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2020.05.16

特集

新型コロナウイルス感染症の検査

 

 

新型コロナウイルスのパンデミック

2019年末に中国の湖北省武漢市(こほくしょうぶかんし)で「原因不明のウイルス性肺炎」の発生が報告されて以降、2020年8月20日時点までに世界200カ国以上に感染が広がり、累計感染者は世界で2200万人、亡くなった人は77万人を超えた。日本では2月3日に横浜港に到着したクルーズ船「ダイヤモンドプリンセス号」の712人の感染者(死者10人)をはじめ、国内の感染者5万6685人人(死者59人)の感染者が報告されており、社会的、経済的に大きな問題となっている。
2月1日に新型コロナウイルス感染症は、感染症法に基づく「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定された。その後、韓国、イラン、イタリア、フランス、スペインで感染患者が急増し3月11日に世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は新型コロナウイルスを「パンデミック(世界的な大流行)」と表明した。日本、アメリカやスペイン、それにイタリアなど少なくとも60以上の国と地域で非常事態や緊急事態が宣言され、200ヵ国以上で入国制限がされている。

 

新型コロナウイルスはどんなウイルスか

ウイルス粒子は直径約100nm(10億分の1メートル)の球形で、脂質二重膜(エンベロープ)におおわれ、表面にはSpike(S)蛋白、Envelope(E)蛋白、Membrane(M)は突起が見られる。形態が王冠“crown”に似ていることからギリシャ語で王冠を意味する“corona”という名前が付けられた。ウイルス遺伝子はプラス鎖の一本鎖RNAでRNAウイルスの中では最大サイズの30kbである。

【コラム】 コロナ① 2020,3,27

  (https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/9303-coronavirus.html国立感染症研究所より引用)
コロナウイルスは自然界ではブタ、ウシ等の家畜、鳥類(家禽(かきん)等)やコウモリ等の動物に広く分布する。

 

ヒトに感染するコロナウイルスは?

ヒトに日常的に感染するコロナウイルス(Human(ヒト) Coronavirus(コロナウイルス):HCoV)として、感冒コロナウイルス4種(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1)が知られており、風邪の10~15%(流行期35%)の原因ウイルスである。流行のピークは冬季に見られ、ほとんどの子供は6歳までに感染を経験する。多くの感染者は軽症だが、高熱を引き起こすこともある。
これらヒトコロナウイルス発見は比較的新しく、HCoV-229E、HCoV-OC43が最初に発見されたのは1960年代であり、HCoV-NL63とHCoV-HKU1は2000年代に入って新たに発見された。その後、2002年にSARS-CoVコロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)、2012年には(MERS-CoV:中東呼吸器症候群コロナウイルス)による重症肺炎が報告され、昨年12月に武漢で新型コロナウイルス肺炎発生し、現在、世界的な大流行となっている。

 

新型コロナウイルスSARS-CoV-2の起源は?

ウイルス遺伝子解析の結果から、新型コロナウイルスはキクガシラコウモリ属のコウモリ由来(人獣共通感染症)が示唆されている。2002 年に発生した SARS-CoVもコウモリから分離されたコロナウイルスもコウモリ由来であることが示唆されている。

 

COVID-19とSARS-CoV-2

WHOは2月11日に新型コロナウイルス感染症の正式名称を「COVID-19」とすると発表した。COVID-19(「CO」は「coronaコロナ」、「VI」は「virusウイルス」、「D」は「diseaseデジーズ:疾患」、「-19」は「2019年に発生」)、2019年に発生したコロナウイルス感染症の意味。一方、国際ウイルス分類委員会はウイルス名をsevere acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) に命名した。コロナウイルスは遺伝学的特徴からα(HCoV-229EとHCoV-NL63)、β、γ、δのグループに分類される。α、β、γ、δのグループに分類される。感冒コロナウイルスのうちHCoV-229EとHCoV-NL63はαコロナウイルスに、HCoV-OC43、HCoV-HKU1とMERS-CoV、SARS-CoV、はβコロナウイルスに分類されている。

 

症状と特徴

COVID-19は比較的軽い呼吸器症状あるいは不顕性感染(症状が現れない)である。しかし、基礎疾患のある患者や高齢者では重症例が報告されており、死亡率は全世界で3.5%となっている。また、症状がない不顕性感染者はウイルスを排泄するため、気が付かない間に感染拡大を引き起こすことが危惧されており、感染封じ込めが困難となっている。

