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2021.09.14

カンジダ

細菌性膣症

自己診断厳禁!? 意外と複雑な性器カンジダ症

性器カンジダ症は、簡単に考えられがちですが、実は、発症要因から複雑で、外陰膣カンジダ症でないのに間違って外陰膣カンジダ症であると自己診断されてしまうことが多く、治療も複雑だったりします。

今回はカンジダの発症要因・症状・治療方法等を中心に説明していきます。

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性器カンジダ症について

 カンジダはカビの一種で、環境中のいたるところに存在します。

人体にももちろん存在し、正常細菌叢(サイキンソウ)の一部として存在しています。
様々な要因によって、カンジダが過剰に増えることで、症状を引き起こす結果となることがあります。
性器でそれが起こった場合、性器カンジダ症となります。
(女性では外陰膣カンジダ症、男性ではカンジダ亀頭炎と呼びます)

カンジダは性器への感染症ですが、他者から感染する性感染症と違い、自己発症が中心のため、少し理解を難しくしています。

性器カンジダ症の発症要因について


まず、女性において、カンジダが炎症を引き起こすようになる要因は以下のようなものになります。

・糖尿病など免疫の低下
正常血糖の方よりも外陰腟カンジダ症になりやすいと言われています。

・抗菌薬の使用
報告によると、外陰膣カンジダ症を発症している女性のうち1/4~1/3の原因が抗菌薬の影響と言われています(1)。

・妊娠
妊娠によってエストロゲンというホルモンが上昇します。
エストロゲンが上昇すると外陰膣カンジダ症を発症しやすくなると言われています。

・性行為
性感染症ではありませんが、性行為と関連はしています。
性行為を開始する時期に外陰膣カンジダ症の頻度が増加することが報告されています(2)。
しかし、性行為の頻度やパートナーの数とは関係がないとされています(3)。

男性の場合は、糖尿病、包茎等がカンジダ亀頭炎発症に影響します。
また、外陰膣カンジダ症発症パートナーがいることもリスク要因となります。

▲ピルの服用
ピルもエストロゲンを上昇させます。
しかし、外陰膣カンジダ症を発症しやすくなるという報告もあれば、関連がないといった報告、逆にリスクを低下させるという報告もあり、一定しておらず、議論があります。

 

性器カンジダ症の症状


外陰膣カンジダ症においては、外陰部、膣のかゆみが主要な症状です。
灼熱感、痛み、性交痛が見られることもあります。

月経の1週間前に悪化することが多いといわれています。

外見としては、外陰部が赤くなり、傷が見られることもあります。
しかし、これらはアレルギー皮膚炎や細菌性膣症でもよく見られる症状です。

おりものは典型的には濃く、塊上の白色を示しますが、水っぽい時もあり、他の膣炎と区別がつかないこともあります。
この場合、
診断方法は他の疾患との区別もつけることができる顕微鏡観察が中心となります。
顕微鏡観察でうまく観察されなかった場合や、治療に難渋する場合に培養検査を行うこともあります。

外陰膣カンジダ症において、最も気を付けないといけないことは、自己診断しないことです。
症状が分かりやすいため、自己判断されていることが多いです。しかし、実は非常に不正確なのです。

外陰膣カンジダ症と自己診断した方に対して、実際に検査で診断した結果、正しく自己診断できていたのは11-35%であったと報告されています(4)。
実際は細菌性膣症であることが多く、この場合、外陰膣カンジダ症の治療をしてしまうと、細菌性膣症が悪化してしまうこともあり、注意が必要です。
また、外陰膣カンジダ症と細菌性膣症が混合感染していることも多く、その場合は両方治療しないと改善しません。

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したがって、外陰膣カンジダ症を疑う症状があった場合は、自己診断することなく、迅速に顕微鏡検査が行えるカンジダの検査、治療に慣れた当院のような病院へ行くことが必要です。

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また、カンジダ亀頭炎の場合の症状は、亀頭部における、痛みや痒みを伴う赤い発疹です。
時折、白い滲出液を認めることもあります。これらも細菌性亀頭炎やアレルギー性亀頭炎でもみられる症状であり、自己診断せずに、顕微鏡検査が出来る病院へいくことが重要です。

 

性器カンジダ症の治療


外陰膣カンジダ症と診断されても、軽微な症状であれば必ずしも治療は必要としません。

症状が強い場合や症状を緩和したい場合には、薬物治療が必要です。
薬物治療は実は意外と複雑で、状況に応じた治療が必要です。
通常は膣剤を使用します。外膣部への軟膏治療のみでは不十分という落とし穴があります。
利便性を考えると内服剤が圧倒的に楽です。アメリカだと通常、第一選択されます。

症状が激しい場合は、より強い治療が必要となります。
内服治療を3日ごとに2-3回行ったり、膣錠治療を2週間程度まで行います。

症状が改善しない場合は、一般的なカンジダ・アルビカンス以外のカンジダ(カンジダ・グラブラータやカンジダ・クルーセイ)の可能性を考えて治療薬を変更しないといけません。

さらに、1年以内で4回以上の再発がある場合は、再発性外陰膣カンジダ症(RVVC)と呼ばれる状態と定義され、通常とは異なる取扱いをすることが望ましいとされています。
RVVCを引き起こすのは、一種のアレルギーのようなものと考えられており(5)、生まれ持った性質としてなりやすい人がいると考えられています。

RVVCに対しては、米国感染症学会(IDSA)より再発抑制療法を行うことが推奨されています(6)。
再発抑制療法では、週1回の内服治療もしくは週2回の膣剤治療を半年間行います。しかし、この治療法は日本国内ではあまり知られていません。

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カンジダ亀頭炎の場合は、軟膏治療で十分効果が図れます。しかし、症状が強い場合は、内服治療が必要です。
適切なカンジダの治療には、様々な状態の評価、考慮が必要であり、カンジダ治療に慣れた性感染症専門の病院での治療をオススメします。

 

まとめ

外陰膣カンジダ症は自己診断可能だと思っている人が多いが、判断ミスが多い

→迅速な顕微鏡検査が可能な病院における検査が必要


性器カンジダ症を適切に治療するには様々な考慮、治療オプションが必要

→性感染症専門の病院での治療がオススメ

 

記事の執筆

著者情報 新宿サテライトクリニック 院長 北岡 一樹(きたおか かずき)

予防会 新宿サテライトクリニック 院長
株式会社KMPhage代表取締役

早稲田大学研究員(MD/PhD)

北岡 一樹(きたおか かずき)

三重大学医学部卒。初期研修修了後、内科勤務しつつ名古屋大学大学院医学系研究科細菌学博士課程修了。その後、薬剤耐性菌の研究のため、早稲田大学で研究開始。同時に医療法人社団予防会新宿サテライトクリニックで診療開始し、現在は院長を務めながら新たな性感染症予防薬創出のため「バクテリオファージ」の研究を進めている。本研究では東京都主催のコンテストで優秀賞を獲得、社会実装に向けバイオベンチャー「株式会社KMPhage」を起業。国内では数少ないカンジダ・細菌性膣症の予防の研究も行っており、臨床においても研究知見も含め「性器感染症予防」を専門として、世界的エビデンスUpToDateに基づいたデリケートゾーン専門外来も行っている。
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