カンジダ
細菌性膣症
2018.06.29
梅毒
ニュース
性行為などで感染する梅毒の増加が続いている。昨年は44年ぶりに報告数が5千件を超し、今年も昨年を上回るペースという。地方都市や若い女性にも広がる。感染に気づきにくいため人にうつしやすい。自分とは無関係と思わずに予防を心がけ、心当たりがあれば検査を受けることが大切だ。
梅毒の母子感染が増加 「妊娠の有無」届け出を義務に
関東地方の20代女性は風俗店で働いていた昨年初め、民間会社の性病検査で梅毒に感染しているとわかった。数カ月前、全身に赤い発疹が出たが1週間ほどで消失。「じんましんかな」と思い、病院には行かずに働き続けていた。
検査の後すぐに病院へ行き、処方された抗菌薬ペニシリンを1カ月間使って治った。仕事はやめた。店の客には家族を持つ男性も多く、「自分が知らないうちに感染を広げていたかと思うと申し訳ない。従業員に定期的に性病検査を受けさせない店は取り締まってほしい」と話す。
原因は「梅毒トレポネーマ」という約0・01ミリメートルの細菌。性器や口の粘膜、皮膚に感染し、性行為などでうつる。国内の患者は報告制度を始めた1948年に22万人。ペニシリンの普及や風俗業の規制強化で激減し、90年代半ばからは年1千人未満で推移したが、この5年で急増している。
患者数、3年で3・5倍に
国立感染症研究所のまとめによると、17年の患者は5829人で、14年の約3・5倍。この間に患者が2倍以上増えた都府県は38に上る。高松市は7倍(17年49人)、青森県は31倍(同63人)と急増している。
青森県の担当者は「男性患者は20~50代以上まで各年代にばらけるが女性は10~20代が多い。原因は全く分からない」と話す。性感染症の患者を多く診る松木泌尿器科医院(高松市)の松木孝和院長は「増加の原因は診断技術の向上という意見もあるが、患者は間違いなく増えている」と指摘。「外国人も含めて風俗店に通う客の増加が関係しているのではないか」とみる。
一方、日本家族計画協会理事長の北村さんは「SNSで知り合った相手と気軽に性行為をするなど、若い人の行動変化も一因かもしれない」と語る。
母子感染、流産・障害の恐れ
梅毒は、感染から数週間後に性器や口の感染部位にしこりや潰瘍(かいよう)ができる。ただ、治療しなくても症状が軽くなるため見過ごされやすい。数カ月後には全身の皮膚や粘膜に赤い発疹が出現。このときも治療せずに消えることがあるため、知らずに他人にうつしたり、治療が遅れて、記憶障害やまひなどの神経障害につながったりする恐れがある。
予防には、不特定多数の人との性行為を避けることが重要だ。性行為の際は最初からコンドームをつけると、感染リスクを減らせる。日本性感染症学会副理事長の石地尚興(いしじたかおき)・東京慈恵会医大教授(皮膚科)は「リスクのある性行為は避け、感染が心配なときは検査してほしい」と訴える。感染の有無は血液検査でわかり、地域によっては保健所で無料で受けられる。
治療には抗菌薬が有効だ。ただし最長で12週間飲み続ける必要があり、「途中で断念してしまう患者もいる」と性感染症に詳しい産婦人科医の北村邦夫・日本家族計画協会理事長は指摘する。厚生労働省によると、海外では1度の注射で済む薬が使え、世界的に標準治療となっているという。現在、厚労省はメーカーに開発を要請している。
患者の大半は成人男性だったが、今回の流行では20~30代の女性にも広がる。妊娠した女性が感染すると流産や死産したり、赤ちゃんの肝臓や目、耳に障害が起こったりする「先天梅毒」になる恐れがある。厚労省によると、先天梅毒の赤ちゃんは13年に4人だったが16年は14人。厚労省研究班の報告書によると、11~15年の間に赤ちゃん20人がなり、うち3人が死亡、3人に後遺症があったという。
厚労省は4月、梅毒に感染した妊婦の早期治療につなげようと、診断した際に医師に義務づけている届け出の項目に「妊娠の有無」を加える方針を決めた。また風俗業の従事歴なども項目に加え、感染経路を分析する方針だ。
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