 


 新型コロナウイルス感染症にはどのように感染しますか(厚労省Hpより)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html#Q2-1

一般的には飛沫感染、接触感染で感染します。閉鎖した空間で、近距離で多くの人と会話するなどの環境では、咳やくしゃみなどの症状がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされています。(WHOは、一般に、5分間の会話で1回の咳と同じくらいの飛まつ(約3,000個)が飛ぶと報告しています。)
「飛沫感染」とは:

感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)と一緒にウイルスが放出され、他の方がそのウイルスを口や鼻などから吸い込んで感染することを言います。

「接触感染」とは:

感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りの物に触れるとウイルスがつきます。他の方がそれを触るとウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触ることにより粘膜から感染することを言います。WHOは、新型コロナウイルスは、プラスチックの表面では最大72時間、ボール紙では最大24時間生存するなどとしています。

 


 無症状病原体保有者(症状はないが検査が陽性だった者)から感染しますか(厚労省Hpより)

一般的に、肺炎などを起こすウイルス感染症の場合は、症状が最も強く現れる時期に、他者へウイルスを感染させる可能性も最も高くなると考えられています。

しかし、新型コロナウイルスでは、症状が明らかになる前から、感染が広がるおそれがあるとの専門家の指摘や研究結果も示されており、例えば、台湾における研究では、新型コロナウイルス感染症は、発症前も含めて、発症前後の時期に最も感染力が高いとの報告がされています。

したがって、人と人との距離をとること(Social distancing: 社会的距離)、外出の際のマスク着用、咳エチケット、石けんによる手洗い、アルコールによる手指消毒、換気といった一般的な感染症対策や、十分な睡眠をとる等の健康管理を心がけるとともに、地域における状況(緊急事態宣言が出されているかどうかやお住まいの自治体の出している情報を参考にしてください)も踏まえて、予防に取り組んでください(予防法のQ&Aを参照ください)。

 

遺伝子増幅検査(TMA法、PCR法)

感染症の診断は、一般的に急性期(症状が現れている時期)にウイルス検出、回復期には抗体検査が実施されます。ウイルス検出にはウイルス分離培養、抗原検出(イムノクロマト法)や遺伝子検出法(PCR)等を用いられます。これらは、感染症法に基づく行政検査として実施されています。インフルエンザイムノクロマト法のような簡易迅速診断法があるが、検出感度等の問題から、主にウイルス遺伝子を増幅し検出するTMA(transcription mediated amplification)法、PCR (polymerase chain reaction)法が用いられています。コロナウイルスはウイルス遺伝子がRNAのため、スワブ液等から新型コロナウイルス遺伝子を抽出(取り出す)し、TMA法では逆転写酵素とRNAポリメラーゼ(RNA合成酵素)を利用したRNA増幅法、PCR法はでは逆転写(RT)によってRNAをcDNAに変換した後、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってcDNAを増幅するRT-PCR (Reverse transcription polymerase chain reaction)が用いられます。これら検査は、国立感染症研究所(NIID)が中心となって都道府県の衛生研究所が検査を実施しているため、検査受託可能数が限られていたが、最近になって民間検査センターがNIID、地域のPCRセンター等から依頼を受け検査を開始している。

 

抗体検査

抗体検査は、主に新型コロナウイルスに感染していたかどうかを調べる検査法です。
事件現場で例えるならば、PCR検査は現場(鼻咽頭等)にいる犯人(新型コロナウイルス遺伝子)を現行犯逮捕(検出)します。抗体検査は犯人が逃げ去ったあと(回復期)の現場に残された足跡(産生された抗体)から犯人(新型コロナウイルス)を追跡する方法です。
感染症の抗体検査は主に、その病原体に対するIgG、IgM抗体を調べます。風疹を例にすると、感染後1週間くらいでIgM抗体、もう少し遅れてIgG抗体が出現し、その後長期間持続します。風疹は妊娠中に感染すると胎児に障害が出る恐れがあるため、妊娠初期に風疹に対する免疫が備わっているかを風疹のIgGとIgM抗体で調べます。風疹抗体は感染防御抗体なので、抗体が陽性で、十分な量があれば免疫ができているため感染するリスクは減少します。抗体が陰性であれば、妊娠中は感染リスクを避け、産後にワクチンを接種し、次回の妊娠に備えて免疫(抗体)を作ることが推奨されています。

 

