、膣に性感染症病原菌を保持している女性に対してオーラルセックスをした場合ではあまり感染せず、ディープキスによる感染はほとんどないと言われています(1)。

実際の有病率としては、例えば、淋菌の咽頭感染率に対するある報告で、2-5%であったと述べられています(2)。

 

咽頭記事用2

性感染症病原菌が咽頭に感染した場合の症状は?

 

性感染症病原菌の咽頭感染によって、咽頭やクラミジアでは喉の痛み、痰、頸部リンパ腫脹といった症状、梅毒では潰瘍が現れることもあります。

しかし、例えば、喉の痛みを訴えて病院に来院した192人のなかで、淋菌の咽頭培養が陽性で痛みの原因であると考えられたのは、1%のみであったという報告があります(3)。

私も、オーラルセックス経験後、咽頭痛がしてきたために、性感染症の咽頭感染を疑って来院される方に度々遭遇しますが、実際に咽頭から性感染症病原体が陽性であったことはほとんどなく、ほとんどの場合において風邪でした。
このことは、逆に言うと、性感染症病原菌が咽頭感染していても、症状がなく、無自覚に保菌しているということで非常に危険です。検査をしない限り、その人が永続的に性感染症病原体を広めるスプレッダーになってしまいます。

また、咽頭に感染していた性感染症病原菌がオーラルセックスにより、咽頭から相手の性器へ感染し、それが性行為により自分の性器に戻ると、性器における性感染症となり、治療しなければ不妊や出産のトラブルに繋がってしまいます。
したがって、症状がなくても、特に性行為機会が多い方においては、定期的な性感染症の咽頭検査が必要です。

咽頭記事用3

性感染症病原菌が咽頭に感染した場合の治療は?

 

性感染症病原菌が咽頭に感染した場合、一般的に治療薬が効きにくくなります

有効率の低下を示す例として、淋菌において、標準治療における性器感染の治癒率は98%であったのに対し、咽頭感染の治癒率は79%でした(4)。

したがって、咽頭感染における治療方法は、通常の性器感染における治療法より限られます。

例えば、淋菌感染症の治療法はセフトリアキソン点滴のほかに、セフィキシム内服やスペクチノマイシン筋注という方法もありますが、咽頭感染の場合はセフトリアキソン点滴しか有効性を担保できません(5)。

クラミジア感染症の治療法もビブラマイシン内服やアジスロマイシン内服が中心ですが、咽頭感染の場合はビブラマイシン内服が高い有効性を認められています(6)。

また、これらのエビデンスも刻々と変わっています。

性感染症の研究が進んでいるのはアメリカであり、米国疾病管理予防センター(CDC)という機関がエビデンスを毎年更新しています。2年前までは、クラミジアの咽頭感染の治療においてビブラマイシンの方が優れるというエビデンスはありませんでしたが、2021年に、ビブラマイシンの方が咽頭感染の治癒率に優れており、推奨されるというように発表されました(7)。
したがって、咽頭感染の治療においては、性感染症を専門的に治療していて、最新のエビデンスの変化にも対応しているような病院で治療を受けることが望ましいです。

咽頭記事用4

1) Wiesner PJ, Tronca E, Bonin P, Pedersen AH, Holmes KK. Clinical spectrum of pharyngeal gonococcal infection. N Engl J Med. 1973 Jan 25;288(4):181-5.
2) Chan PA, Robinette A, Montgomery M, Almonte A, Cu-Uvin S, Lonks JR, Chapin KC, Kojic EM, Hardy EJ. Extragenital Infections Caused by Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae: A Review of the Literature. Infect Dis Obstet Gynecol. 2016;2016:5758387.
3) Komaroff AL, Aronson MD, Pass TM, Ervin CT. Prevalence of pharyngeal gonorrhea in general medical patients with sore throats. Sex Transm Dis. 1980 Jul-Sep;7(3):116-9.
4) Moran JS. Treating uncomplicated Neisseria gonorrhoeae infections: is the anatomic site of infection important? Sex Transm Dis. 1995 Jan-Feb;22(1):39-47.
5) Datta SD, Sternberg M, Johnson RE, et al. Gonorrhea and chlamydia in the United States among persons 14 to 39 years of age, 1999 to 2002. Ann Intern Med 2007; 147:89.
6) Páez-Canro C, Alzate JP, González LM, et al. Antibiotics for treating urogenital Chlamydia trachomatis infection in men and non-pregnant women. Cochrane Database Syst Rev 2019; 1:CD010871.
7) Workowski KA, Bachmann LH, Chan PA, et al. Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep 2021; 70:1.

【関連病気】

咽頭淋菌 詳細を確認する
咽頭クラミジア 詳細を確認する

【おすすめ検査キット】

咽頭の淋菌とクラミジアを同時に調べる検査です。

咽頭(のど)セット

記事の執筆


著者情報 新宿サテライトクリニック 院長 北岡 一樹(きたおか かずき)

予防会 新宿サテライトクリニック 院長
早稲田大学招聘研究員

北岡 一樹(きたおか かずき)

三重大学医学部卒業後、同大学医学部附属病院で研修を行った後、内科勤務しながら、名古屋大学大学院細菌学博士課程へ入学。薬剤耐性菌研究に携わり、博士(医学)取得。
その後、早稲田大学で招聘研究員として研究を開始。同時に、医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで性感染症診療も開始し、現在、院長を務めている。
性感染症について診療だけでなく研究も行っており、ファージを用いた性感染症予防の実現(性感染症予防のゲームチェンジャー)に取り組んでいる。

性感染症が不安な方へ

性感染症は、早期発見と正しい治療が大切です。
予防会なら、保険証不要・匿名で誰にも知られずに性感染症の検査を受けることができます。全国のクリニックでも検査が可能ですし、お時間がない方や病院に行くのは抵抗があるという方は、郵送検査キットをご活用いただくのもオススメです。