遺伝子検出法PCR検査か抗体検査か? 選び方

PCR検査等は、医師が必要と判断した場合に、帰国者・接触者外来等都道府県等が指定する医療機関で実施されます。また、一部地域では、地域医師会等の協力を得て「地域外来・検査センター」を設置し、集中的に検査を実施しています。
新型コロナウイルス感染からのPCR及び抗体の陽性の推移まとめた報告があります。
感染から8日目(症状発現の3日後)から3週間ぐらいまでがPCR陽性になりやすい時期といわれています(Kucirkaら2020)。最近、発症数日前からPCR陽性例が報告され、無症状者を含め感染拡大の要因になっています。
抗体は、発症後1~2週間後位から産生されはじめ、PCRと抗体がともに陽性の時期を経て、PCR陰性、抗体陽性の時期となります。したがって、発症早期の場合、抗体検査単独では陰性ためでは注意が必要です。この期間はPCR検査と抗体検査併用が有効といわれています(L Guoら, 2020)。

【画像】コロナ①

(Nandini Sethuraman ら、JAMA.2020.8259, 忽那賢志訳https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200509-00177709/)

 

新型コロナウイルス感染の治療

コロナウイルスに特異的な治療薬は未だない。新型コロナウイルス感染症への治療効果が期待されているのがレムデシビル(米ギリアド・サイエンシズ)、デキサメタゾン(デカドロン)、ファビピラビル(富士フイルム富山化学の「アビガン」)、シクレソニド(オルベスコ)、ナファモスタット(フサン)▽カモスタット(フオイパン)などがあり、レムデシビルはCOVID-19治療薬として承認された。
現在、ワクチン開発が進んでおり、政府は海外製薬会社の米ファイザー(RNAワクチン)、アストロゼネカ(ウイルスベクターワクチン)などからワクチン供給の合意を進めている。

 

予防法

コロナウイルスのヒト-ヒト感染の主な経路は、飛沫感染および接触感染である。 感染を予防するためには、基本的な感染予防の実施や不要不急の外出の自粛、「3つの密」を避けること等が重要です。

1.密閉空間(換気の悪い密閉空間である)
2.密集場所(多くの人が密集している)
3.密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や共同行為が行われる)

という3つの条件のある場では、感染を拡大させるリスクが高いと考えられています。

厚生労働省のホームページに予防法が紹介されています。

① 一般的な感染症対策や健康管理を心がける
② 石けんによる手洗いや手指消毒用アルコールによる消毒などを行う


③ できる限り混雑した場所を避ける
④ 十分な睡眠をとる
⑤ 屋内でお互いの距離が十分に確保できない状況で一定時間を過ごすときはご注意する

 

さらに、クラスター(集団)感染予防のためにとるべき行動として下記の見解が示されている。
これまで集団感染が確認されたケースに共通するのは、次の3つの条件が同時に重なった場合です。

・換気の悪い密閉空間
・多くの人が密集
・近距離での会話や発声(密接場面)
日常生活の中で、この3つの条件が同時にそろう場所や場面を避ける以下の行動をとってください。

1.換気を行う(可能であれば2つの方向の窓を同時に開ける)
2.人の密度を下げる(互いの距離を1、2m程度空ける)
3.近距離での会話や発声などを避ける(やむを得ない場合はマスクを付ける)

 

新型コロナウイルス感染症の予防法(厚労省Hpより)
感染を予防するためには、基本的な感染予防の実施や不要不急の外出の自粛、「3つの密」を避けること等が重要です。
特に、1.密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、2.密集場所(多くの人が密集している)、3.密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や共同行為が行われる)という3つの条件のある場では、感染を拡大させるリスクが高いと考えられています。

 

【3つの密を避けるための手引き】
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html#c5

【画像】【厚労省】3蜜手引きまとめ

また、これ以外の場であっても、人混みや近距離での会話、特に大きな声を出すことや歌うことにはリスクが存在すると考えられています。
人と人との距離をとること(Social distancing; 社会的距離)、外出時はマスクを着用する、家の中でも咳エチケットを心がける、さらに家やオフィスの換気を十分にする、十分な睡眠などで自己の健康管理をしっかりすることで、自己のみならず、他人への感染を回避するとともに、他人に感染させないように徹底することが必要です。
これらの状況を踏まえ、「3つの密」の回避、マスクの着用、石けんによる手洗いや手指消毒用アルコールによる消毒の励行が推奨されている。

 

ウイズコロナの新しい生活様式

【画像】コロナ②

 

 

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