予防会では、はじめて検査を受ける方に向けて、わかりやすくマンガで解説しています。是非ご覧ください。

マンガでわかるはじめての性病検査
コラム用

人気のコラム 人気のコラム

COLUMNS

新着情報 新着情報

NEWS

2023.11.20
2023年 年末年始の郵送検査について
2023.08.15
【コラム更新】性感染症の正しい検査期間について
2023.06.15
【コラム更新】医療情報(性感染症)のエビデンスについて(話題のChatGPTも含めて)
2023.06.02
一部区間における宅急便などの「お届け日数」と「指定時間帯」の変更について
2023.05.15
【コラム更新】淋菌感染予防薬開発のためのご協力のお願い
2023.04.18
【コラム更新】ベストオブミス東京2023への協賛(性感染症総論)
2023.03.13
新型コロナウイルス検査キットの検査受付終了について
2023.01.26
寒波の影響による郵便物の遅延について
2023.01.16
【コラム更新】世界最大の死因となる「薬剤耐性菌による感染症」を予防するための、薬剤耐性菌保菌検査
2022.12.15
【コラム更新】HIV/AIDSに関するQ and A
2022.11.24
年末年始の郵送検査について
2022.11.15
【コラム更新】最適な性感染症検査方法と予防会の新システムについて
2022.10.27
梅毒患者、初の1万人超え…予想超えるハイペース「不特定多数との性交渉控えて」
2022.10.17
【コラム更新】性感染症病原菌の咽頭(のど)感染についてのQ and A
2022.09.15
【コラム更新】新しい感染症治療法(ファージセラピー)に関する予防会の研究・論文のご紹介
2022.08.16
【コラム更新】急増している梅毒についてのQ and A
2022.07.15
【コラム更新】重症化を防ぐために、発症早期の治療が重要であり、知っておく必要がある性器ヘルペス感染症
2022.05.17
コラム 世間的認知は低いが、淋菌と同等の有病率で不妊・がん・早産の原因となる、危険なトリコモナス性感染症
2022.02.15
コラム 日本でも世界的コンセンサスに準じることとなったHPVワクチンについて
2022.01.31
新機能リリースのお知らせ
2021.07.20
「東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会」の開催に伴う、商品お届けの影響について
2021.07.15
コラム 治療薬が効きにくくなり、将来治癒不可能になるかもしれない淋菌感染症
2021.03.18
HIV検査数が半減、コロナ拡大でためらいも「感染者を把握できていない可能性」
2021.02.18
コラム ある美容施術のお陰で減っている?性感染症:ケジラミ症
2021.01.15
コラム くり返す外陰腟カンジダ症の原因は、ある習慣が関係しているかもしれません
2021.01.04
年始のご挨拶
2020.12.15
コラム 性器と咽頭のマイコプラズマ・ウレアプラズマ保菌率調査結果について
2020.11.16
コラム HIV感染症とAIDSについて
2020.10.15
コラム 淋しい病気と書く淋病(淋菌感染症)について
2020.09.14
コラム AYA世代に多いがん:子宮頸がんとHPV検査
2020.09.11
新型コロナウイルスの影響による、郵送物などの遅延の可能性について
2020.06.15
コラム 低用量ピルの効能と副作用について知っておこう。
2020.05.15
コラム メンズヘルスについて (LOH症候群をご存知ですか?)
2020.05.01
オンライン診療開始のお知らせ
2020.04.06
春は健康診断の季節!
2020.03.15
コラム「性器ヘルペスについて~性器ヘルペスの治療は、最初が肝心・再発はコントロールできる~」
2020.01.15
コラム「近年治療が進歩した尖圭コンジローマ」
2020.01.06
年始のご挨拶
2019.12.23
年末年始休業のお知らせ
2019.12.16
コラム「ありふれたウィルス:ヒトパピローマウィルス(HPV)について知っておこう」
2019.12.02
血液の検査セットが新しくなりました
2019.11.15
コラム クラミジアってなんだ?? ~ウィルスのような細菌・クラミジアのワクチン開発~
2019.10.15
自分の健康は自分で管理する!自分の身体のことを良く知っておこう!
2019.09.27
消費税引き上げに伴う、サイト内の検査料金の改定ついて
2019.09.13
消費税率引き上げに伴う価格改定のお知らせ
2019.08.13
コラム 梅雨~夏にかけて、あそこがかゆい!!
2019.07.23
2020東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた交通対策実験によるお届けの影響について
2019.06.16
コラム 梅毒は治る病気!そのためには早期診断・早期治療がポイント!
2019.06.14
2019,6,27(木) ~ 2019,7,2(火) の 大阪府、兵庫県 へのお届けについて
2019.06.07
性病に毎日100万人が感染 「感染率下がっていない」 WHO
2019.05.24
コラム掲載
2018.12.27
年末年始のお知らせ
2018.11.14
18年の梅毒患者が5811人に この20年で最多
2018.10.11
梅毒2年連続5千人台…感染3週間で「しこり」
2018.07.30
若者の新規HIV感染者年間25万人、3分の2は女子:ユニセフが「HIV/エイズ報告書」
2018.06.29
梅毒感染、知らぬ間に 地方都市や若い女子にも広がる
2018.06.15
Web版 定期検査実施証明書デザイン変更のお知らせ
2018.05.31
沖縄の梅毒患者が過去最多 HIV感染者・エイズ患者数は過去3番目の多さ
2018.05.21
エイズ かつて死の病、今は早期発見で治療可能に
2018.05.15
【熊本県感染症情報】梅毒患者増加 県内3人確認
2018.05.07
梅毒患者、県内(埼玉県)は47人に…最多の昨年を超すペース 女性 は20代、男性は40代が多く 早めの受診を
2018.04.17
若い女性の梅毒患者が急増している理由…コンドーム着用でも安心禁物、誰でも感染 のリスク
2018.03.22
HIV感染者と患者「増加傾向変わらず」 福岡県で過去2番目の多さ [福岡県]
2018.03.22
HIV感染、昨年は1407人…すでにエイズ発症していた患者が415人〔読売新聞〕
2018.03.02
HIV感染者と患者が過去2番目の54人に 昨年の福岡市 [福岡県]
2018.01.23
検査結果確認画面リニューアル (スマートフォン・タブレット用)
2018.01.22
梅毒が全国的に流行、特に女性患者が急増
2018.01.18
平成29年の長野県の梅毒感染30人 33年ぶりの多さ 女性患者増
2018.01.05
梅毒5千人、初めて突破 患者最多は東京 若い女性らに感染拡大
2017.12.25
「梅毒」急増中の日本、世界は「淋病」制御不能時代を危惧
2017.12.25
今年も記録更新!梅毒の流行が止まらない!
2017.12.21
梅毒患者、全国で急増…主婦・OLにも感染拡大
2017.11.14
梅毒患者過去最多。「身に覚えがない」が最も危険
2017.11.01
梅毒患者 現行統計で年間過去最多の4568人
2017.11.01
梅毒感染、地方でも増加 岡山・熊本は昨年の3倍超
2017.09.22
九州でエイズ感染急増 16年福岡は61%増 佐賀、熊本過去最多
2017.09.14
梅毒の患者数 約20年で最も多いペース
2017.09.11
性行為感染症(STD) 性行為以外でうつることも
2017.09.06
梅毒の勢い止まらず、年間5000人突破の恐れも
2017.08.31
「いきなりエイズ」なお3割=HIV感染・発症1448人-昨年厚労省
2017.08.28
過去の性病と侮るな 梅毒、20代女性患者が急増中 国内患者数6年間で7倍超
2017.08.14
広がる梅毒、母子感染も 昨年の報告数 42年ぶりに4000人突破
2017.07.24
ダイヤモンドオンラインの記事について②
2017.07.15
ダイヤモンドオンラインの記事について
2017.06.28
NHKにて梅毒の報道がありましたので抜粋して御案内します
2017.06.15
今年の梅毒患者が2000人超、過去最悪ペースで感染拡大 
2017.06.06
梅毒の届け出数、「多くの地域で増加」 感染研、昨年同時期と比較
2017.05.10
検査結果通知サービスにつきまして
2017.04.26
梅毒早くも1000例に
2017.04.21
急増する梅毒感染者、過去最速ペース 把握しておきたいHIV感染との関係
2017.04.13
HIVの郵送検査、10年で3倍超 顔合わせず可能
2017.04.07
梅毒感染者が急増!最速1000人超え 20代女性患者が目立つも「原因は不明」
2017.04.04
梅毒患者1000人超、過去最速で感染拡大
2017.03.31
HIV感染に気付いてない人 推計5800人
2017.01.17
新宿セントラルクリニックの報道について
2017.01.13
梅毒感染、42年ぶり4千人超 20代女性で急増
2017.01.13
梅毒患者4千人超、5年で5倍に…増加要因不明

ここまでが本文です